〈焦点〉「専守防衛」の大転換 “防衛懇”報告弾劾
〈焦点〉 「専守防衛」からの大転換
“防衛懇”報告を弾劾する
軍事外交政策の枠組みを検討・提言する首相直属の諮問会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)が8月4日、「日本の安保・防衛政策の基本方針の見直し」を要求する報告書を提出した。
戦後自民党による「議会制民主主義」を通したブルジョアジーの階級支配、そのあり方を支えた基本理念である「専守防衛」の立場を根本的に見直すことが報告書の中心テーマである。具体的政策としては、海外派兵恒久法の制定やPKO(国際平和協力活動)参加5原則の見直し、集団的自衛権の承認、武器輸出の解禁などの重大な軍事政策上のエスカレートが盛り込まれた。この報告をもとに、年末に「防衛計画の大綱」大改定作業が予定されている。
報告書は「軍事力の使用」を真っ向から打ち出した。戦前以来の、帝国主義的軍事外交政策の復権要求である。資本主義(帝国主義)という「国際システム」を維持し、資源・エネルギーなどの帝国主義的権益を確保するために、日本が世界的規模で「能動的に関与する」という意思表示だ。
文中には「平和を守るためには軍事力を用いなければならない」「目標達成のために軍事力が適切に使われる仕組みを築く」など、軍事力の行使を明文で否定した戦後憲法的枠組みを根底から覆す表現がむきだしで、「これまでの防衛政策から一歩踏み出す」ということが明記されている。
そして「専守防衛」「軍事大国にならない」「文民統制の確保」「非核三原則」などを柱とする「国防の基本方針」(1957年作成)それ自体の変更を要求し、この観点から、「世界支配力が相対的に低下したアメリカとの、日米同盟政策の強化」を001あらためて位置付けたのである。「対テロ戦争」で米帝が担ってきた国際帝国主義システムの「安全」を「日本が補完する」とも言い切った。
重要な点は、これらの軍事外交政策の大転換が、日本帝国主義の中心実体をなす大ブルジョアジーそのものの中から噴き出していることである。同諮問会議は小泉政権時代に設置され、麻生政権で2度目の設置となったが、これを仕切ってきたのは日帝の核政策の実体である東京電力や基幹産業の中心であるトヨタ自動車資本なのだ。「専守防衛」の転換を要求しているのは、非道な“派遣切り”などで労働者階級を苦しめている張本人たちなのだ。
米帝の歴史的没落の中で、新自由主義攻撃の大破産として爆発した今日の世界大恐慌は、保護主義を激化させ、市場や資源、勢力圏をめぐる帝国主義間・大国間の争奪戦を極限化させている。「資本主義の基礎のうえでは、生産力や植民地および金融資本の『勢力範囲』の不均衡を除去するのに、戦争以外にどのような手段がありうるだろうか?」(レーニン『帝国主義論』)という問題が、完全に現実となっているのだ。
自民党支配の崩壊は、こうした戦争への流れをさらに促進している。今回の懇談会報告の内容は、自民党の総選挙マニフェストの中身としても貫かれている。労働者人民の階級的反撃で自民党をたたきつぶし、改憲・戦争への道を粉砕しよう。