2009年11月12日

〈焦点〉 「臨検法案」を阻止しよう

週刊『前進』08頁(2414号7面2)(2009/11/12)

〈焦点〉 「臨検法案」を阻止しよう
 臨時国会で成立狙う鳩山

 民主党・連合政権は、10月26日から始まった臨時国会に、北朝鮮船舶に対する貨物検査特別措置法案(臨検法案)を提出し、成立させようとしている。
 同法案について新政権は当初、期間の短い今国会への提出方針は明確ではなかった。しかし自民党が議員立法で、前国会で廃案となった同法案を議員立法の形で再提出する方針を決める中、外相の岡田克也が20日の閣僚懇談会で「北朝鮮に厳しい姿勢で臨む」と早期提出を主張。参議院議員会長の輿石(こしいし)東が記者会見で「必ず成立させるべき」と強調するなど強硬姿勢が圧倒的となった。連立政権を組む社民党も一夜にして「容認」姿勢に転換した。
 臨検法案は、5月の北朝鮮「核実験」を非難する国連安保理決議に基づき麻生前政権が提出したが、衆院解散で廃案となっていた。内容は、米軍と連携し、核関連の禁輸物資などを積んだ「疑い」のある北朝鮮船舶を公海上で停船させ、自国の領海内に「誘導」して貨物検査=臨検を行う内容だった。臨検の主体は海上保安庁だが「対応困難な場合は」海上自衛隊も乗り出すとしていた。
 民主党政権の法案は、自衛隊の参加条項を削除する以外は、前政権の法案と同じ内容だ。自衛隊の参加について、外務省は「言わずもがなの問題。海保でお手上げの場合、海自は自衛隊法で出動できる」ので影響はないとしている。
 臨検は軍事的挑発行為そのもので、対北朝鮮侵略戦争の引き金を引く重大な攻撃である。法案提出自体が、日帝の軍事外交政策の決定的エスカレーションだ。
 「北朝鮮への強硬姿勢」は、民主党政権が最も早く態度を決めた政策だ。普天間基地の辺野古移転問題を焦点とする日米同盟政策が、沖縄県民を始めとする労働者人民の怒りの前に激しく動揺し混迷している中で、対北朝鮮政策での強硬ぶりは際だっている。同政権は、10月13日の段階で早々と拉致問題対策本部設置を決め、拉致問題担当大臣を兼任する国家公安委員長・中井洽(ひろし)を10月23日に訪韓させ、「拉致問題での日韓連携」を強く打ち出した。この「拉致問題」と臨検法案は表裏一体の関係だ。
 中井は旧民社党時代からの右翼議員で、現在も拉致議連の副会長を務める。日本の核武装まで主張する田母神元空幕長らの連続講演を取り仕切る西村真悟(元民主党代議士)の「兄貴分」を自認している。「対話と圧力」を掲げる自民党の北朝鮮政策を「生ぬるい」と右から批判し、「圧力と圧力」という強硬政策を公言する。対北朝鮮政策の最強硬派なのだ。
 民主党・連合政権は、この右翼議員に、警察を指揮する国家公安委員長と拉致担当大臣を兼任させた。警察行政の責任者が外交政策を左右する立場に立つとは「政治警察」そのものだが、中井は会見で「兼任は北朝鮮へのメッセージ」と言い放った。ちなみに中井は、JP労組の組織内議員だ。
 臨検法案の国会提出強行で、民主党政権の掲げる「東アジア共同体」構想や「アジア重視」の本質が、新たな装いのアジア侵略政策であることも鮮明となった。労働者人民は臨検法案成立を阻止するために闘い抜こう!