郵政JPEX子会社化計画 破綻広がり「統合延期」
郵政JPEX子会社化計画
破綻広がり「統合延期」
民営化絶対反対の闘いが現場労働者の怒りと結合
民営郵政による圧倒的な労働強化と非正規職化推進(8割を非正規職に置き換える“首切りの自由化”)の「戦略事業」と位置付けられた小包部門のJPEX子会社化計画が、現場労働者の怒りと反撃で重大な破綻に追い込まれている。8月11日に総務大臣が「10・1事業統合の延期」を日本郵政・西川善文社長に要請する事態となった。
「延期要請」の理由は「要員問題の心配が解消していない」(8・12東京新聞)こと。つまり現場労働者の怒りと抵抗でSD(労働地獄で悪名高いサービスドライバー)要員が確保できないのだ。東北だけで「150人も足りない」ことが分かっている。JPEX計画をあらかじめ承認していたJP労組幹部の度し難い裏切りにもかかわらず、当局の意向調査にほとんどの現場労働者が〈出向に応じない>意思を表明したのである。
そして東京では、6月以来「JPEXに行け」と当局の肩たたきにあっていた労働者が、7月1日に予定されていた内命を阻止したことに続き、8月1日の出向内命通知も阻止する勝利をかちとった。この過程で、現場労働者が数十人規模で職場集会を開き、職制を追及し、闘いを放棄した執行部を取り囲んで弾劾の声を上げるという闘いが始まった。06年以来の民営化絶対反対の闘いが、ついに現場労働者の怒りと結びつき、団結した力となって動きはじめたのである。
この破綻のなかで、郵政当局は8月1日に「JPEX(出向)内定通知の日時、出向期間、出向先、出向期間中の所属」を現場に「口頭で通知する」行為に及び、8月3日からJPEX体制のための業務研修を各局で見切り発車した。現場の怒りは爆発した。「認可も下りていないのに業研を強行するとは何ごとか!」「当局がコンプライアンス違反をやるのか!」「質問! おれにも発言させろ!」——全員参加を強要された業研は、現場労働者の怒りが噴出する場と化した。
計画の強行に同意した本部
当局はなぜ、認可も下りない事業の業研を見切り発車できたのか? 7月29〜30日のJP労組・地本書記長会議では「10月1日スタートは変えないことで本社と一致」と確認された。つまりJP労組中央はJPEX計画の「10・1強行」で会社と同意していたのだ。とんでもない大合理化計画であるJPEX攻撃と闘わないどころか、「計画の強行」を会社と裏で合意していたのだ。
8月のJP労組仙台大会では、山口義和委員長(当時)が「JPEXの要員確保は組合として万全を期す!」と言い放った。そして山口は郵政資本の重役に納まった。この人事は、日本郵政社長・西川らの巨額背任・横領事件である「かんぽの宿売却事件」を追及しないことの見返りだと夕刊紙で報道された。
成果主義賃金と総額3割もの賃下げとなる「新人事・給与制度」を自分から申し出たのもJP労組本部だ。全国でまかりとおる非正規職(ゆうメイト)の雇い止めを、闘わずに承認してきたのもJP労組本部だ。JPEX計画は、会社と組合幹部の「合作」だった。
現場労働者の怒りは、ついに職場を席巻し始めた。「おれたちが身を削った組合費で運営されるJP労組は誰のものか」「労働組合は一部幹部の出世の道具ではない」「労働組合は現場の利益を守るための闘いの武器ではないのか」「組合費はストライキで闘うための闘争基金だろ」「本部は1時間のストも打たないどころか“スト絶滅宣言”を出した。やつらはおれたちの組合費から最高3000万円も手当を受け取っている」「こういうのを労働貴族とかダラ幹の腐敗というのだ」「闘わない執行部は現場労働者の敵だ」
JPEX計画の破綻は、すでに物流業界の常識となっている。現場の抵抗に加え、大恐慌下で市場が収縮し大口顧客が同業大手に流出しているのだ。それでも日本郵政・西川が「10・1スタート」に固執し、現場に無理な合理化を強要する理由は、300兆円を超える膨大な人民の資産である「郵貯・簡保」の株式上場(資産の持ち逃げ!)を来年にも強行するためだ。旧郵政官僚と総務省がJPEXの認可を“拒否”する背景は、この巨額の金融資産をめぐる支配階級同士の奪い合いなのである。
郵政民営化絶対反対の闘いこそが現場労働者の利益だ。「労働運動内のブルジョアジーの手先」であるJP労組中央を下から打倒するランク&ファイルの行動と組織化は各地で始まっている。闘わない執行部を全員退陣させよう! 今こそ現場労働者のための闘う労働組合を取り戻そう!