〈焦点〉 決裂したCOP15の核心
〈焦点〉 温暖化と大国間の争闘戦
決裂したCOP15の核心
「地球温暖化」の原因といわれる大気中のCO(二酸化炭素)濃度を下げる目的で1992年に採択された「気候変動に関する国連枠組み条約」の第15回締約国会議、「COP15」が昨年12月、デンマークのコペンハーゲンで開かれ、事実上決裂した。97年のCOP3(第3回会議)で採択された「京都議定書」の効力が2013年に失効するため、それ以後の国際的な削減義務を取り決めることが課題だとされていた。
しかし結果は無惨であった。会議は懸案をすべて先送りし、「産業革命以前からの地球の気温上昇を2度以内に抑えるべき」との科学的見解を「確認」するだけに終わった。国別の温暖化ガス排出削減目標も「自主申告」で、削減義務も提示できなかった。
地球温暖化問題は、帝国主義間・大国間の争闘戦とエネルギー産業をはじめ大ブルジョアジーの思惑や利害が錯綜し、温暖化の真偽そのものが論争となってきた。しかし88年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)設立を契機に一定の「学問的」研究が進展、温暖化が「近代文明」をもたらした人間活動によって生じたとの認識それ自体は「先進国」「途上国」を問わず承認せざるを得なくなった。世界のCO排出量は、自然界が吸収できる量の2倍を超えたというのが共通認識だ。
このまま温室効果ガスの排出が増え、産業革命以降の気温上昇が2度を超えると、異常気象の頻発や食糧危機はもとより、世界経済にも破壊的な影響が及ぶと予想され、それゆえに世界の帝国主義諸国も無視できなくなった。
しかしCOP15の現実は、大恐慌下の帝国主義間・大国間の利害対立と争闘戦の本質をむき出しにした。世界の2大排出国であるアメリカと中国(両者合計で世界の4割超)が裏で手を組む形で「削減義務」の枠組みを崩壊させた。
また日本政府が「優等生」だったわけでもない。鳩山首相が「90年比で25%削減」を打ち出したが内実は正反対だ。08年度は90年比で1・9%の排出増加で、京都議定書での「6%減」の確約すら達成不可能な状況だ。”アメリカと「途上国」中国が会議を決裂させた”などと批判する資格もない。
そもそもIPCCの計算は「直ちに50%削減しないと地球は危機だ」という内容だった。しかし京都議定書の目標は、総排出量の60%を出す先進国の約5%削減をめざすというもので、科学的にはほとんど意味のない数字だ。これすらブッシュ前政権は拒否し、そしてオバマ政権は「温暖化対策」と称して、かのスリーマイル島原発事故を解決できないままに「原発新設」再開を決めた。資本主義の暴走は、地球環境という次元でも危険水域を超えているのだ。
エンゲルスが指摘したとおり、人間は「自然の一部」である。人間は自然を支配したが、自然は人間界に報復することも認識された。しかし人間の生産活動がもたらす将来の破滅的事態を規制するためには「認識以上のものが必要だ。それには、われわれの従来の生産様式を、また今日の社会制度全体を完全に変革することが必要」なのだ。地球環境問題とはまさにプロレタリア世界革命でしか解決できない問題なのだ。