2009年6月15日

〈焦点〉 オバマのカイロ演説弾劾

週刊『前進』06頁(2395号5面5)(2009/06/15)

〈焦点〉 オバマのカイロ演説弾劾
 中東支配と戦争拡大狙う

 米大統領オバマが6月4日、カイロ大学で「世界のイスラム教徒と米国との新たな関係の始まりを求める」と演説した。イスラム教徒との「融和」を説きつつ、関係「改善」の「解決への唯一の道」はイスラエルとパレスチナの「2国家共存」だと強調した。マスコミは「ブッシュ前政権のイラク戦争で悪化したイスラム世界との関係改善へむけた動き」と評価し、日本共産党は「覇権主義をもうやめる宣言」(『赤旗』6・9付)と絶賛している。
 だが、カイロ演説は、米帝に対する中東人民の爆発する怒りを抑え込み、ブッシュが始めた中東侵略と再植民地化のための「対テロ戦争」継続をあらためて表明するものである。大恐慌下で崩壊するアメリカ帝国主義の世界支配の危機を新たな戦争政策で突破しようとするものでしかない。
 オバマは冒頭から「イスラムはアメリカの一部」などと米帝支配の強化を宣言している。
 その上で「米国は暴力的な過激主義と戦う」とアフガニスタン侵略戦争の激化・拡大を断言しているのだ。「過激主義」(米帝の侵略と闘う労働者人民のことだ!)を徹底的に壊滅するために、あえて「イスラムの偏見と戦うのは米大統領の責任」とイスラム教徒との「融和」をペテン的にうたっているに過ぎないのだ。
 また「2国家共存」政策とは、イスラエルの侵略を推し進め、崩壊する米帝の中東支配を立て直そうとするものだ。米帝の経済的軍事的援助に依存してきたイスラエルの存立が世界大恐慌下で危機に直面している。その突破をかけ、イスラエルは昨年末から年頭にかけガザ侵攻を強行した。オバマは一貫してこれを容認し、カイロ演説では「米国とイスラエルの強い結束は断てない」とあらためてイスラエルを擁護した。
 米帝は第2次大戦後、石油強奪と中東支配のために、パレスチナ人民の土地を奪ってイスラエルを「建国」した。その後も米帝とイスラエルは、パレスチナ人民を虐殺し侵略を拡大してきた。「2国家共存」とは、こうした侵略を容認せよということなのだ。断じて認められるものではない。
 しかし、この政策は、米帝が03年から掲げている「中東和平案(ロードマップ)」であり、パレスチナ人民の不屈の闘いによって何度も破産してきた。今回もオバマは何の具体策も示せない。最初から破綻が刻印されているのだ。
 オバマは就任して以来、「テロへの対応と中東和平」を軍事・外交戦略の柱としてきた。3月には「アフガニスタン・パキスタン包括戦略」を打ち出し、国際会議を相次いで開催、そして4月にプラハで核独占と「核拡散阻止」=侵略戦争の継続を宣言した。今回のカイロ演説はその延長だ。オバマはイランに「いかなる国の核兵器も認めない」と恫喝した。
 さらに重要なことは、中東訪問後、ドイツ、フランスに立ち寄り、北朝鮮の核開発について「北朝鮮に対し、過去とは違う厳しい対応をする」と確認したことだ。ペテン的「融和」で中東人民の怒りを抑え込む一方で、北朝鮮侵略戦争の発動を準備しているのだ。
 カイロ演説を許さず、戦争に突き進むオバマを打倒しよう!