2009年6月29日

〈焦点〉 未完のイラン労働者革命へ

週刊『前進』06頁(2397号5面3)(2009/06/29)

〈焦点〉 イスラム体制崩壊の始まり
 未完のイラン労働者革命へ

 6月13日の大統領選を契機として、イランのイスラム体制に対する労働者人民の積年の怒りが噴出している。選挙結果が発表された直後から、労働者人民は「不正選挙」を弾劾して街頭に進出し、治安部隊と激突した。15日には、政府のデモ禁止命令や、ムサビ元首相らのいわゆる「改革派」指導部のデモ中止や平和的デモの呼びかけにもかかわらず、反政府実力闘争は全国に波及し、50万人以上が現体制弾劾の行動に決起した。
 それは79年のイラン2月革命以降最大の反政府闘争として、現政権を決定的窮地に追い込むものとなり、明確に現体制打倒の性格を持つ闘いとして発展し始めた。
 これに対しイラン現政権は、革命防衛隊やバシジという民兵組織を動員して弾圧体制をとり、15日にデモ隊の7人を射殺、20日には13人を射殺する事態となった。また「改革派」といわれる勢力など2000人以上が逮捕された。だがイランの内乱的激突はさらに発展している。これはイスラム支配体制の崩壊の始まりだ。
●イスラム体制下の支配の現実
 現在のイラン情勢の核心は、報道されているような、大統領選の不正をめぐる現体制と「改革派」の対立などにあるのではない。
 今日のイラン・イスラム体制は、都市労働者を主体とした全人民的規模の武装蜂起でパーレビ国王の独裁体制を打倒した79年2月のイラン革命の成果を簒奪(さんだつ)し、保守的なイスラム主義による「法学者の統治」で労働者人民を支配・抑圧してきた反動的体制である。それは、2月革命後に形成された労働組合のナショナルセンターである労働評議会や、当時のフェダイーン・ハルク(イラン人民義勇戦士)やムジャヒディーン・ハルク(イラン人民聖戦士)など、革命を牽引(けんいん)した左派武装組織を反革命的内戦によって暴力的に解体した、イスラム法学者とその支配を軍事的に支えた革命防衛隊やバシジによる特殊な支配体制であった。
 この体制のもとでは、伝統的な宗教勢力やバザール商人などの民族ブルジョアジーの利権が重視され、労働者階級人民の利害は完全に無視されてきた。石油産業や各種基幹産業を始めとする国営産業も、これらの支配階級と革命防衛隊や軍などの利権の手段とされてきた。労働者の利益を代弁する労働組合・労働運動も、徹底的に弾圧され、解体された。労働組合の解体、団結権や交渉権の否定、「イスラム労働評議会」という官製の御用組合による全一支配のもとに、労働者の権利要求の闘いは封じ込められてきたのである。
 さらに女性や少数民族も、イラン・イスラム体制を護持するために徹底的に抑圧され、さまざまな権利を奪われてきた。
●体制の危機と対米強硬政策
 このような本質的に反動的体制への労働者階級人民の怒りが蓄積される中で、支配階級は、国内矛盾を対外的緊張激化によってのりきるために、より一層の対米強硬路線をとってきた。これに対してもともとイラン革命の転覆を狙ってきた米帝は、石油権益の取り返しをもかけて、イランへの経済制裁や戦争的重圧を強めてきた。それは今日、対米強硬政策を一段と強化するアフマディネジャド政権下のイランに対する侵略戦争政策としてエスカレートしている。
 イランの労働者人民の生活は、この米帝の経済制裁や戦争重圧によってさらに厳しいものになっている。労働者人民の闘いを弾圧し、ムサビ元首相ら「改革派」という名のあくまでも「法学者の統治」に固執する本質的には守旧派の動きを押さえ込むための現政権の対米強硬政策と、米帝やイスラエルによる侵略戦争政策の両方に対し、イラン労働者人民の怒りはもはや極限に達しているのだ。
●労働者階級の闘いに未来が
 今日のイランの労働者人民、学生の決起の背後には、こうした現実への激しい怒りがある。彼らは今、再び79年2月のような労働者人民の蜂起と革命を実現して、現体制を打倒しなければ、もはや生きていけないと感じている。
 だからこそ彼らは、すでに1999年以降のハタミ大統領の時代に破産したにもかかわらず、今日再びムサビを代表とする「改革派」勢力として登場している、イスラム体制内の本質的に守旧派的な運動に依拠するのではなく、自らの力によって自分たちを解放する闘いに決起し始めたのだ。そして何よりもこの闘いの主軸を担う存在こそは、労働者階級である。
 79年2月革命によってパーレビ王政を実力で打倒し、労働評議会を形成した伝統をもつイランの労働者階級は、全人民の怒りを結集してイラン・イスラム体制を打倒しようとしている。また同時に、イラン現政府の反体制デモ弾圧などを非難しつつイラン侵略戦争の動きを強める米帝とオバマの策動を根底から粉砕するためには、自らの力で権力を奪取し、未完のイラン革命を最後まで貫徹しなければならないと決意している。
 いわゆる「改革派」がイスラム体制内のより守旧派的勢力でしかないことを見抜いた労働者たちは、今日、石油、自動車、炭鉱、繊維、交通などの国営企業の民営化攻撃や労働運動解体攻撃と激しく激突して闘っている。労働運動指導部の相次ぐ逮捕、投獄、拷問、処刑、亡命にもかかわらず、イランの労働運動は新たな歴史的な発展段階に入った。
 まだ労働者階級の前衛党は未形成だが、イランの労働者はイスラム体制との今日の激闘の中で、必ずや自らの前衛党を創成し、勝利に向かって進撃するであろう。