2009年7月 6日

〈焦点〉 米帝のイラク敗北を象徴 都市部「撤退完了」の実態

週刊『前進』08頁(2398号7面2)(2009/07/06)

〈焦点〉 米帝のイラク敗北を象徴
 都市部「撤退完了」の実態

 イラクを占領している米軍が6月28日、「都市部からの撤退を完了させた」と一斉に報じられた。
 イラク駐留米軍の総数は現在13万1000人にのぼる。うち戦闘部隊は約9万人で、米大統領オバマは「2年半後のイラク完全撤退をめざす」としている。03年3月以来のイラク戦争の6年間は帝国主義メディアによる報道管制の6年間でもあった。「撤退」の実態は何か? 都市部を撤退した米軍の大部隊は、郊外に途方もない巨額を投じて(イラク人民の資産からの略奪)建設した滑走路付きの「堅固な戦略的中枢基地(4カ所)」に逃げ込んだのだ。これが「撤退」の実態だ。
 撤退期限の30日が迫るにつれて、首都バグダッドのみならず全国の主要都市で大規模な反米ゲリラ戦が拡大している。とりわけ5月以降それが激化し、6月だけとっても死者は200人を大きく超えている。6月20日に70人以上の死者を出した北部油田地帯のキルクークでも30日、少なくとも32人が死亡するゲリラ戦が爆発した。米軍の「撤退計画」自体が危機に転化し、破綻しているのだ。
 イラクの石油資源に群がる帝国主義の石油資本を守るために、米軍が6年間総力で育成した「イラク治安部隊」なるものの崩壊的現実も、「撤退」の迫ったこの数日間に決定的事実として全イラク人民に認識された。
 最新のハイテク兵器で武装した「世界最強」を自認する米侵略軍が、イラク労働者人民の6年にわたる抵抗闘争の前に敗北した。これが事態の核心である。開戦以来の米軍兵士の死者数は4000人を突破した。とりわけイラク側の死者は欧米メディアの集計でも10万人を突破、現地住民や良心的機関の集計では100万人を超えている。文字どおり現代のジェノサイド(大量虐殺)だ。それでも米軍はイラク人民の抵抗闘争に勝てなかったのだ。石油資源略奪のための一世紀を超える帝国主義の中東侵略政策は、その決定的崩壊への過程に突入したのである。
 しかし米帝オバマはイラクを含む中東支配を放棄することは絶対できない。中東石油資源をめぐる帝国主義間および大国間の争奪戦は、大恐慌下での保護主義とブロック化の進展によって極限化しつつある。「海賊対策」と称し、ソマリア沖に米帝を先頭に数十カ国の軍艦がしのぎを削って集結している現実を見よ。日帝・麻生政権が法律ができる前から自衛艦を派兵した動機もここにある。
 米帝にとっては、中東支配の崩壊はドル体制を含む世界支配の文字どおりの崩壊だ。それゆえオバマ政権は、イラク戦争の無残な敗退にもかかわらず、さらにアフガニスタンへの「対テロ戦争」という名の帝国主義的侵略戦争に戦線を絶望的に拡大せざるを得ないのである。オバマが、北朝鮮やイランの核開発施設に対する先制核攻撃を含む侵略戦争計画を作成している事実も重大である。
 8・6広島—8・9長崎反戦反核闘争から11月労働者集会への闘いは、こうした大恐慌下での世界戦争政策にのめり込む米帝オバマ、日帝・麻生政権を打倒する労働者人民の総力決戦である。職場生産点と街頭からの広範な組織戦に突入し、断固進撃しよう!