検修全面外注化阻止決戦へ“攻めの反合闘争” 魚沼敬一
検修全面外注化阻止決戦へ
“攻めの反合闘争”が勝利の道
魚沼敬一
JR東日本が動労千葉、動労水戸、国労共闘の解体を狙い、検修・構内業務の全面外注化攻撃をかけてきている。国鉄分割・民営化反対—1047名解雇撤回闘争の成否をかけ、反合理化・運転保安闘争を武器に検修・構内業務全面外注化阻止の歴史的決戦に総決起しよう。
最大拠点職場の廃止狙う
JR東日本が10月29日に提案した検修・構内業務の全面的な外注化計画は、業務量にして2000人余りもの業務を外注化しようという提案だ。
JR東日本における外注化攻撃は、2001年のJR総連JR東労組の裏切りで始まった。しかし千葉支社管内では、動労千葉の闘いで8年間、外注化を阻止してきた。
今回の提案の最大の問題は、従来の「逐次実施」から、来年4月1日以降は「一括して委託する」と、すべての業務を関連会社に丸投げし、そこで働いている労働者のほとんどは出向を強制されることだ。それも片道キップの出向だ。しかも、別会社に業務を請け負わせた場合、JR本体の者が別会社の社員を直接指示・指導することはできない。「偽装請負」となるからだ。管理部門も含めそっくり「別会社化」するところまで行き着かざるをえない。
そうなれば、賃金も労働条件もJR本体とはまったく別なものとなる。転籍で、賃金・労働条件の抜本的解体が、検修職場に働くすべての労働者を襲うことになる。
なによりも今回の攻撃は、動労千葉や動労水戸の最大拠点職場である幕張車両センター、勝田車両センターの廃止を意味する。動労千葉—動労総連合の解体攻撃だ。
第2の尼崎事故が不可避
今回の検修・構内業務丸ごと外注化提案は、昨年6月に打ち出した中期経営計画「グループ経営ビジョン2020—挑む—」に沿ったものだ。「競争に勝てる優位性の確保」「不断の創造的破壊」「人口減少社会でも縮小均衡に安住しない持続的成長」「新たな事業の創出」「株主価値の増大」などなど、書かれていることは2000年に発表した「ニューフロンティア21」以上に、競争原理一本やりで突っ走るということである。
「(今後10年間で)運輸業以外の収益を全営業収益の4割程度まで引き上げる」と、エキナカ事業、スイカなどの電子マネー事業の展開をさらに進める。本来業務としての「鉄道会社」ではなくなるということだ。収益率・利益率のアップ、株主にどのくらい配当できるのかという発想から、地方ローカル線・不採算線区を廃止し、そして業務の全面外注化で非正規労働者にどんどん置き換えるというのだ。
01年の外注化攻撃が始まってから5〜6年のうちに、JR東日本における人件費は850億円も減少し、経常利益は1000億円以上はね上がった。その中で取締役連中は計10億円もの報酬を手にしている。
労災も多発している。JR発足以降、350人とも言われる労働者が殺されている。JR東日本は断トツだ。そのほとんどが下請け労働者だ。
外注先の関連会社に数値目標を設定してコスト縮減を要求し、連結決算を理由に「関連会社にも業績評価を適用する」と二重三重に委託費をたたいている。そのため、関連会社は仕事を下請け会社に丸投げし、さらに孫請けへと業務が丸投げされている。そこには「安全確保」が入るすきもない。劣悪な環境で下請け労働者は働かされ、殺されているのだ。
いまJRの輸送障害が社会的大問題になっている。車両故障や信号トラブルが主な原因だ。とりわけJR東日本はひどい。大手私鉄と運行障害比率で比較すると01年〜06年度が約6〜8倍だった。それが07年度には11倍に膨れ上がり、388件だ。毎日どこかで列車が止まっている計算だ。会社が作成した資料でも「鉄道車両固有の技術を継承する社員が少ない」「専門的な技術・技能のレベルアップが低下する」と検修職場の危機的現実を自認している。
それなのに、鉄道の根幹をなす検修・構内業務を丸ごと外注化するというのだ。百数十年の歴史の中で蓄積され、そこで働く労働者によって綿々と継承されてきた鉄道固有の技術力が失われるのだ。
車両センターには、運転席に「故障中」という紙が張られた車両が長期間放置され、さらに故障していることが分かっていながら列車を走らせる事態まで起きている。要員が不足し、修理する体制がないためだ。さらには、列車の脱線を防止するための車輪のフランジが規程値を超えて摩耗し、本来は走らせることができない車両に乗客を乗せて走っている。
全面外注化を許したら、間違いなく第2、第3の尼崎事故が、それも首都圏で起きる。これは労働者人民すべての命がかかった問題だ。
外注化を8年間阻んだ動労千葉
外注化問題は、国鉄分割・民営化以来の最大の攻防点をなしてきた。動労千葉は、01年から始まった保守3部門の外注化を「第2の分割・民営化」攻撃ととらえて真っ向から対決してきた。千葉支社だけはこの8年間、構内・検修外注化に手をつけることができなかった。この闘いの勝利の意義と教訓は限りなく大きい。
初めから外注化を阻止できる展望があったわけではない。定年後の「再雇用」と引き替えに組合に外注化をのませる「シニア制度」に対し、動労千葉は「外注化を認めるような労働組合は労働組合ではない」と協定締結を断固拒否した。「再雇用は動労千葉からの脱退が条件」という当局の卑劣な攻撃に対し、激しい討論を繰り返し、執行部は再雇用先の確保に奔走した。
そして何よりも、毎年ストライキを構え、徹底した職場闘争を闘い、シニア制度を5年間で廃止に追い込み、外注化も止めたのだ。
今回の攻撃も同じだ。 今回の外注化提案は矛盾だらけだ。安全の確保や検修要員の養成、技術継承・指導の問題から見ても外注化は絶対に破綻する。しかも、関連会社にJRのような労務対策をできる体制はまったくない。徹底抗戦すれば必ず勝利の展望は切り開かれる。
そもそも外注化は、労働組合が「絶対反対だ」と闘い続ければ実行できない。だが、JR東労組が会社の手先となって現場にそれを強制し、国労も含めて「仕方がない現実だ」とズルズルと認めてしまってきたのだ。
こうした労働組合の現状を、今回の外注化阻止の闘いの中で変えようではないか。それは可能だ。東労組組合員だろうが国労組合員だろうが、検修職場のほとんどの労働者にとって出向・転籍が問題になるからだ。
国鉄分割・民営化から23年、国鉄分割・民営化の真の決着をかけた闘いとして総決起しよう。その最大の核心は平成採=青年労働者の獲得だ。
反合・運転保安貫き闘う
今回の外注化を巡る攻防は、道州制導入、大失業と戦争を巡る決戦の行く末を決める位置を持っている。道州制=「地域主権国家」攻撃は、公務員労働者360万人をいったん全員解雇し、民営化した事業所などに選別再雇用するという究極の合理化—民営化・労組破壊攻撃だ。
これといかに闘うのか。闘って勝利できる路線はあるのか。それは、動労千葉の反合・運転保安闘争の中にある。①労働組合が民営化・労組破壊攻撃に真っ向から立ち向かう闘いの路線と方針を持つことができるのか②多くの労働組合がその現実に屈服している現状を現場から打破する実践的な運動をいかに提起できるのか③そのための職場での階級的団結をいかにつくりあげるのか——という、いま労働組合に問われている核心問題がここに凝縮されているのだ。
戦後の日本労働運動は、労働組合にとって最も基本的な課題である合理化問題に対して常に受け身でしかなかった。まともに闘い抜いた歴史をほとんどもたない。資本との非和解的激突になるからだ。合理化・民営化に屈服し、むしろ協力することで資本に存在を認めてもらうことを方針にさえしている。その究極が動労カクマル(現JR総連カクマル)だ。貨物輸送安定宣言、「働こう運動」、そして戦後最大の合理化攻撃であり外注化=非正規雇用の出発点である国鉄分割・民営化攻撃に対する全面的裏切り、外注化の丸のみだ。
資本とはあくなき利潤追求と合理化を本質としている。それは安全を切り捨てる。資本の運動原理そのものが絶対に「安全」と相いれない。
特に鉄道においては、合理化や労務政策の矛盾は、真っ先に安全の危機として顕在化する。「安全確保」という問題は、資本も否定することはできない。
動労千葉の反合・運転保安闘争は「安全」という階級の正義に立脚し、「資本の最大のアキレス腱(けん)は安全問題にある」ことを切り口にして、反合理化闘争の主導権を労働組合が握り返す闘いである。たとえ合理化が強行されても職場生産点から「攻めの反合闘争」を闘い、合理化によって奪われた労働条件を奪い返す闘いを貫いてきた。
これが1972年の船橋事故闘争をとおしてかちとった反合理化闘争の新たな地平、戦後労働運動の限界を突き破る反合理化闘争路線だ。そして、その後の三里塚ジェット燃料貨車輸送阻止闘争、動労「本部」カクマルとの分離・独立闘争、国鉄分割・民営化反対闘争に勝利してきた路線だ。そして8年間にわたって検修・構内業務外注化を阻止してきた闘いの路線なのだ。
労働者の3人に1人は非正規職という社会の現実。これは具体的には、あらゆる企業が合理化・外注化を行った結果として生み出された現実だ。こうした事態を許した最大の原因は、本来、労働者を守って闘うべき労働組合がなんの抵抗もせずに屈服・容認してきたことにある。
今回の検修・構内業務外注化阻止の闘いは、この現実と真っ向から対決する決戦であり、国鉄分割・民営化に革命的決着をつける壮大な闘いだ。そして、この闘いで解雇撤回の原則を投げ捨てた4者4団体路線との決着をつけ、国鉄1047名解雇撤回闘争の画期的前進を切り開こう。民主党・連合政権の最弱の環=連合本部を打倒する闘いに立ち上がろう。国労5・27臨大闘争弾圧裁判での画期的勝利の地平を打ち固め、国鉄闘争を軸とした4大産別決戦の前進をかちとろう。革共同は、真の労働者革命党としての飛躍をかけ闘い抜く決意だ。