2009年11月30日

別会社化と転籍を狙う 民営化以来最大の攻防戦の到来

週刊『前進』06頁(2418号2面2)(2009/11/30)

別会社化と転籍を狙う
 民営化以来最大の攻防戦の到来

 JR東日本が打ち出した検修・構内業務の全面的な外注化提案は、メンテナンス部門を分社化・子会社し、現場労働者の転籍にまで道を開くものだ。青年運転士に対する「ライフサイクル」(=駅業務への強制配転)攻撃、駅・車掌業務のさらなる外注化と一体で、全JR職場における労務政策の大転換が狙われている。
 JR東日本におけるこれまでの検修外注化は、定年退職した労働者を低賃金で車両整備会社などで再雇用し、その都度、JRの直営から外注に置き換えていく形で進められてきた。しかし、今回の提案でJR東日本は「すべての業務を一括して委託する」と宣言している。技術管理部門や一部管理者をJRに残し、検修のほとんどの業務が丸ごと委託される。こんなことを許せば、いま検修で働いている大多数の労働者は強制出向に出されることになる。「全面一括委託」されれば出向から戻る職場はない。しかも、「技術管理部門だけは直営、他の全業務は外注」というやり方は成り立たない。別会社に請け負わせた業務について、JR本体の者が直接指示・指導すれば偽装請負になるからだ。今回の提案は、まぎれもなくメンテナンス部門の別会社化の始まりだ。

 95年日経連報告引き金に大攻撃

 業務外注化問題は、分割・民営化以来の最大の攻防点をなしてきた。動労千葉や動労水戸が01年に始まる「第2の分割・民営化」攻撃と対決し、外注化を止めてきた意義は限りなく大きい。
 今回の検修全面外注化攻撃は、この力関係を決定的にぶち壊すことを狙うものであり、民主党・連合政権下の〈民営化・労組破壊>〈改憲・戦争>攻撃との頂点をなす攻防だ。以下、90年代後半から10年余りの資本攻勢を振り返ることで、この激突の持っている意味を明らかにしたい。
 長期大不況と帝国主義間争闘戦激化の重圧にあえぎながら日帝ブルジョアジーが打ち出した日経連プロジェクト報告「新時代の『日本的経営』」(95年)は、80年代の国鉄分割・民営化攻撃に続く「新自由主義攻撃の第2の大波」とも言える資本攻勢の開始だった。
 民間主要産業を総なめにする洪水的なリストラが展開された。企業の中枢部門を含めた分社化・子会社化、不採算部門売却や業務外注化、数次にわたる労働者派遣法改悪などが一斉に襲いかかり、そのもとで転籍、労働条件切り下げ、要員削減が激しく進められた。
 日本IBMは、膨大な利益をあげていたにもかかわらず人事、総務、経理、営業部門をそれぞれ別会社化した。労働者は同じ仕事をしているのに別会社に転籍となり、賃金などの労働条件が45%も切り下げられた。
 21世紀初頭になると、官公部門の中心をなしてきたNTT、郵政、自治体、教育、そしてJRでの攻撃が全面化した。
 とりわけNTTの大合理化は恐るべきものだった。99年に発足させた持ち株会社(現NTT)のもと、本体の固定電話事業をNTT東日本・NTT西日本・NTTコムに3分割(03年度末で固定系3社計3万6千人)、他の部門を347社もの子会社(同、計16万9千人)に細分化した。労働者は50歳でNTTを退社、賃金3割カットで子会社に強制的に転籍させられた。転籍を拒否する労働者には全国強制配転攻撃が襲いかかった。旧NTT発足時(84年)に31万4千人いた労働者は、03年度末には20万5千人(10万9千人減)となり、NTT本体(固定系3社)に残ったのは11・5%に過ぎない。

 1047名闘争の解体と一体で

 JR東日本が完全民営化を期して打ち出した中期経営計画「ニューフロンティア21」(01〜05年)は95年日経連報告路線のJR版そのものだ。
 JR東日本は、「株主価値の向上」を正面に掲げ、「メンテナンスコストの徹底した縮減」「グループ会社再編」「人事賃金制度の見直しと雇用形態多様化」を打ち出し、1万人の要員削減を宣言した。この攻撃の中軸が、保守部門(保線・電力・信号通信・検修・構内業務など)の外注化と、車掌職・駅業務への契約社員導入だった。
 「株主価値向上」とは自社の株価をつり上げることを一切に優先するということだ。安全は放り出され、“一銭の利益も生まない”保守部門は丸ごと切り捨てられた。
 現場では労災が激増し、安全が根底から崩壊した。04年以降にレール破断が続発し、05年の尼崎事故(107人が死亡)や羽越線事故(5人が死亡)、06年の伯備線事故(3人の労働者が保線作業中に特急列車にはねられ死亡)が起きたのは必然だった。JR発足以降、500人とも言われる下請け労働者が殺されている。これら一切がJR資本による虐殺そのものなのだ。
 この、日経連報告路線—「第2の分割・民営化」攻撃は、新たな国鉄労働運動解体攻撃と軌を一にして進められた。日帝・国家権力とJR資本が一体となり、「4党合意」を突きつけて国労本部を最後的に屈服させるとともに、本部の屈服をのりこえて鉄建公団訴訟に立ち上がった闘争団員の闘いの圧殺を策し、1047名闘争解体に全面的に乗り出した。
 そして、動労千葉—動労総連合への組織破壊攻撃を激化させるとともに、1047名闘争の主軸として登場を開始した国労共闘を解体するために02年国労5・27臨大闘争での大弾圧を強行したのだ。

 敵の矛盾つき闘えば勝てる

 こうした大合理化攻撃は、必ず労働組合幹部による妥結をとおして実行されてきた。ダラ幹があれやこれやの理由をこじつけて当局の攻撃に承認を与え、その結果を現場に強制してきた。その度に、労働者の誇りは奪われ、現場の団結は破壊されてきた。問題はここでも労働組合なのだ。
 逆に言えば、現場労働者が団結して反撃してこないことを前提にしてしかこんな大合理化攻撃は成り立たないのだ。実際に仕事を回しているのは資本ではなく現場労働者だからだ。職場を武器にして、団結して闘えば絶対に粉砕できるのだ。
 JR東労組カクマルの民営化以来最大の裏切りは、外注化問題での裏切りだ。東労組は97年段階で外注化協力の覚書を当局と交わし、外注化と抱き合わせのシニア協定を率先妥結して極悪の先兵の役割を果たしてきた。
 01年に保線業務が一括して外注化された時、保線区は国労の最大拠点であり“協会派の牙城(がじょう)”と言われていた。にもかかわらず国労本部は、JR東日本との「労使正常化」「1047名問題の政治解決」という幻想をあおって現場の闘いを圧殺した。
 動労千葉は、「第2の分割・民営化」の凶暴さを見据え、結成以来の原点である反合・運転保安闘争路線で再武装してこれに立ち向かった。
 日本の戦後労働運動は合理化攻撃に対してまともに闘い抜いた歴史をほとんど持っていない。合理化との闘いは資本との非和解的激突にならざるをえない。体制内労働運動では反合闘争は闘えないのだ。動労千葉は「安全の崩壊」という資本のアキレス腱(けん)を突き、運転保安確立の闘いを反合理化闘争として闘うことで既成労働運動の限界を突き破ってきた。この闘いの土台となったのが、職場支配権をかけた極めて目的意識的な日々の職場実力闘争だ。
 何よりも国鉄1047名解雇撤回闘争が分割・民営化の決着を許さず闘い抜かれてきたこと、そして動労千葉や動労水戸が10年近くにわたって日経連報告路線のもとでの大合理化をうち破ってきた地平は特筆に値する。
 資本主義社会の命脈はもはや尽き果てている。国家権力とJR資本は、世界大恐慌、自民党支配の崩壊、労働者の根底的な決起の開始という大変な情勢の中で、大攻撃に踏み込まざるをえない。
 しかも今回の外注化提案は、要員確保の面でも、技術継承・運転保安の面でも矛盾だらけだ。郵政民営化を巡っても、日本郵政の宅配部門子会社化=JPEXは完全に破綻したではないか。
 国鉄闘争こそ、民主党・連合政権に対する最大の対抗基軸であり、すべての労働者の怒りの結集軸だ。検修・構内外注化を巡る攻防は、道州制導入、大失業と戦争を巡る決戦の行く末を決める位置を持っている。
 動労千葉、動労水戸はいま、定期大会、支部大会を重ねて、「検修外注化攻撃との闘いをとおして名実ともにJR職場の主流派組合へと飛躍する」という腹を固めて決起を始めている。5・27被告団を先頭とする国労共闘の同志たちは、国労本部を打倒し、国労を革命的に再生する新たな反合闘争を構築する闘いに猛然と入っている。国鉄戦線を先頭に、分割・民営化以来の最大の攻防戦に総決起しよう。