2009年6月22日

A案衆院可決 臓器移植法改悪許すな

週刊『前進』06頁(2396号6面3)(2009/06/22)

A案衆院可決 労働者=人間の生命を奪う 臓器移植法改悪許すな

 衆議院本会議は6月18日、議員立法として提出されていた「脳死」と判定された人からの臓器移植を拡大する4法案(ABCD案)の採決に入り、実質、15歳未満禁止の年齢制限をはずすA案を可決した。断じて許すことができない。
 投票に当たって各政党は党議拘束をはずしながら、小児移植への拡大を追求する一点で挙国一致を図った。臓器移植法そのものに反対する議員は一人もいなかった。共産党は唯一党議拘束をかけたものの「棄権」という形で反対を放棄し、小児移植推進論をふりまき、賛意を表明したのだ。
 法案が付託された厚生労働委員会での採決も省略され、たった8時間の審議で一挙に衆院可決まで行われた。徹底的に弾劾する。
 第一に、採択されたA案は、臓器摘出を「本人の意思表示のある時」に限っていた現行法を改悪、「拒否の意思表示を残していない限り臓器摘出に同意したとみなす」という案だ。あまりにも暴力的なただただ臓器強奪を居直る法案である。しかもA案は「本人同意」という要件そのものを取り払うことで、民法の遺言可能年齢に基づいていた「臓器摘出15歳未満禁止」の制限も連動して解除したのである。
 法案が成立すれば、小児はもとより労働者人民は、たとえば交通事故、労災、脳機能の病気や障害の時には、まず「死を確認したいがための検査」である「脳死判定」に無条件に追いやられる。重症患者に激しい負担をわざわざかけてである。拒否者以外あらかじめ患者は臓器提供を承諾したと見なされるから、家族の承諾だけで救命治療の打ち切りや保険診療打ち切りがますます誘導される。その上に移植用臓器提供の格好の資源と見なされ、知らない間に臓器保存処置すら開始されることも起こりうる。
 小児の場合には虐待時の損傷すら不問に付される可能性が大いにある。親族への優先的臓器提供も認めた。このように「移植を待つ小児を救え」というキャンペーンは、「脳死」を「人の死」とする法制化がA案の中に最も露骨に進められているのである。
 第二に、しかし同時に、こうした暴挙こそ、大恐慌=革命情勢下で破綻した新自由主義にすがりつくしかない日帝の危機の表明だ。
 翼賛国会と支配階級は改悪案をめぐり意思統一できず、分裂しながらも、A案という最も露骨な反動法案を登場させた。麻生も民主党鳩山も新自由主義と闘い抜く労働者階級の反乱におびえ、A案に賛成できずじまいだった。他国での「臓器あさり」を批判されている日帝は、保護主義・排外主義を強め、結局は戦争・改憲、民営化・労組破壊の攻撃に出るしかない。
 そもそも「脳死」は「人の死」ではない。臓器移植法は撤廃するしかない。「人工透析を削れ」と叫びながら医療費削減・民営化・社会保障解体攻撃の中で進めた97年臓器移植法制定攻撃こそがいま破綻しているのだ。現場からの労働者の決起こそが臓器移植法撤廃の反乱を組織していくのだ。
 法大決戦と4大産別決戦の勝利の展望をかけ、労働運動の力で臓器移植法撤廃をかちとろう。