2009年12月21日

〈焦点〉 イラク政府中枢で爆弾戦

週刊『前進』06頁(2421号5面3)(2009/12/21)

〈焦点〉 イラク政府中枢で爆弾戦
 米軍撤退戦略が危機突入

 イラクの首都バグダッドで12月8日朝、車爆弾などによる同時多発ゲリラ戦闘が起き、127人が死亡、448人が負傷した。戦闘は、首都中心部の法務庁舎、財務省、労働社会問題省付近など5カ所でほぼ同時に行われた。政府庁舎を標的にした計画的な攻撃だ。
 これは、米軍撤退を2011年末としている米帝オバマ政権と来春に国民議会選挙を控えるイラク・マリキ政権への大きな打撃となっている。米帝オバマ政権は、イラク・アフガニスタンの2正面侵略戦争での長期・泥沼化と中東支配の危機の激化、世界大恐慌の深化とドル暴落の危機の中で、ますます苦境に陥っている。
 米軍が6月にバグダッドから撤退して以降、8月に外務省などを狙った自爆攻撃で100人以上の死者が出て、10月に法務省庁舎を狙った連続自爆攻撃で155人の死者が出た。政府庁舎を直撃する攻撃で100人以上の死者が出たのは今度で3度目だ。米帝の植民地的軍事的保護下、首都中枢防護区域=グリーンゾーンに閉じこもり、党派間・宗派間・民族間の権力闘争に明け暮れているイラクの支配勢力、米帝のかいらい・マリキ政権の治安維持能力の欠如があらためてあらわになった。マリキは9日、首都を管轄する治安部隊トップの解任を発表したが、何の解決にもならない。
 10日にアルカイダ傘下の「イラク・イスラム国」を名乗る組織が実行声明を出し、「シーア派の拠点を選んで攻撃した」と述べた。ゲリラ戦闘は、選挙で「宗派対立解消」と「治安改善」をアピールする戦略を描いているシーア派マリキ首相派を直撃したものだ。
 6日にイラク国民議会は選挙法案を賛成多数で再可決したが、当初、来年1月16日に設定されていた国民議会選挙は3月6日実施にずれ込んだ。ゲリラ戦闘が激化するならば選挙をさらに延期しなくてはならなくなる。
 6月末の米軍の首都撤収時に生じた「平和」は一時的な現象だった。マリキらイラクの支配勢力は、帝国主義の援助と軍事力に依存して石油利権を確保することだけを目的としている。イラク人民の生活や生命は考慮の外なのだ。
 12月11、12日にイラク戦争後2度目となる巨大油田・ガス田開発に関する計15件の国際入札が行われた。これは帝国主義国・大国とイラク支配階級の利権獲得のためのものだ。しかし、欧米の国際石油資本(メジャー)の投資意欲は限定的で、今回落札されたのは、日本の石油資源開発がマレーシアのペトロナスと共同でガラフ油田を落札したのを含め7件にとどまった。治安問題が解決しないかぎり操業できないからだ。
 イラク戦争でインフラに大打撃を受けたイラク政府は、石油増産によって経済再建の資金を確保しようとしている。だがそれは帝国主義の資金と技術に依拠したモノカルチュア的「石油立国」構想でしかない。
 オバマ米大統領は10日のノーベル賞受賞演説で二つの戦争の「最高司令官」として「戦争の正義性」を主張し、正当化を試み、イラク人民を始め全世界の労働者人民の怒りを買った。労働者の国際的団結で世界戦争に向かう米帝オバマを打倒するために闘おう。