2009年12月14日

松崎“復権”運動に断を 樋口篤三「鳩山友愛革命」絶賛

週刊『前進』06頁(2420号2面1)(2009/12/14)

松崎“復権”運動に断を
 樋口篤三が「鳩山友愛革命」を絶賛

 民主党・連合政権に恭順を誓い1047名闘争解体を策す松崎と樋口
 JR総連カクマル・松崎の復権運動が、国鉄1047名闘争の破壊・解体を追求する4者4団体派など体制内派指導部を巻き込む形でうごめいている。元『労働情報』編集長の樋口篤三や、戸塚秀夫東大名誉教授らによる「JR総連・松崎聞き取り研究会」運動なるものがそれだ(前号まで既報)。JR総連の機関誌『われらのインター』10月15日付号は、樋口署名の「鳩山友愛革命に注目を/二大政策——地域主権国家と東アジア共同体」なる駄文を掲載し、民主党・連合政権への全面的な恭順の意を表明した。今回はこのカクマル・松崎と一体となった「樋口論文」の犯罪的意図を徹底的に断罪する。

 「友愛」=「左右の全体主義との戦い」への転向宣言

 樋口篤三は、労働運動情報誌『労働情報』の元編集長である。60年代のベトナム反戦闘争以来の、いわゆる新左翼系労働運動の周辺で、「プロレタリア統一戦線をめざして」と称して各党派の中心人物と接点をもってきた人物である。
 その自称「新左翼系労働運動家」の樋口は、JR総連・松崎の「聞き取り研究会」なる運動のフィクサーとなった上に、今回「鳩山の友愛思想」を絶賛する恥ずべき転向宣言を出した。民主党・連合政権への全面降伏だ。松崎、樋口らの新たなファシスト運動の立場は、自民党政権にもできなかった反動的飛躍をめざす民主党・連合政権に忠誠を誓うものだ。腐敗・転落の極みである。
 樋口の駄文は、鳩山が総選挙中に発表した論文「私の政治哲学——祖父一郎に学んだ『友愛』という戦いの旗印」(『VOICE』9月号)を「刮目すべき綱領的文書」などと持ち上げた。そしてこの鳩山論文に展開されている「友愛革命」なる「政治哲学」と、政権の「2大政策」である「地域主権国家」「東アジア共同体」構想を、まともな分析もなしに手放しで絶賛している。
 そもそも「友愛」なるスローガンは、戦前の日本労働総同盟(総同盟)の前身として1912年に生まれた「友愛会」以来の、階級的な労働運動を圧殺する反共イデオロギーだ。鳩山自身が論文で「左右の全体主義との激しい戦いを支える戦闘の理論」だと明言している。そして戦後は、資本がバックアップする民社党=同盟系の反共右翼労働運動の中心スローガンとなり、民間大資本を中心に日帝の戦後復興と高度成長を支える柱となってきた。現在も、民社系の全郵政に全逓中央が屈服して統合されたJP労組本部の中心スローガンが「友愛」だ。彼らは統合にあたって「左右の全体主義の排除」を確認、09春闘ではいち早く「スト絶滅宣言」を出した。「友愛革命」なる思想のの反動性は明らかだ。
 これを樋口は「フランス大革命の『自由・平等・博愛』の『博愛』であり、左翼世界が無視してきた思想である」「見事だ。われわれも学ばなければならない」などと絶賛した。樋口自身が「左右の全体主義との戦い」という階級圧殺思想に屈したのである。
 また樋口は、鳩山政権の「地域主権国家」と「東アジア共同体」構想も手放しで賛美した。この「2大政策」の本旨は、一方での「国政における権力の集中」(小沢)と、他方での「地域主権」の名による大資本の活動規制撤廃と民営化=道州制にある。それを樋口は全面賛美した。
 鳩山は「アメリカ一極時代の終焉とドル基軸体制の懸念」という認識のもと、「覇権国家アメリカと、覇権国家たらんとする中国の狭間で、日本が政治的・経済的自立と国益を維持する」とし、「アジア共通通貨が目標。その背景をなす東アジアの恒久的完全保障の枠組みを創出する」という。新たな帝国主義的国家戦略である。
 それは、日本経団連が唱える「道州制導入・東アジア共同体推進・社会保障制度の解体」という綱領を、自民党支配の崩壊を踏まえて貫徹する立場だ。「地域社会やNPO」などの「市民参加」を積極的に位置付けていることも含め、現代版の大東亜共栄圏・産業報国会・大政翼賛会をめざす綱領なのである。
 樋口の駄文には、こうした最低限の分析もない。そして結論は「鳩山・小沢コンビの理念とパワーに期待したい。下からの市民運動、NPO、心ある議員らの連携と党派を超えた運動が必要だ」というものだ。「新左翼労働運動家」を任じる樋口が「鳩山・小沢コンビに期待する」とはあきれた転向ぶりだ。
 これは、JR総連カクマル・松崎による民主党・連合政権への救済の哀願なのだ。「左右の全体主義と戦う」ファシスト突撃隊として、もう一度登用して欲しいという悲鳴だ。樋口の「鳩山友愛革命」賛美も、この松崎の意を体したものだ。
 これは「松崎聞き取り研究」なるファシスト運動が最初から破産していることの表明でもある。動労千葉や国鉄1047名闘争を先頭に、わき起こりつつある労働者階級の爆発的な決起が国鉄分割・民営化以来の新自由主義攻撃を打ち破り、ついにブルジョアジーとの全面対決に向かい始めたことに追いつめられた、ファシスト松崎の苦悶なのである。

 “松崎主導でJR労働運動の統一を”なる一大反革命

 樋口らの「松崎聞き取り研究会」運動の悪質さは極まっている。樋口は、雑誌『情況』08年1・2月合併号に「60年間の実践の教訓と私の自己批判」なる文章を投稿し、「JR総連の松崎明はもう革マルではない」「(国鉄分割・民営化に協力した)松崎は裏切り者ではない。私の認識は誤っていた」などという松崎への全面擁護を始めた。
 そしてこの文章の中で樋口は、松崎ヒアリングの参加メンバーの一人である「社会主義協会代表代行」で元社青同委員長・山崎耕一郎の以下のような「感想」を紹介した。山崎は協会派の元代表・向坂逸郎のおいだが、いわゆるチャレンジグループ(国労内の連合派)の”親分格”で、現在でも国労に強い影響力を持つ指導的人格の一人である。
 その山崎がなんとカクマル・松崎を賛美し、「JR総連の『ニアリー・イコールの労使関係』論は、これからの連合運動を強化するのに有効」「貨物安定宣言以来の動労の方針転換は『戦術の選択』であって『裏切り』ではない」と、松崎のファシスト労働運動路線を全面的に免罪することを表明したのだ。
 そしてこの上に山崎は「1047名採用差別問題が決着した後、JR労働運動の統一(当面は連携、協力)が課題になる。共闘は可能だ(!)」とまで言い切った。
 事は重大である。大恐慌情勢の中、階級闘争の大焦点となった国鉄1047名解雇撤回闘争を、JR総連・カクマル松崎と組んで解体し、松崎の主導で「JR労働運動の統一」を仕組むのだと公言したに等しい。
 もとよりこのような戯(ざ)れ言を、国労の現場労働者は天地がひっくり返っても許さないだろう。20万人首切りの実行部隊となってきたカクマル・松崎は、国労のみならず連合傘下のほとんどの労働者から不倶戴天(ふぐたいてん)の裏切り者として、今に至るも最大級の怒りの的となっている。松崎が「JR労働運動の統一」を云々すること自体が根本的に破産的であり成り立たないのだ。
 しかし民主党政権の権力中枢に連合中央が深々と入り込んだ情勢を頼りに、松崎・カクマルや樋口らが階級的労働運動の核心部を破壊しようと動き回ることは、まさに罪万死に値する一大反革命である。

 松崎明はカクマルそのもの

 事態の核心にかかわる問題を指摘しよう。松崎明はカクマルそのものである。そもそも反革命党派カクマルを創成した人格の一人であり、黒田や土門とともに、3・14反革命(本多延嘉・革共同書記長虐殺)の最高責任者なのだ。この罪状は永遠に消えない。そして問題は、現在もJR総連・松崎という存在そのものがカクマルの組織的重心をなしていることにある。
 カクマルの組織分裂は事実だ。国鉄分割・民営化の手先となり、権力・JR資本に寄り添ってきた揚げ句に、用済みとなって「走狗煮らる」状態に陥り、地方組織が壊滅状態となるなか、93〜94年に松崎らJR総連・東労組内のカクマル・フラクがほぼ丸ごと分裂したのだ。
 しかし「分裂した」松崎とJR総連・東労組そのものが反革命カクマルの核心的な組織実体なのである。国鉄分割・民営化で、中曽根と国鉄資本の突撃隊となってきた独特のファシスト労働運動の実体は、松崎率いるJR総連・東労組そのものにあるのだ。それが現在、最後の延命を求めてあがいているのだ。
 「解放社官僚」がカクマルの本体で、松崎とJR総連は「革マルではなくなった」などという主張は、およそ荒唐無稽(こうとうむけい)だ。組織や財政、人脈においても両者はつながっており、主導権は松崎側にある。そのもとで両者の薄汚い野合が進んでいる。
 松崎はことあるごとに「解放社官僚どもの官僚主義」をこれ見よがしに「批判」してみせる。しかし松崎は、自分がいついかなる理由でカクマルという党派を「脱退」したかについて、実は今日に至るまで一言も明言していない。そして、黒田を真っ向から批判・断罪したことも一度もない。自分こそは”黒田思想の継承者”との立場を崩していないのだ。
 反革命通信『解放』も松崎をけっして正面から批判・断罪しない。この間のJR総連・松崎問題にもいまだに沈黙を続けている。解放社カクマルは、実は松崎・JR総連との関係修復をこいねがっているのである。なぜなら松崎・JR総連なきカクマルなど、カスのような存在だからだ。
 「JR総連・東労組=革マル説には根拠がない」なるデマゴギーを、膨大な資金と時間を費やして触れ回る樋口や戸塚らの物言いは、まったくもって論外なのだ。カクマル・松崎の最後の命乞いと延命策に加勢する彼らの立ち回りの責任はあまりにも重大である。

 4者4団体「救済」し国鉄闘争破壊狙う策動許すな

 樋口や戸塚らの「松崎聞き取り」運動なるものまで持ち出した、JR総連カクマル・松崎の狙いは明白である。
 権力から見放され、国鉄分割・民営化以来のJR資本との結託体制が崩壊したファシスト労働運動=JR総連と東労組のカクマル支配は崩壊寸前の危機にある。JR発足後の動力車乗務員勤務制度の改悪も、シニア制度の導入も、業務外注化と非正規職化の拡大も、事故の責任を百パーセント現場労働者に押しつけるむちゃくちゃな指導も、すべてはJR資本の親衛隊となったカクマル松崎のファシスト労働運動のなせる業だった。そしてJR総連という一見巨大な組織は、松崎を番犬として起用した資本の労務政策=結託体制によって成り立ってきた。
 このファシスト労働運動の正体が、国鉄分割・民営化と唯一真っ向から闘い、階級的原則を貫いて団結を守り抜いてきた動労千葉労働運動と、それに牽引(けんいん)された1047名解雇撤回闘争の前進によって、いまやすべての国鉄労働者の前に決定的な形で暴かれているのだ。JR総連傘下7万人の組合員を含めて、カクマル松崎の支配に対する反乱が起きるのは時間の問題だ。
 この深刻な危機の中で松崎はあがいている。4者4団体派を始め、展望を喪失した体制内派労働運動指導部を「救済」することをとおしてファシスト労働運動を復権させること。そして、今や国鉄のみならず、産別の枠を超えて全労働者階級をとらえつつある動労千葉と階級的労働運動を破壊する反革命として名乗りを上げることで、もう一度権力の懐に飛び込もうとしている。
 松崎が、民主党政権を支える連合にすがるように食い込む狙いも露呈した。連合指導部は今、大恐慌下で爆発的に拡大する階級対立の中で、「労働運動」指導部として空前の危機に陥っている。現場労働者の反乱をもはや抑えられない。松崎はこの連合指導部に対して、民主党・連合政権のもとでの新たな翼賛運動としてカクマル・松崎流の”有効な裏切り方”を教示し、それを主導することにファシスト労働運動の最後の延命を託そうとしているのだ。
 しかし労働者階級とブルジョアジーの全面激突は完全に不可避であり、動労千葉と国鉄1047名闘争を先頭とする階級的労働運動の大進撃が始まったという一点で、カクマル松崎の思惑は最初から吹き飛んでいる。
 JR総連カクマル・松崎の最後のあがきをも餌食とし、国鉄・4大産別を先頭に階級的労働運動の大前進を! これが労働者階級の回答である。
 〔森田幸三〕
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 驚くべき「樋口論文」の内容

 「鳩山友愛革命は見事だ。われわれ(左翼)も学ばなければならない」
 「鳩山・小沢コンビの理念とパワーに期待したい。下からの市民運動、NPO、心ある議員らの連携と党派を超えた運動が必要である」
 (「鳩山友愛革命に注目を/二大政策——地域主権国家と東アジア共同体」より=JR総連機関誌『われらのインター』所収)