2009年12月 7日

小沢・鳩山政権と全面対決を 「事業仕分け」と大量首切り

週刊『前進』08頁(2419号7面1)(2009/12/07)

小沢・鳩山政権と全面対決を
 「事業仕分け」と大量首切り
 「国民運動」で労組破壊狙う 全国の職場から大反乱を!

 政権交代から3カ月。積もりに積もった労働者の怒りが自民党政権を崩壊させたにもかかわらず、代わって登場した鳩山政権が、新自由主義攻撃をますますエスカレートさせて労働者に襲いかかっている。今号では、「ムダ根絶」を掲げて公務員労働者への激しいバッシングを大キャンペーンした「事業仕分け」の本性と、鳩山政権の中枢を握る小沢一郎の主張が著書『日本改造計画』(1993年)以来一貫していることの2点を暴く。小沢・鳩山=民主党・連合政権を打倒しよう。

 新自由主義貫き1.6兆円削減

 11月11〜27日にかけて9日間、行政刷新会議が「事業仕分け」を行った。「95兆円に膨れ上がった来年度概算要求を絞り込む」として行われた事業仕分けの本質は、「国民運動」として新自由主義攻撃を貫徹していく究極の民営化攻撃であり、公務員労働者の大量首切りと賃下げ・労組破壊、道州制攻撃だ。
 「仕分け対象」とされた449事業のうち「要求どおり」と結論づけられたのは15事業のみ、それ以外は軒並み「廃止」「予算計上見送り」「予算縮減」「地方へ移管」に「仕分け」された。その結果、概算要求から約7400億円が削減可能とし、公益法人や独立行政法人の基金のうち約8400億円を国庫へ返納するよう要求。しかし合わせて約1兆6千億円で、「削減目標3兆円」の約半額にとどまった。
 そのため鳩山政権は、今回対象とならなかった事業約330件や基金約100件にも「横串」を刺し(仕分けと同じ視点や手法で横断的に見直すこと)、3兆円に近づけたいとしている。
 事業仕分けは、「国民動員」の大パフォーマンスとして行われた。会場に来た傍聴希望者は9日間で2万人近く、インターネットでの同時中継へのアクセス数はのべ270万と宣伝された。
 1980年代の国鉄分割・民営化攻撃では、マスコミ総動員の「ヤミ手当・カラ出張」キャンペーンで国鉄労働者をバッシングした。これを今回はさらに大がかりに、あたかも「国民運動」のごとくに展開。事業仕分けそのものには、日本共産党を含め全政党が賛成だ。その圧力で、廃止や見直し対象とされた職場の労働者の抵抗を封じようとしているのだ。

 賃下げ・非正規化を徹底推進

 「仕分け対象」とされた事業は、道州制に向けた地方移管、公務員労働者の大量首切りのために選別したものばかりだ。当然、防衛費の根幹や原発政策などは対象外だ。
 「仕分け」の手法は乱暴極まりない。1事業にかける時間は55分間。各省担当者が5分程度で事業を説明、財務省主計局が3分程度で査定担当の考え方を表明、とりまとめ役の議員が2分程度で論点を提示。質疑・議論を40分ほど行った後、仕分け人のコメントを回収し、2分程度で評決結果を出す。5分間の休憩を置き、次の事業の仕分けに入る。まるでベルトコンベヤーのようだった。
 以下、見直し対象とされた事業を見てみる。
 ◆防衛省「駐留軍等労働者の給与水準」(概算要求は1233億円)
 「思いやり予算(=在日米軍駐留経費)」全体には手をつけず、基地労働者の賃金だけを対象とした。仕分け人からは「沖縄と神奈川という両極にある地域における実情が反映されていない」「沖縄の現実的レベルに近づける努力が必要」などの声が続き、結論は「見直し」。沖縄の基地労働者の大幅賃下げ、全駐労つぶしの攻撃だ。
 ◆文部科学省「義務教育費国庫負担金」(概算要求は1兆6379億円)
 小中学校で働く教育労働者の賃金の国庫負担金は、小泉「三位一体改革」で06年度に2分の1から3分の1に切り下げられた。同時に総額裁量制(国庫負担金総額の枠内で、賃金水準と教職員数を都道府県が決定できる仕組み)が導入され、教育労働者の非正規化が一気に進められてきた。
 今回の仕分けでは「国と地方の関係の整理などが必要」とされたが、10年度の概算要求は見直さないことになった。しかし、このテーマを俎上(そじょう)にのせたこと自身が大攻撃だ。
 民主党のマニフェストは「国庫負担金の一括交付金化」を掲げ、原口総務相は「11年度から実施する」と主張している。民主党政権下で国庫負担金制度が廃止されることは確定的だ。歯止めない賃下げ、ほんの少数の正規教員以外のほとんどを非正規教員化することを狙っているのだ。
 ◆厚生労働省「保育所運営費負担金」(概算要求は3621億円)
 市町村の民間保育所の経費の2分の1を国が負担してきたものだが、結論は「見直し」。とりまとめコメントでは「(保育料の)基準表の見直しについても検討を」「応能負担を求める」とされた。民営化に拍車をかけ、労働者の首を切り、強労働と賃下げを強いるものだ。

 連合とり込み政労資一体で

 行政刷新会議は、首相の鳩山が議長を務め、副議長は行政刷新相の仙谷、議員には副総理の菅、内閣官房長官の平野、財務相の藤井、総務相の原口らが並ぶ。事務局長には全国の自治体で「事業仕分け」を行ってきたシンクタンク「構想日本」代表の加藤秀樹を任命。財界代表として京セラ名誉会長・稲盛、キッコーマン代表取締役会長CEO・茂木が入り、さらに連合前事務局長の草野(自動車総連出身)も参加した、文字どおり「政労資一体」体制だ。
 民間から登用された「仕分け人」は、このかん事業仕分けを実施した自治体の首長経験者ら。さらに神奈川県の自治体職員6人(小田原市・厚木市が各2人、三浦市・横須賀市が各1人)は、自らの自治体だけでなく他の自治体の仕分けにも参加し、「事業仕分けのエキスパート」と呼ばれる。杉並区和田中学で東京初の民間人校長になり「夜スペ」などの民営化を推進し、橋下に大阪府教育委員会特別顧問に抜擢された藤原和博や、新自由主義攻撃を推し進める大学教授やエコノミストが参加した。
 事業仕分けは「構想日本」の提唱により02年以降、計44自治体で実施されてきた。彼らは「行財政改革の切り札」「戦後60年目の大掃除」と位置づけている(以下の引用は構想日本編著『行政の事業仕分け』より)。
 「最も重要なことは、『事業仕分け』を行った県や市の担当職員が自分たちの仕事の中身についてよく考えるようになったことです」「内部の人が本気になって改革に向けた努力をすることが一番です。『事業仕分け』はその点、内部からの改革の大きいきっかけを作ります」
 そして和歌山県の事業仕分けを、「一番の特色は、仕分けの効果を職員数で表す、つまり県の仕事の見直し(廃止、縮小、ものによっては拡充)に応じて事業ごとの定数を見直し組織体制も改正する点」「廃止や縮小の規模が大きいものであれば……全体としての余剰人員数を出すことになるのでしょう。……『事業仕分け』→『公務員の人員見直し』という正しいアプローチです」と持ち上げている。
 自治体職員を担い手とし、労働者性を奪い尽くし、「ムダ」とされた事業を担う労働者の首を労働者自身の手で切らせるという、究極の団結破壊、組合破壊攻撃だ。
 国に先駆けて事業仕分けを実施してきたのは、横浜の前市長・中田宏ら、いずれも道州制推進者だ。橋下も来月から大阪府で事業仕分けを始めることを決めた。

 渦巻く怒り解き放って闘おう!

 事業仕分けで廃止や見直しと判定された職場では、すでに「自分たちは分限解雇されるのか?」「組合方針で民主党に投票した結果がこれか!」という怒りが渦巻いている。全国のいたる職場で、公務員労働者の生き死にをかけた大反乱が巻き起こることは必至だ。
 核心は、闘う労働組合をよみがえらせることである。これまでの自治体での事業仕分けはみな、組合が積極的に協力したから成り立ってきたのだ。労働者の団結にかけきって闘えば、こんな破綻的な攻撃は絶対に打ち破ることができる。国鉄分割・民営化攻撃以来の動労千葉の闘いはそのことを示している。
 今こそ国鉄1047名解雇撤回闘争とJR外注化阻止決戦の爆発が決定的だ。資本・当局の手先に成り果てた労組幹部と大激突し、「道州制・民営化絶対反対! 小沢・鳩山=民主党・連合政権打倒!」を掲げて、全職場で反乱を巻き起こそう!
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 「事業仕分け」結果の例
◆防衛省「駐留軍等労働者の給与水準」(概算要求は1233億円)
 結論は「見直し」
 →沖縄の基地労働者の大幅賃下げ、全駐労つぶしを狙う
◆文部科学省「義務教育費国庫負担金」(概算要求は1兆6379億円)
 小中学校で働く教育労働者の賃金の国庫負担金。結論は「国と地方の関係の整理などが必要」
(10年度の概算要求は見直さない)
 →国庫負担金制度そのものの廃止、大量解雇と賃下げ、非正規教員づくり
◆厚生労働省「保育所運営費負担金」(概算要求は3621億円)
 市町村の民間保育所の経費の2分の1を国が負担してきたもの。結論は「見直し」
 →保育所の民営化に拍車をかける