広島の青年教育労働者の訴え 不起立闘争で職場にあふれる怒り解き放とう
広島の青年教育労働者の訴え
「日の丸・君が代」不起立闘争で職場にあふれる怒り解き放とう
2月11日に広島で行われた「『8・6処分』撤回! 不起立で『是正指導』ぶっとばせ! 職場の団結をとり戻そう! 2・11広島教育労働者集会」で広教組の青年労働者・倉澤憲司さんが提起した基調を一部割愛して紹介します。(編集局)
「8・6研修」と処分に反撃し研修断念に追い込んだぞ!
私は、昨年8月6日に設定された官制研修への参加を拒否して8・6ヒロシマ大行動に決起した。さらにそれを理由に下された戒告処分に対して処分撤回の闘いに立ち上がった。この闘いは広島と全国、さらにアメリカの教育労働者に大きな支持と共感を広げ、処分撤回要求の署名が続々と寄せられている。
追い詰められた広島県教委は、ついに「今後は8月6日に研修を行わない」と表明せざるをえなくなった。「原爆の日は親族の命日に当たる人もいる。配慮に欠けていた面はあり、この日の指定研修は避けるよう調整したい」とコメントして、「8・6」に官制研修を入れてきたのは不当だったことを認めたのだ。
そうであれば処分自体が撤回されるべきだ。処分撤回をかちとり、文部省「是正指導」以来の県教委の教育支配に風穴を開けよう。教育労働者の誇りにかけて闘い、職場の団結を取り戻そう。
1人からの闘いだったが、広島と全国の教育労働者が「絶対に許せない」と一緒に声を上げてくれて、その団結の力で「闘えば勝てる」ことを示すことができた。この力に確信を持って闘う。
大恐慌下に絶対反対貫く闘いを
世界は百年に一度の大恐慌だ。政府は膨大な財政をつぎ込んで巨大な金融機関や大企業を救済してきたが、その結果、アメリカは2年連続で100兆円を超える財政赤字だ。ドルの大暴落と世界大恐慌のさらなる爆発は避けられない。GMがつぶれて世界一の座についたトヨタは、拡大戦略のつけで安全問題で破綻している。これをアメリカ側は「トヨタをつぶすチャンス」とたたいている。大企業同士、国同士のつぶし合いの犠牲にされるのは労働者だ。
失業者はアメリカでもヨーロッパでも1500万人、日本は350万人(実質はその倍)。派遣労働者は首を切られ、正社員は非正規に突き落とされ、人生の先が見えない。家族も持てず、子どもがいても食べさせられない、進学もさせられない。医療や福祉、教育が崩壊し、あちこちで事故は激発し、社会全体が崩れようとしている。
しかし労働者はなすすべなくこの大恐慌の嵐に身を委ねているわけではない。「このままでは生きていけない」という労働者の怒りがついに自民党支配を崩壊させた。だが、さしあたりできたのは民主党政権だ。電機連合や自動車総連、自治労、日教組出身者が政権中枢に座り、自民党では抑えられなくなった労働者の怒りを連合を使って抑え込もうというのだ。
日教組出身の輿石東参議院議員会長は、「最後までぶれずに小沢さんを守ったのはおれだ」と言った。日教組本部は、この輿石らの選挙運動に組合員を駆り立てようとしている。小沢の手先となった日教組本部! こんな本部と現場組合員は絶対に相いれない。
日教組だけでなく、連合の組合幹部はみな資本と権力の手先だ。彼らは今までいろんな手段で組合員を取り込み、闘いを抑え込んできた。しかしもうだませない。ここまで彼らの正体がはっきりした以上、現場組合員の本部からの離反、本部打倒の決起は不可避だ。いやそれはもう始まっている。要は本当に「最後までぶれずに」闘う組合の指導部を現場からつくっていくことだ。資本・権力に対する「絶対反対」を「最後までぶれずに」貫く指導部こそ必要だ。
「日の丸・君が代」攻撃の狙いは日教組つぶしと団結破壊
「日の丸・君が代」強制とは、何よりも日教組を解体し、教育労働者の団結と職場支配権を奪う攻撃だ。「日の丸・君が代」強制が本格的に始まったのは、日本における新自由主義攻撃の突破口だった国鉄分割・民営化の渦中の1980年代の半ば。中曽根政権は、労働運動の中軸を担う国鉄労働運動をつぶすことで総評と社会党をつぶし、憲法改悪を目指した。
中曽根が国鉄の次に攻撃対象にしたのは日教組だ。「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンのもとに50万人の組合員が団結し、「戦争をしてはいけない」という教育をしている。国鉄や自治労と並んで全国の労働運動と反戦運動の中心を担っている。こんな状況を許していては改憲も戦争もできないからだ。
だから中曽根は「教育改革」を掲げ、日教組つぶしに出てきた。「教育荒廃」を大宣伝し、日教組が原因だと描いて、85年の文部省指導徹底通知から本格的に「日の丸・君が代」攻撃を始めた。
なぜ「日の丸・君が代」から始めたのか。それが日教組の団結を破壊し、国家が教育現場を支配するための最大の武器だからだ。権力の命令で教育労働者を起立させ、「天皇をたたえる歌」を歌わせ、教育労働者の階級性(労働者魂、精神、骨)をたたき折り、挫折感と敗北感をまん延させ、職場支配権を奪い取ろうとしたのだ。
教育労働者は、「日の丸・君が代」を学校に入れさせない力関係を、勤評闘争、学力テスト反対闘争を始めとする実力抵抗闘争でつくってきた。勤評闘争では起訴された者が108人、免職70人など6万人以上が処分された。85年までの統一ストでの処分は83万5198人だ。こういう弾圧をうち破って闘ったから権利が守られてきたのだ。
しかし資本主義が危機を深める中で、権力はもはや労働者のストや団結、職場支配を許せなくなった。自由に首を切り、戦争ができる社会にしなければ延命できないからだ。それでまず国鉄を見せしめ的に攻撃し、組合幹部を屈服させ、資本の手先にし、国鉄労働運動をガタガタにした。
そして日教組や全逓や自治労を「抵抗したら徹底的につぶす」と脅し、日教組には「日の丸・君が代」を認めるのか否かを迫った。日教組本部はこの時、「抵抗したら国労の二の舞いになる」と屈服の道を進んだ。学習指導要領で「国旗・国歌」が義務化された89年に日教組は連合に加盟。当時は「連合に入って連合を変える」などと言ったが、すっかり変わったのは日教組本部の側だった。そして95年にはとうとう「文部省とのパートナー路線」を敷いた。
しかしそれでも現場では闘いが続いた。その先頭に広教組・広高教組の組合員が立っていた。
広島是正指導で不起立根絶狙う
広島の闘いをつぶさなければ日教組をつぶせないと見た文部省は、98年「是正指導」で県教委に文部省の役人を送り込み、不起立闘争つぶしを始めた。しかし広教組・広高教組はすぐ屈したわけではない。処分を受けても不起立を続け、全国に署名や意見広告運動を呼びかけた。8・6ヒロシマ大行動も組合として呼びかけ、両教組の委員長が発言していた。
しかし広教組・広高教組の本部は結局、現場組合員の力を信じることができず、「これ以上闘っても勝てない」という敗北主義に陥った。99年に有事立法と「国旗・国歌法」が制定され、03年のイラク侵略戦争に向かっていく過程で、不起立方針を下ろしたのだ。
東京の教育労働者は03年「10・23都教委通達」以降、大量の処分を出しながら不起立闘争に決起した。広島の闘いが東京の闘いと結びつき、全国の教育労働者が不起立闘争を軸にして闘ったら、ものすごい勝利の展望が開けたはずだ。しかし東京の闘いも、広島でなお続けられた闘いも、「内心の自由」を守る「個人の闘い」に切り縮められ、孤立させられていった。広教組本部は「不起立は組合方針ではない。職務命令が出たら従え」と弾圧し、ついに昨年の全国教研集会では警察と協力して不起立を続ける組合員を排除した。
しかし現場組合員は、国鉄の1047名解雇撤回闘争のように不屈に不起立を続けてきた。ここに希望がある。
組合本部の屈服が組合員を分断
団結が破壊され、組合内でも孤立させられる中で不起立するのは、並大抵ではない。特にギリギリの生活を強いられ、正規・非正規で分断されている青年にとって、処分覚悟で不起立するのは大変な重圧だ。そういう中で不起立が“ものすごい勇気を持った特別な人の闘い”のように見られてしまう。そして「闘う決意のある人」と「ない人」、「闘っている人」と「闘わない人」みたいに分断される。不起立を絶対にそういう闘いにしてはいけない。「今は不起立できない」仲間に「自分はできなくて申し訳ない」というような思いにさせてはならない。
分断をつくっているのは誰か。それは日教組本部であり、広教組・広高教組の本部だ。組合幹部が「お前が不起立すると周りが苦しむ」と闘いをつぶして回ることこそ団結破壊であり分断だ。
組合幹部が組合員を心から信頼し、「全員で不起立しよう。処分を組合全体の力ではね返そう」「不起立の正義性を全労働者に訴え、闘う団結を拡大すれば、是正指導も処分も吹き飛ばせる。職場の団結を取り戻し、職場支配権を奪い返せる」と訴えて闘えば、誰も苦しむことなどない。仲間と一つになって解放感を持って闘える。青年労働者も自信と未来への展望を持って、職場の現状への怒りを解き放って不起立することができる。
反撃しなければ生きられない
そう言うと本部は「今時、そんな闘いをしたらバッシングされる」と言う。しかし是正指導から12年の現実は何か。県教委への「忠誠度」を計るための膨大な報告書の提出強制、官制研修や研究授業などによる多忙化。管理・統制の強まり、職員会議の解体、主幹教諭・指導教諭導入、評価制度で職場の仲間はバラバラにされ、お互いに声もかけられない。非正規化・賃下げもどんどん進んだ。これで病気にならない方が不思議だ。まだ「病気」ではなくてもみんなクタクタだ。
広島だけではない。全国の公立学校の病休者8578人、うち精神疾患5400人。こんな異常な職場がどこにあるか。広島では「不祥事」や病休が多発し、懲戒処分発生率が全国平均の2・5〜2・6倍だ。職場の団結を破壊し、労働者を分断し孤立させ、徹底的に管理し、誇りを奪った結果、病休や早期退職、死亡、さまざまな事件・事故が起こされてきた。
ここまで現場がめちゃくちゃにされたのは、是正指導と「日の丸・君が代」強制からだ。組合本部が屈服して職務命令に従わさせ、一切の抵抗をやめたからだ。
組合本部の屈服によって奪われた職場の団結を取り戻し、反撃に立ち上がる以外に、地獄のような職場の現状は変わらない。本部は「嵐が過ぎ去るまでおとなしくすれば……」と言ったが、嵐は収まらない。資本主義の危機がさらに深まる中、権力は労働者の闘いを根絶するしかないのだ。
おとなしくしていたら生きられるのか。私たち青年教育労働者はこれから10年、20年、30年と働き続けられるのか。病休、早期退職、自殺、病死——ここで反撃を始めなければ働くことも生きていくこともできない。
今こそ「教え子を再び戦場に送るな!」を高く掲げる時だ
職場の団結が解体し尽くされ、労働者が資本の言いなりの奴隷にされた後に、戦争も始まる。アメリカの学校では民営化・組合破壊と一体で軍事化が進んでいる。日本もこのままでは自衛隊の勧誘員が堂々と学校に入ってくるようになる。
広教組も広高教組も「教え子を再び戦場に送るな」を掲げて不起立をしていたではないか。平和な時代に「戦争反対」を言うのは簡単だ。高度経済成長期に「賃上げ」を言うのも簡単だ。しかし恐慌の時代に首切り・賃下げに反対し、戦争が始まる時代に反戦を言うのは大変だ。だからこそ組合がしっかり団結して闘う必要があるのだ。
世界大恐慌が始まった今、排外主義や民族差別、侵略戦争の正当性が扇動されている。鳩山政権は「東アジア共同体」という現代版の大東亜共栄圏のようなスローガンを掲げ、改憲も準備している。アメリカも日本も、貧しい家庭の子どもは軍隊・自衛隊に入るしかない「貧困徴兵制」というべき現実がある。今こそ「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを高く掲げる時だ。
アメリカでは教育労働者が学校の民営化と軍事化に反対して闘っている。11月労働者集会でセシリー・マイアトクルスさんらロサンゼルス統一教組の闘いと日本の不起立闘争がつながり、不起立は国鉄1047名闘争と同じく、大失業と戦争に立ち向かう全世界の共同の闘いになった。日本の教育労働者が「教え子を戦場に送るな」と職場で闘っていることに、アメリカや韓国、ブラジルやドイツの労働者がものすごく共感している。ここに展望がある。
処分は敵の弱点闘えば勝てる!
本部は「闘っても勝てない」と言うが、私たちは確信を持って「闘えば勝てる」と言える。新自由主義の攻撃は完全に破綻している。「規制緩和・民営化で世の中はよくなる」と言ってきた連中は全部大破産した。労働者の怒りは、小泉・安倍・福田・麻生とやりたい放題やってきた自民党をたたきつぶした。教育基本法を改悪した安倍は改憲を実現する自民党のエースだったが、もう何の政治的影響力もない。
自民党が新自由主義攻撃の突破口にしたJRと教育で最も激しく矛盾が爆発している。JRでは合理化で安全が崩壊し、事故が激発。JR資本はさらに外注化・非正規化を進めようとしているが、動労千葉は反合理化・運転保安の闘いで大反撃している。2月1日から48時間ストライキをやり、13日にはJR東日本本社にデモで押しかける。街頭では10万枚ものビラを配って全労働者に「ともに闘おう」と訴えている。こういう闘いをやるのが労働組合だ。
私たちの教育現場もJRと同じくすさまじい矛盾が爆発している。これが今や敵の弱点になっている。榎田県教委は警察官・検察官主導の委員会をつくり「教職員の不祥事根絶に向けての提言」を出させた。今でさえ我慢ならない管理強化と強権的支配をますます強めるというのだ。もっと徹底的に研修をやれ、服装をただせ、整理整頓をしろ——まるで教育労働者を「問題児」のように扱い、教育労働者の階級性、誇り、団結をさらに蹂躙(じゅうりん)し、奴隷化して「聖職者」にする攻撃だ。これが教育の民営化の実態だ。労働者の怒りはもう爆発寸前だ。積もりに積もった教育労働者の怒りを解き放つ不起立闘争をやろう。
敵は強そうに見えて実は弱い。榎田教育長らは「もうこれ以上処分者が増えたら大変だ」と悲鳴を上げている。広島では毎年2けたの不起立処分を出しているため、「不祥事」=懲戒処分の3分の1が不起立だ。「不祥事根絶」を必死で訴えているにもかかわらず、今年度の卒業式でさらに3人の処分者が出たら、不祥事処分件数はまた昨年度を上回る。「日の丸・君が代」強制と処分は、県教委の最大の武器から最大の弱点になった。ここを徹底的に突こう。
是正指導以来12年、絶対に屈せずに闘い続けてきたことがいよいよ大きな力を発揮する時がきた。「8月6日に研修をやらない」という決定も県教委が音を上げ始めたということだ。教育労働者の闘いであの傲慢(ごうまん)な榎田県教委と是正指導体制を打倒する時がきた。不起立で現場から力関係を変えよう。
迷い悩んでいる仲間を絶対に信頼して団結つくろう
セシリー・マイアトクルスさんは昨年11月、広島で訴えた。「私たちにとっての選択肢は、なるがままに任せるか、自分たちが行動して変えるか、二つしかありません。私たちは働く人間のために立ち上がる必要があります。仮にそのことによって自分自身の立場が少し危うくなるとしても、やる必要がある」
闘えば必ず弾圧や処分もある。しかし私たちの先輩は、勤評闘争でも学テ闘争でも「目先のほんの小さな利益よりも、将来の大きな根本的な利益のために闘うことこそ必要なんだ」と自覚して闘ってきた。多少の弾圧があっても、闘いは必ず団結をつくり、闘いの輪はどんどん広がるし、弾圧は絶対に跳ね返せる。
今の組合幹部は、目先のわずかな利益のために労働者の根本的な利益を売り渡している。いや、今や目先の利益すらない。本部は政権交代の幻想をあおったが、民主党政権ができて職場は少しでもよくなったか。まったく変わらない。「日の丸・君が代」の職務命令も処分もなくならない。
変わったのは、日教組本部が政権与党や小沢らと一心同体になって、ますます現場組合員を弾圧するようになっただけだ。県教研では広教組本部役員が公安警察を敷地内に引き入れて談笑し、私たちがビラや署名用紙を配ることを禁じた。昨年の広島の全国教研では機動隊を使って私たち不起立被処分者を排除したが、ますます権力と一体化している。こんな本部は打倒あるのみだ。
最後に。私たちは今迷い、悩んでいる多くの仲間たちを絶対に信頼する。この多くの迷い、悩んでいる仲間こそ、今の職場を変え、世の中を変える主体だ。この大多数の普通の現場労働者の団結した力だけが、本当に世の中を変えるのだ。
「私はみんなで一緒になって闘う。これは一つの闘いです。私自身の闘いです。私たちはみな一つです。一方には私の友だちがいて、他方には実際はあまり知らない人がいるとしても、その間を埋めて、みんな一つのものとなって闘うことが必要です」(セシリーさん)
国鉄1047名闘争、JR外注化阻止決戦を闘おう。3月卒業式、4月入学式の「日の丸・君が代」闘争を闘い、現場から闘う団結をつくろう。この団結こそ、青年の未来を取り戻すものだ。ともに闘おう。