2009年6月15日

〈焦点〉 臨検と経済封鎖狙う米日

週刊『前進』06頁(2395号5面4)(2009/06/15)

〈焦点〉 臨検と経済封鎖狙う米日
 「北朝鮮制裁決議」の正体

 北朝鮮スターリン主義の2度目の地下核実験(5月25日)に対して、国連安保理の5常任理事国(米・英・仏・中・ロ)と日韓両政府は6月10日、船舶の貨物検査強化や金融制裁の追加、武器禁輸の拡大などを盛り込んだ新たな「制裁決議案」で最終合意した。決議案は「前例のない強い措置」(聯合ニュース)となっている。
 今回の国連安保理決議問題の特徴は、核実験直後の段階で米日両政府が発表した決議草案が、軍事行動を含んだ措置を定める国連憲章7章42条などに基づき、船舶の貨物検査=臨険で「必要なあらゆる手段の行使を許可」とし、軍事的措置を公然と要求したことだ。
 米日帝は、北朝鮮が瀬戸際外交で「核カード」を使う段階から核兵器の保有そのものへ踏み込んだと断定した。それに基づき、この間6カ国協議での封じ込めを基本政策としてきた米帝自身が、今やオバマ政権のもと北朝鮮政策をよりハードに「転換」し始めたことを、国連決議問題は示している。
 この中で決議草案は、主に中国の要求で、非軍事的制裁を定めた「7章41条」に絞るか否か、船舶の貨物検査を全国連加盟国の「義務」と明記するかどうかが焦点になり、最終的に「7章の下に行動し、同章41条に基づく措置を取り……」との表現で最終合意、貨物検査の「義務化」表現は削り、公海上での貨物検査には旗国の同意が必要との内容で決着した。
 マスコミなどは「武力行使は回避された」かのように報道している。だが決議案は「公海上の貨物検査」で当該国が同意しない場合、「適当な港へ船舶を導く」権限も明記し、さらに禁輸対象物の押収権も付与した。禁輸対象物も「大量破壊兵器」関連だけではなく「すべての武器」に拡大され、その製造、維持、使用に関する金融取引、技術訓練、諮問、サービス、支援もすべて阻止するとなった。徹底的な兵糧攻めである。
 中国スターリン主義がこの内容で合意したことは、これまでの中朝関係を一変させかねない問題をはらむ。米日帝などの経済制裁により、北朝鮮は中国一国との貿易関係が全体の7割超を占めている。ここが閉ざされると北朝鮮の体制的危機は一線を越える。その意味でも今回の決議は、北朝鮮への最大級の戦争挑発行為なのだ。
 米日帝はすでに、現状で可能な限りの具体的実戦的な侵略戦争発動の準備に入った。特に日帝・麻生政権と自民党が、次期「防衛計画の大綱」に北朝鮮のミサイル基地などへの攻撃を想定した「敵基地攻撃能力の保有」を盛り込むと決定したことは実に重大だ(4面に関連記事)。具体的に、巡航ミサイルに加え弾道ミサイルの保有や、さらに「集団的自衛権の承認」「武器輸出3原則の解除」にも踏み出すと決定し、今国会に「平時」でも公海上での貨物検査を可能にする船舶検査活動法の改悪案を提出することも決めた。
 米日帝の北朝鮮侵略戦争は、同時に韓国の労働者階級人民への大攻撃である。さらには中国スターリン主義の体制転覆をも狙った侵略戦争へと発展する歴史的事態でもある。米日帝の北朝鮮侵略戦争の切迫を、日米韓を先頭とした全世界の労働者階級人民の怒りと国際連帯の闘いで粉砕しよう。