2010年2月 8日

日本経団連「経労委報告2010」 9割を非正規職に

週刊『前進』06頁(2426号3面1)(2010/02/08)

日本経団連「経労委報告2010」に反撃しよう
 「雇用確保」と称して9割を非正規職に
 「企業存続」が一切で定昇なし・賃下げ

 日帝ブルジョアジーは95年日経連プロジェクト報告路線として打ち出した「9割の非正規雇用化」の貫徹に突き進もうとしている。日本経団連の2010年版「経営労働政策委員会報告」こそそれだ。しかし労働者の怒りの爆発は必至だ。反合・運転保安闘争路線で、JR東検修外注化阻止の10春闘を闘いぬこう。経労委報告は、国鉄決戦の戦略的意義を敵の側から証明している。本稿は、外注化阻止決戦総決起の立場からこれを怒りを込めて断罪する。

 非正規職激増は「自発的選択」?!

 「雇用の確保」とは9割の労働者を非正規雇用に置き換える攻撃だ。日本経団連が、日帝ブルジョアジーの分裂的大動揺によって道州制にすら言及できなくなる危機的状況の中で打ち出したのが、総額人件費削減のための徹底した非正規雇用化と賃下げの攻撃だ。
 国鉄分割・民営化やNTT民営化・分社化の攻撃を引き継ぎ、日本経団連は95年日経連路線での終身雇用制解体による「9割の非正規雇用化」を基本路線として打ちだし、一方で労働法制の改悪につぐ改悪を強行していった。それが今日の全社会的な雇用破壊という現実を労働者に強いている。いまや自治体職場でも3割から4割の労働者が非正規雇用に置き換わり、社保庁解体後の日本年金機構においても、3年後の国税庁との統合・歳入庁発足で再び全労働者の解雇・非正規雇用化が現実の問題となろうとしている。
 経労委報告が強調する「雇用確保」とは、圧倒的大多数の労働者の非正規雇用化をさらに徹底的に進めるという宣言以外のなにものでもない。
 経労委報告は、非正規雇用労働者の激増を「規制緩和が主たる要因であると断定することはできない」として、「女性や高齢者など多様な主体の労働市場への参画の高まり」があり、労働者の側が「自発的に選択している」とまで言ってのけた。いったい誰が好きこのんで低賃金で劣悪・不安定な雇用条件を希望するというのか。食えなくなったから仕方なく非正規雇用に駆り出されているということではないか。盗人たけだけしいとはこのことだ。
 経団連は「労働者の多様なニーズに応じた多様な就業機会の確保」として、労働者派遣制度の堅持を求め、非正規雇用化をさらに徹底的に進めようとしている。労働者の反乱を抑えつけ、賃金奴隷たる労働者が死に絶えることを避けるためにのみ「セーフティネットの強化・充実」を主張し、同時に「保険原理によってカバーすることがなじまない労働者(非正規雇用)が増加していることへの対応」として、企業と労働者が折半で負担する雇用保険制度の解体まで検討し始めている。
 全面的な非正規雇用化の大攻撃に対して、JR外注化阻止決戦の決定的意義は明らかである。全労働者の未来のかかった決戦として、断固総決起しよう。
 経労委報告は「雇用確保」=非正規雇用化と一体で、今春闘におけるベアゼロ、定昇凍結・賃下げを公然と打ち出した。

 生活給を解体し能力給の導入へ

 「政労使合意」による「日本型ワークシェアリング」として、非正規雇用化に加え、労働時間短縮、配置転換・出向・転籍、雇用調整助成金を活用した一時休業、無給休日など、賃下げを推し進める方策をならべたて、「従来の労働関連法制や対象業務にとらわれない自主的・自律的な時間管理を可能とする新しい仕組みの導入」(悪名高い残業規制撤廃の「ホワイトカラーエグゼンプション」のことだ!)にまで言及。鳩山政権の「子ども手当」導入をも理由に、生活給の解体・諸手当の見直しに踏み込み、「福利厚生費の増大は、賃金改定がない場合でも総額人件費を増大させる」と問題にした。
 しかも「同一価値労働同一賃金」をうたって、徹底的な能力給・成果主義賃金、出来高賃金の導入、非正規雇用化をとことん促進しようとしている。日本経団連は、非正規雇用の低賃金体系として、終身雇用制と年功賃金制、定期昇給を最終的に解体し、生活給としての賃金を根絶するために「同一価値労働・同一賃金」を掲げ、しかも賃下げへの労働者の怒りの決起をペテンをもってかわそうとしている。連合や一部の学者の主張を逆手にとって、労働者全体に対する徹底的な非正規雇用化と賃下げを推し進めようとしているのだ。
 こうした非正規雇用化と賃下げの攻撃は、果てしない労働強化と一体であり、それ自体が安全・事故問題を爆発させることとなる。まさに、労働者の命が問題となっているのだ。
 経労委報告は「企業が基軸」とするイデオロギーを満展開している。 「企業は、豊かな国民生活に資する財やサービスを提供することで付加価値を継続的に生み出し、雇用を確保するとともに、その付加価値を賃金や法人税などを通じて社会に還元する重要な役割を担っており、経済社会にとって不可欠な存在」とまで言って「企業の存続・発展」を強調し、その観点から「税・財政・社会保障の一体的改革」を主張している。

 鳩山の施政演説とピッタリ符合

 この「一体的改革」は鳩山施政方針演説とぴったりと符合している。鳩山演説のいう「新しい公共」だ。自治体の行政サービスをNPOやボランティアが担い、それをとおして「肥大化した『官』をスリムにする」。公務員労働者を一掃し、無償・有償のボランティアやNPOに置き換えるというのだ。
 しかし財やサービス、付加価値は労働者の労働によって生み出されたものだ。賃金は付加価値の一部を労働者が取り戻したに過ぎない。法人税も労働を搾取して得た利潤から支払われる。なにゆえに奴隷主たる資本の存続・発展のために労働者が犠牲にならなければならないのか。階級的怒りを爆発させて、資本主義を打ち倒す階級決戦に立つ時が来たのだ。
 このときに当たって、連合・全労連の果たしている役割はきわめて犯罪的だ。経労委報告がもてはやす政労使一体となった「雇用戦略対話」に参加し非正規雇用化とベアゼロ、定昇凍結・賃下げをともに支える連合、「ルールある資本主義の発展」をこい願って現場の闘いを裏切る全労連、「労働者は闘っても勝てない」として限りない屈服の道を進む国鉄4者4団体派の正体はいまや完全に明らかとなっている。
 6000万労働者、非正規雇用を強制されている2000万の青年労働者の怒りは爆発寸前だ。その怒りに火をつける闘いこそ、階級決戦としての外注化阻止決戦だ。
 国鉄決戦を先頭に、反合理化・運転保安闘争路線が、全職場・生産点でうなりを生じて闘われている。労働組合権力を現場の革命的労働者が奪取する絶好機だ。国鉄決戦を基軸に4大産別決戦を闘いぬき、小沢・鳩山政権打倒へ。2・1〜2動労千葉ストライキに続いて、2・13大結集で10春闘の爆発をかちとろう。
 (大迫達志)
------------------------

 経労委報告 暴論の数々

 「非正規労働者は労働関連法制の改正に関係なく、一貫して増加している。規制緩和が非正規職増加の主たる要因ではない」
 「女性や高齢者など多様な主体の労働市場への参画が高まっている」
 「6割近くが、引き続き有期契約労働での就労を希望するなど『非正規』就労を自発的に選択している労働者が多い」
 (報告「雇用の多様化の進展」)