2009年6月 8日

〈焦点〉 GMが破綻し国有化 資本主義の「終わり」を象徴

週刊『前進』06頁(2394号5面3)(2009/06/08)

〈焦点〉 GMがついに破綻し国有化
 資本主義の「終わり」を象徴

 ●世界大恐慌とリストラを加速

 GMが6月1日に破産法の適用を申請して経営破綻し、国有化された。昨秋から米帝はビッグ3を救済するためにさまざまな手段を講じてきたが、GMとクライスラーの2社が破綻するという事態に至った。29年大恐慌とも比較にならないほどの歴史的できごとだ。まさに世界大恐慌の本格的な進展、米帝の没落の画期をなす。
 GMの資産は3月末時点で約823億㌦(約7・8兆円)、米製造業の破産としては過去最大である。負債総額は同1728億㌦(約16・4兆円)と、これも米製造業の倒産として過去最大だ。日本の今年3月期の全産業(金融を含む)の赤字が3・6兆円だから、度はずれた額だ。同社の事業を引き継ぐ新生GMに米・カナダ両政府が72%を出資するとしており、実質的に国有化される。
 世界大恐慌は、07年まで世界のトップだった巨大独占企業GMが破綻し、政府が救済するしかない段階に突入した。自動車は資本主義が生み出した最大の商品と言っていい。1920年代以降の米帝、そして第2次大戦後の全帝国主義が、自動車産業を基軸とし頂点にして延命してきた。資本主義は資本による賃労働の搾取によって成り立つ体制だが、その搾取がほかならぬ自動車の生産・販売を最大実体として行われてきた。その自動車産業が歴史的な崩壊を迎えたのだ。これが資本主義の終わりでなくて何であろうか。直ちに「労働者階級に権力をよこせ!」ということだ。
 GMは国内の11工場を閉鎖し、3工場を休止する。米国の従業員は08年末の6万人強から10年には4万人に削減され、関連の人件費も34%圧縮される。過剰設備の廃棄と大リストラに伴って、労働者に大規模な失業と賃下げが襲いかかろうとしている。「大量の生産諸力をむりやり破壊する」(『共産党宣言』)という恐慌そのものだ。「生産諸力は、もはやブルジョア的所有諸関係を発展させていくのに役立たなくなった」(同)のである。大恐慌をプロレタリア革命に転化する以外に、労働者は生きていくことができない。
 さらに、UAW(全米自動車労組)が管理する医療保険基金にGMは約200億㌦の債務を負っていたが、その5割強を株式で提供するという。GM株は紙くず同然になっており、事実上の債務免除だ。もともとGMが行っていた医療保険基金を労組に投げ出した上、その債務も踏み倒すというのだ。労働者の医療費や年金も賄えないような体制、これも資本主義の終わりの象徴である。このような屈服・裏切りに手を染めたUAWの体制内労働運動指導部を吹っ飛ばし、生きるためのランク&ファイル運動を発展させていくことこそが労働者の未来を切り開く。
 米帝オバマ政権は「60〜90日間で破産法手続きを終えて再建を目指す」としている。

 ●際限のない政府支援か消滅か

 だが再建など不可能である。住宅ローンを借り増しして自動車購入など消費を拡大するという従来のあり方が、住宅バブル崩壊によって吹っ飛んでしまったからだ。バブルと過剰消費が終わった今、過剰資本・過剰生産力状態から抜け出すことなどできない。しかも、GMとクライスラーの破綻は、ビッグ3が米市場を始め世界市場で日帝資本などとの競争に敗退した結果でもある(『国際労働運動』7月号「世界経済の焦点/自動車産業の歴史的な崩壊」参照)。それを政府支援で巻き返すことなどできない。
 再建できなければ、政府支援を繰り返して延命させるか、GM消滅かのどちらかしかない。GMへの米政府の支援額はすでに計500億㌦、自動車産業全体では1000億㌦に膨らんでいる。際限のない政府支援かGM消滅か、いずれにしろ米帝の没落を促進し、オバマ政権の危機に転化する。
 GM破綻を機に米経済は、いよいよ本格的な大恐慌に突っ込んでいく。自動車産業は総合組み立て産業であり、その崩壊の影響は甚大で広範なものとなる。
 しかも住宅バブルの崩壊が加速している。1〜3月の主要10都市の住宅価格は前年同期比19・1%も下がり、最大の下落率となった。1〜3月の住宅ローンの延滞率、差し押さえ率はともに過去最高を更新、両比率を合わせると13%弱に及んだ。また、大手銀行は不良資産・不良債権を粉飾会計でごまかしているが、遠からずその実態が露呈し、金融恐慌も再激化していく。さらに現在最も深刻なのは、銀行や自動車産業を救済するための国債増発により財政赤字が急増した結果、長期金利が上昇し、実体経済を押し下げる要因になっていることだ。米国債とドルの暴落が不可避となっている。

 ●保護主義と帝間争闘戦の激化

 米帝オバマ政権は今回、自動車産業の救済という形で一段の保護主義に踏み込んだ。基幹産業である自動車での保護主義は、他部門での保護主義にさらに火をつけていく。30年代の世界経済のブロック化の過程がそうだったように、保護主義は短期間で一気に進み、帝国主義間争闘戦を激烈化させる。しかも、今や自動車市場はとりわけ世界的な過剰資本状態にあり、生き残りをかけた市場再分割闘争がますます激しくなる。このような保護主義と争闘戦こそが世界戦争の危機を促進する。
 こうした中で日帝経済は、自動車を始め前例のない外需依存で延命してきた結果、GMの破綻で最も打撃を受けざるをえない。「最弱の環」である日帝を打倒する時がやってきているのである。