〈焦点〉保護主義の一般教書演説 オバマ
〈焦点〉 「雇用」と「輸出」を最優先
保護主義の一般教書演説
オバマは1月27日の一般教書演説で、内政・外交の基本方針を示した。米帝の危機感と焦りをこれほどむき出しにした一般教書は、かつて例がない。「チェンジ(変革)は十分な速さでもたらされなかった」「私の政権ではこの1年、いくつかの政治的な挫折があった」「われわれは巨大で困難な課題に直面している」など。大恐慌下で没落し破滅する米帝が、断末魔の悲鳴を上げているのだ。
一般教書の8割は内政に充てられた。これも異例だ。特に「雇用が2010年の最重要課題である」とした。完全失業率が10%を超える中、「雇用最重視」と言わないと政権が吹っ飛ばされかねないのだ。現に「事態はもはや政治問題を超えている。政治、金融、経済、さらには文化の既成権力の大失態を、私たちは目の当たりにしている」(ニューズウィーク誌2・10号)とまで言われる。就任時に70%近くあった支持率は50%前後まで下がった。昨秋から州知事選や連邦上院補選で民主党が連敗し続けているのも、労働者階級の資本家階級への怒りが噴出し始めていることがベースにある。
しかし「雇用創出」と言うが、昨年2月の景気対策法がまだしも一定の公共投資を含んでいたのに対し、今回はまったくない。「雇用創出」策の一つは、雇用や賃金を増やした企業に減税をするという方法。「政府は企業の雇用拡大に必要な環境整備を担う」と言うが、実際は資本による大失業を容認し助長することにしかならない。もともと企業減税は共和党の路線である。
「雇用創出」のもう一つの方法が「5年間で輸出倍増」という案だ。それで「200万人分の雇用拡大」という。だが輸出倍増は、計画中のFTA(自由貿易協定)の締結などでできるものではない。他国資本が押さえている市場を、通商戦争を仕掛けて奪い取るということだ。しかも、そのためにますます米市場を保護主義化し、他帝国主義資本を締め出すしかない。それは世界経済のブロック化を促進し、ドル暴落と世界大恐慌を加速する。
一般教書では「米国が二番手になることを受け入れはしない」として、競争相手として中国・ドイツ・インドを名指ししている。没落する基軸帝国主義が、死活をかけて世界市場の再分割に打って出ると宣言したに等しい。これは30年代のような相互絶滅型の帝国主義間争闘戦を激化させ、世界戦争の危機を加速させるものとなる。
さらに輸出を増やすための”緩やかなドル安志向”は、いつドル暴落に転じてもおかしくない。また、一般教書では「11会計年度から3年間は国防費などを除いて支出の伸びを凍結する」とした。しかし、このような小手先の対応で財政赤字が解決するはずもない。
安保・外交政策では「核兵器の脅威」を明言し、昨秋に「努力」するとした包括的核実験禁止条約には一言も触れていない。北朝鮮とイランには「より強力な制裁」「より深刻な結果」と恫喝している。オバマ政権はイラク・アフダニスタン戦争で泥沼に陥りながらも、ますます戦争拡大によって延命しようとしている。全世界の労働者の団結で、オバマ政権を打倒しよう。