2009年12月 7日

JPEXが完全に破産 現場労働者の拒否で要員集まらず

週刊『前進』08頁(2419号4面2)(2009/12/07)

JPEXが完全に破産
 現場労働者の拒否で要員集まらず
 6000人解雇粉砕、民営郵政打倒へ

 セールスドライバーが不足

 郵便事業会社が日本通運との宅配便事業統合計画を撤回し、JPエクスプレス(JPEX)を清算する方向で検討していることが、11月26日の東京新聞で報じられた。報道では「郵便事業会社は、JPEXへの日通出資分を全額買い取り、いったん自社の100%子会社とする。その後、事業規模を縮小しつつ6千人いる従業員を削減。さらに人員・設備・システムをすべて吸収した上で、JPEX自体は清算する」とされている。
 JPEXの完全破産は今や不可避だ。JPEXは今年4月から9月の半年で「248億円の損失を計上。回復のメドは立っておらず、数カ月先にも資本不足に陥る恐れ」(東京)、「資金ショート(不足)が明確な状態」(産経)、統合の延期で「顧客流出が加速」(日経)であり、事実上の倒産状態だ。11月段階で各職場ではJPEXへの出向者の大半を引き揚げており、要員の面では清算の過程に入っている。
 今回の破産の原因は、現場労働者の出向拒否の抵抗闘争によって、JPEX計画の中核をなす集荷・配達・営業を担うSD(セールスドライバー)が集まらなかったことだ。これが致命傷となり、日本通運のペリカン便との統合が頓挫した。昨年10月1日の統合計画の延期の際、佐藤勉総務相が「要員問題が解消していない」ことを理由に挙げているのがそれを証明している。
 JPEXの完全破産は「郵政民営化絶対反対」「民営郵政打倒」を掲げた動労千葉派の職場での粘り強い闘いの勝利であり、それと根底で結びついた現場労働者の「東北地方だけで150人のSD不足」と言われるような、全国的で広範囲なJPEXへの出向拒否の闘いの勝利だ。
 JPEXの完全破産は会社・資本の攻撃がどんなものであろうが労働者が従わなかったら絵に描いた餅でしかないことを示している。労働者が闘えば絶対に勝てることを確信させるものだ。

 民営化の戦略的事業の失敗

 今回の勝利は郵政民営化攻撃を入り口段階で大失敗に追いやった。郵政民営化攻撃全体を破綻させる展望を手にした。動労千葉、動労水戸を先頭に、5・27被告団の闘い、社保庁労働者の闘いと並んで日帝の新自由主義攻撃を根幹で打ち砕き、4大産別決戦の大前進を切り開くものだ。
 JPEX子会社化攻撃とは、商業新聞でも「郵政民営化を象徴する案件」(東京)と指摘しているように、民営化の成否をかけた「戦略的な事業」であった。
 郵政民営化とは何なのか。「かんぽの宿」の略奪であらわとなったように、300兆円の郵貯・簡保などの郵政資産をブルジョアジーが食い物にすることであり、「利益を上げる」ことを一切の基準に、労働者に対し徹底した強労働・強搾取を進める攻撃である。「子会社化」こそその核心をなす。各部門を次から次へと分社化・子会社化し、その攻撃をとおして労働組合を体制内化させ現場労働者の抵抗をたたきつぶす。それによって非正規職化を進め長時間労働・低賃金を強制し、職場を激変させていく。
 実際JPEXでは次のように計画されていた。年間総労働時間が郵便事業会社より472時間多い最大で2680時間。「病気休暇、冬期・年始休暇はなし」「成果給を導入、定期昇給はなし」、SDには「ヤマト運輸方式の小集団活動組織」を導入し、「グループ間の競争と組織管理」を行わせる(JP労組中央本部作成の資料)。
 死滅の危機にひんする資本主義が延命するために、労働者から生きるための最低限の賃金や人間として必要なギリギリの休息時間まで奪い取り、むしり取る。これが「効率的な経営を目指す」(斎藤次郎日本郵政社長)なるものの実態であり、民営化攻撃なのだ。

 JP労組中央打倒し進撃を

 郵政民営化・JPEX子会社化攻撃の手先となり、積極的に推進してきたのがJP労組中央だ。彼らは組合綱領で「日本郵政グループの健全な発展」を目指し、「生産性運動を推進する」と会社に誓った。労働者の言葉に翻訳するなら「会社が少しでも多くもうける」ために「これまでの何倍もの密度や時間で労働者を働かせる」ということだ。その結果が郵便労働者全体の6割が非正規職という現実であり、「昼飯を食う時間もない」ほどのただ働きの横行である。さらには「自爆営業」と呼ばれる、最大で一人7千枚(35万円)もの年賀状の自腹での買い取り強制だ。
 JPEX子会社化についてはどうか。「JPEXが成長・発展できる会社となること」(第3回中央委員会議案書)、「要員確保は組合として万全を期す」(仙台大会で山口義和委員長)と積極的に推進してきたのだ。今回の事態は、JP労組中央の民営化推進路線の完全な破綻だ。JP労組中央は現場労働者の闘いで本質的に打倒された。
 「『収益性』という難しい課題を背負っている」(斎藤社長)と語っているように、資本の側はJPEXが破綻してもなお民営化の道を突き進むしかない。郵政民営化をめぐる新たな攻防が始まった。何よりもJPEXの「6千人の従業員の削減」=首切り攻撃を粉砕する闘いだ。
 JPEXへの出向拒否の闘いは、JP労組中央によって分断されてきた現場労働者が団結を取り戻しながらの闘いだった。JP労組中央やそれに付き従う支部執行部を打倒し、さらに団結を強め拡大して闘おう。この間の宣伝・扇動の前進をふまえ、組織化の闘いを推し進めよう。