2009年12月14日

〈焦点〉 アフガンに米軍3万増派 オバマ新戦略

週刊『前進』06頁(2420号5面2)(2009/12/14)

〈焦点〉 アフガンに米軍3万増派
 破産必至のオバマ新戦略

 オバマ米大統領が1日、アフガニスタン駐留米軍を来年夏までに3万人追加派兵する新戦略を発表した。現地司令官が要請した4万人を下回るが、展開にかける時間を半分にする「急派」だ。現在7万1千人のアフガン駐留米軍は増派で約10万人になる(イラク駐留米軍は約12万人)。
 オバマは就任直後「銃弾だけでは勝てない」と、民生支援にも包括的に取り組む戦略を示したが、再び軍事に重心を傾けている。
 米帝は、01年以来のイラク・アフガン戦争で5千人以上の米兵が死亡し、帰還兵を含め5千人以上が自殺するという深刻な危機にある。今回の増派で年間300億㌦(約2兆7千億円)、兵士1人あたり100万㌦(9千万円)もの膨大な戦費がかかる。11月5日に米国内最大級の陸軍基地で反乱が起こった。増派の動きへの直撃だ。しかしオバマはイラクに続くアフガンの泥沼をあくまで戦争で打開しようとしているのだ。
 オバマは「2011年7月から治安権限をアフガン政府に移譲するとともに米軍撤退を開始する」と出口戦略も設定したが、汚職体質の傀儡(かいらい)カルザイ政権、脱走兵続出の政府軍への権限移譲は難しい。増派は米帝の危機を促進する。
 アフガン戦争に反対する米国民が6割に上り、民主党の重鎮も異論を唱えている。これに対しオバマは「(9・11を実行した)アルカイダとそれを支えるタリバーンをアフガンとパキスタンで打倒することが戦争目的だ」と訴え、「43カ国の加勢があるから『ベトナム化』はしない」と強弁した。
 だが現在、タリバーンが支配しているか優勢に立っている地域はアフガン全土の97%に達する。アフガン政府軍(9万4千人)と外国軍(10万9千人)は敗北しているのだ。戦況を打開できる展望はまったくない。アフガン国防省高官は「3万人増派で1年半以内に撤退開始などできない」と言う。現地マクリスタル司令官も「タリバーンの攻勢に対してとどめになる方法はない」と認めている。
 オバマ新戦略に対応して北大西洋条約機構(NATO)は4日、指揮下のアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)の協力国を含めた44カ国の会議で7千人の増派を決めた。主要国は消極的で、米欧争闘戦が強まっている。 ISAFは現在、約8万3千人(うち米国以外が3万8千人)が活動中で、来年中に約12万人になる。イタリアが1千人、NATO加盟を望むグルジアが900人、ポーランドが600人、スロバキアが250人、韓国が350人の増派方針だ。アフガンに9千人を派兵する英国は500人の増員にとどまる。今年に入りアフガンでの戦死者が倍増、英兵100人、米兵300人弱で過去最高だ。過半数の英国民が派兵反対で、大増派は難しい。フランスとドイツは1月下旬のアフガン国際会議(ロンドン)をめどに態度を決める。4400人を派兵するドイツでは、9月にアフガンの一般市民を巻き込んだ爆撃を指令したことなどから批判が強まっている。
 オバマ新戦略の破産は必至だ。帝国主義のアフガン・イラク侵略戦争を世界革命に転化するために労働者は団結して闘おう。