2009年10月15日

〈焦点〉 米帝没落を象徴したG20

週刊『前進』08頁(2410号7面3)(2009/10/15)

〈焦点〉 米帝没落を象徴したG20
 保護主義とドルの暴落へ

 9月24〜25日にピッツバーグで20カ国・地域=G20首脳会議(金融サミット)が開かれた。当初は金融の非常時からの「出口戦略」や金融規制の強化が議題になる見通しだったが、9月半ばになって米帝が最大議題として「世界経済の不均衡是正」を押し出した。「これまで中国・ドイツなどがモノを米国に売り、米国が債務を積み上げてきた」(オバマ)が、これをやめて中国・日本などが内需を拡大すべきだと提案したのだ。
 米帝はそのために、各国の経常収支や債務残高などの指標をIMFが定期的に監視し、内需拡大を義務づける強力な体制を求めた。しかしこれは、中国・ドイツなどの反発に合い、IMFの役割は「助言」に降格、各国が互いに「点検」するものにとどまった。
 米帝が「不均衡是正」を訴え”世界経済のエンジン役を降りる”ことを国際会議で公言したのは初めてであり、米帝の没落の画期をなす。米経済は国内的には借金による過剰消費を膨らませ、そこに日本・中国などからの輸入を増やし、これに伴う貿易赤字の拡大を海外資金の流入(対外債務の増加)によって穴埋めし、これでドルの信認も維持してきた。しかし住宅バブル崩壊と米金融機関の大破綻は、そうした対外債務増加を伴った過剰消費というあり方を終わらせるものとなったのだ。
 短期的に見ても、米帝オバマ政権は当初、ドルの信認が維持されるかぎり財政赤字がどんなに膨らもうと恐慌対策を講ずる構えだった。しかし、すでにこの1年間の恐慌対策だけで、財政赤字の急膨張とFRBの資産の劣化を一挙に引き起し、米国債とドルの信認を低下させてしまった。その結果、さらに果てしなく財政支出を拡大するのは困難となった。しかも今や中国が最大の米国債保有国となり、ドル暴落が現実的な視野に入ってきた。これ以上の財政発動はできず、ドルも暴落しかねないというがけっぷちに立たされて、ついに米帝は世界経済の牽引役を放棄するに至ったのだ。
 しかし、米個人消費は世界のGDPの2割を占めてきた。この米帝に代わる「代役」などいるはずもない。それどころか、昨年来の全帝国主義国と中国などの財政・金融のフル発動というカンフル効果が、すでに切れ始めている。「第2のリーマン破綻」、「景気の2番底、3番底」という世界大恐慌の本格化は必至だ。
 さらに、米帝は世界経済の牽引役からずり落ちただけでなく、保護主義を強め、「緩やかなドル安」を志向しつつ輸出増大によって大恐慌を脱しようと狙っている。世界経済が一層収縮していく中で、米帝が先頭になって世界市場の再分割に打って出るということだ。しかも「緩やかなドル安」志向にしても、ドル暴落にいつ転じてもおかしくない。保護主義と市場再分割、ドル暴落という世界経済の分裂・ブロック化も、今回のG20を転機に急進展する。
 こうした情勢は世界の労働者階級に、戦争と大失業の攻撃を激化させている。G20首脳声明でも「多くの国で失業は容認できないほど高水準のまま」と言わざるをえないほどだ。今こそ、大恐慌をプロレタリア世界革命へ。11月集会1万人結集を実現しよう。