2010年1月 1日

法大5・28裁判で無罪をかちとった 藤田正人弁護士に聞く

週刊『前進』12頁(2422号4面2)(2010/01/01)

法大5・28裁判で無罪をかちとった
 藤田正人弁護士に聞く
 学生が主人公の裁判闘争 力でもぎ取った無罪判決

 9月14日、法大4・27−5・28暴行デッチあげ裁判で法大生・新井拓君と中島宏明君が無罪判決をかちとった。この裁判の主任弁護人である藤田正人弁護士に法大闘争の勝利性と2010年の展望をお聞きした。藤田弁護士は法大暴処法弾圧裁判の主任弁護人を務め、国労5・27臨大闘争弾圧裁判弁護団、動労千葉顧問弁護団、三里塚反対同盟弁護団、さらに「裁判員はいらない!大運動」事務局次長として大活躍している。(編集局)
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 続く勝利判決

 最近、僕は「無罪弁護士」と呼ばれています。一般刑事事件も含めて無罪は初めてですが、9月に法大で無罪判決をかちとりました。そして11月の国労5・27臨大闘争弾圧事件でも無罪判決。しかも暴処法(暴力行為等処罰法)と共謀という弾圧の大本を粉砕し、検察官が控訴すらできないところまで追い込んだ大々勝利です。法大裁判もそうですが、検察側の立証を根本的に粉砕して、力ずくでもぎ取った無罪判決というのが実感です。
 また、私も顧問弁護団の一員である動労千葉の裁判でも、10月には運転士登用差別事件の控訴審で逆転勝利しました。星野文昭さんの第2次再審請求も、ついに11月27日に提訴しました。
 09年後半は、「11月集会派」の私がかかわっている裁判で、毎月、大きな勝利が続いています。12月は法大弾圧8学生の保釈奪還です。22日の3人奪還に続き、暴処法の5人の奪還を実現したいと思います。

 主導権握って

 今、刑事裁判の有罪率が99・9%と言われるほど無罪を取るのは難しい。そういう中で無罪が続いているのはどうしてなのか。
 「8・30」で自民党が大敗北し、戦後の55年体制が崩壊しました。しかし、民主党はもともと改憲勢力で、司法改革賛成、裁判員制度推進の立場です。そんな民主党政権に期待するのではなく、もう生きていけないという労働者の怒りが噴き出し、現状変革を求めている。そんな激動情勢の中で民主党=連合政権と対決してかちとった勝利です。
 刑事裁判は支配の側がしつらえた土俵です。でも、そこに引っ張り出された以上は徹底的に闘うしかない。それだけにやりがいはあります。
 裁判の結果は無罪がいいに決まっているけれど、とにかく無罪なんて考えないで、こちらが主導権を取った裁判をやる。逆に言うと、検察側のペースでは進ませない。裁判の枠組みにとらわれず、被告人の防御権の最も積極的な行使という発想でやっています。

 “未来明るい”

 無罪判決をもぎとった4・27−5・28法大裁判では最初に「公判前整理手続き」の問題がありました。検察官も裁判所も強行しようとしていたのを一切拒否した。併合問題でも「併合しない」というのを、併合しないと裁判は進められないと主張しました。検察側証人の尋問も、検察側も裁判所も反対尋問時間を極力制限しようとしてきたのを全部粉砕して、何期日も徹底的に争いました。
 法廷では、被告人とされた学生を主人公とする裁判を追求しました。裁判官は被告人を無視し、被告人の意見は聞こうとせず、弁護人とのやりとりだけで裁判を進めようとします。しかし、こっちはそれに一切乗らず、被告人を押し出し、裁判官に被告人が主体だと認めさせてきました。
 とにかく、被告人たち学生は元気です。今、法大暴処法事件と4・24事件を一緒にやっている若い弁護士が、「本当に面白い事件の弁護人に呼んでくれてありがとう」と言っています。彼は12月17日の法大集会でも「どんどんこっちが押し切っていると実感できる裁判です。被告人の8学生、そして傍聴席の皆さんがすごく明るい。弾圧事件だから暗くなってもおかしくないのに、それを明るくはねのけている。こっちの方が未来は明るいぞっていうのを実感させてくれる」と発言していました。弁護士も8学生に獲得されています。

 機動班の狙い

 裁判員制度の新設を口実に導入された公判前整理手続きは、非公開の密室で公判での審理内容を証人尋問のタイムスケジュールも含めすべて決めてしまう制度です。裁判員になる市民の皆さんに迷惑をかけることはできない、だから審理スケジュールを事前に決めるんだといって導入されたわけです。法律上は、裁判員裁判でなくても、裁判所がその手続きに付することを勝手に決めることができます。
 この間の裁判員裁判で、公判前手続きがどれだけ防御権を切り縮めているかが明らかになっています。防御権・弁護権をまっとうしようとする弁護人であれば、公判前整理手続きには全面的に対決すべきだと思います。
 実は、法大裁判担当の検察官たちは、東京地検公判部の「機動班」といって、裁判員裁判を研究し、若手検察官を入れて研修させようというチームです。そこが法大事件を担当したのは、明らかに公安事件で公判前整理をやってみようという狙いがあったんでしょうね。国労5・27臨大弾圧裁判も、途中から機動班の担当になっています。それが大破綻したということです。

 裁判員廃止へ

 2010年は何が起こるかわからない。1月6日は日弁連会長選挙の立候補届け日です。日弁連執行部は高山俊吉弁護士に対する懲戒請求を利用して、立候補資格を奪うという攻撃に出ている。私たちは、全国の弁護士約400人の代理人と約500人の抗議署名をもってこの攻撃も粉砕し、選挙戦を闘いきります。
 裁判員裁判の破綻はますます深まっています。来年度の裁判員候補者に通知が送られましたが、拒否する人が目に見えて増えています。
 「裁判員はいらない!大運動」は2月19日に拒否者一斉記者会見、5月18日に日比谷公会堂大集会を予定しています。裁判員制度の廃止を実現して勝利にわき立つ集まりを持ちたいと思っています。
 今春はJR検修外注化阻止の大決戦です。とにかく、この時代、予定調和的なことはあり得ない。何が起こってもおかしくない。一歩一歩前進していく中で勝利が現実化します。頑張りましょう。