〈焦点〉 米帝危機象徴するQDR
〈焦点〉 米帝危機象徴するQDR
志願兵制の維持も困難化
米国防省は2月1日、「4年ごとの国防戦略見直し」(QDR)を発表した。今回のQDRはこれまでのものとはかなり趣を異にし、軍事面でも米帝の陥っているすさまじい危機と破綻を露骨に表現するものとなっている。
まず第一に、「QDRは今後20年間の基本指針となる重要文書」と銘打ちながら、泥沼的危機と敗勢にあえぐ目先のイラク・アフガニスタン侵略戦争のことを一切に優先させて、この「今日の二つの戦争に勝利する」ことなくして今後の見通しなどまったく立たないと絶望的悲鳴をあげている。
そしてそのために、米ソ対峙・対決以来の伝統的な「2正面戦略」を、「多様な脅威」「複雑化する環境」に対応する軍事戦略へと転換し、軍事予算の配分もイラク・アフガニスタンでの「対テロ戦争」=帝国主義的侵略戦争に集中し、無人偵察機やヘリコプターの導入拡大、特殊作戦部隊の増強を図ることを盛り込んでいる。
第二に、このイラク・アフガニスタンでの泥沼的敗勢の中で、志願兵制度がもはや破綻し、維持することが困難になっていることを、1章を割いて訴えている。
米軍はアフガンの兵力を今年半ばまでに約10万人に増強し、イラクには現在10万人駐留している(今年8月に5万人に縮小)。つまり米兵約20万人が戦地にとどまる。だがこの数をこれからもずっと戦地に送り続けることは、志願者の減少、兵士の自殺、PTSD(心的外傷性後ストレス障害)・TBI(外傷性脳損傷)や家族との不和による除隊の激増などで、今や不可能となりつつあるのだ。
QDRは「戦争の最大の資源は兵士である」「国防総省はこのことを理解し全力で当たっている」と述べ、兵士や家族に必死に「配慮」を見せているが、巨大な覇権国家の米帝が志願兵制度と戦争継続能力を維持できなくなっている現実は、米帝の体制的崩壊だ。まさに米帝は世界革命で打倒するしかない存在だということだ。
第三に、「中国やインドが台頭し、米軍の優位性は相対的に低下している」と述べて、北朝鮮、イランに続き、特に中国スターリン主義の軍拡に強い「懸念」と「不信感」を表明している。これは、1月27日の一般教書演説でオバマが中国、ドイツ、インドを競争相手にあげ「アメリカは2位にはならない」と、没落米帝として悲鳴をあげたことの軍事版である。
しかしQDRは、中国を「潜在的仮想敵国」とするかのような対中国強硬論を展開しながら、他方では中国との「対話」や「意思疎通」の必要性をも強調している。ここには、中国ぬきには今や経済的にも政治的にも立ち行かない、没落する基軸帝国主義・米帝の現実が突き出されているのだ。
第四に、対中国という点でもアジアでの日米同盟重視を鮮明にしつつ、「在日米軍再編では現行の日米合意の履行が在日米軍の長期的駐留とグアム再編を確かなものにする」と述べている。
まさに日米同盟の強化や「深化」との闘い、普天間基地即時閉鎖・辺野古新基地建設阻止の闘いが、いよいよ重要になってくる。
万国の労働者の団結と決起で、米帝打倒と大恐慌・戦争を世界革命への闘いを前進させよう。