北朝鮮ロケット口実に有事法制の実戦発動 秋田からの報告
北朝鮮ロケット口実に有事法制の実戦発動 秋田からの報告
「国民保護計画」を先行実施
自治体労働者の戦争動員を狙う
麻生政権は、4月3日の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)スターリン主義によるの「人工衛星ロケット打ち上げ」に対して、「破壊措置命令」という歴史を画する軍事対応に走り、秋田を始め地方自治体で事実上有事法制が発動された。戦時ムードが扇動され、自治体労働者や教育労働者が動員された。社民党や日本共産党は沈黙して屈服し、連合中央は「北朝鮮によるミサイル発射に断固抗議する談話」を発表して政府の戦争政策に労働組合として積極的に協力する態度を表明した。今回の攻撃を検証し、4大産別決戦の戦闘的爆発に向かっての武器にしていきたい。
(投稿/秋田・GK)
破壊措置命令は戦争発動だ
麻生政権は、日本に危害を加えようとするものではない「人工衛星打ち上げ」に対して、「破壊措置命令」という軍事行動を強行した。それを中心に政府の決定した「対処方針」に地方自治体を従わせ、事実上の国民保護法の発動を強制した。
今回北朝鮮が打ち上げたロケットは、ミスで軌道がそれたり、打ち上げに失敗したりしても、日本に落下する危険はほとんどなかった。
このような対象に対し、イージス艦の展開だけでなく、PAC3を動員した破壊措置命令を発令したことは、政府として北朝鮮に宣戦布告の意思を示し、実行したことを意味する。これは改憲攻撃そのものであり、世界恐慌下の中で麻生政権が戦争による資本主義の延命を渇望していることを表明するものだった。
危機管理連絡部設置の意味
秋田県は北朝鮮が人工衛星打ち上げの事前通告を行った翌日、麻生政権が迎撃態勢をとると表明したことを受け、危機管理連絡部を設置した。これは形式上、危機管理計画に基づくものだが、秋田県国民保護計画ではその想定対象に「弾道ミサイル攻撃」が入っており、その対処方策として連絡体制から構築していくことが定められている。県の連絡室の設置自体が有事法制の発動であり、政府の有事対応に下から応えるものだ。
有事法制に従って作成された秋田県国民保護計画を見ると、「対処活動の全体像」として有事における自治体の対応策が八つの分野で図解されている。政府の「破壊措置命令」と「対処方針」の決定によって、最初の「事態認定」が行われ、前倒しで「実施体制の確立」として「危機管理連絡部」および「対策本部」などの設置が行われ、「初動情報の処理」として打ち上げ速報が伝達され、「避難・待避」活動や「被災情報の収集」「安否情報の収集」が行われた。
そして、秋田県の「素早い」対応は、市町村に対して一種の模範として、有事における緊急体制の構築を促した。
有事法制・国民保護法の発動の最初の行為は、「警報の通知、伝達」である。しかし、警報の伝達システムは、政府の方針が一貫していなかったこともあって複数の系統があり、全国的統一的に整備されていなかった。軍事問題に関して簡単には導入を強制できない地方自治の壁があるからだ。
今回の事態で、政府は国民保護法のために作ったエムネット(Em—Net)を急速に普及させ、実戦に使用することに成功した。これはインターネットを利用し政府からの情報を県を仲介しないで直接市町村に伝達するシステムだ。これまで秋田県でエムネットを導入していたのは、県と秋田市だけだった。
しかし政府が破壊措置命令と併せてエムネットによる緊急情報の伝達を決めたことを受け、秋田県も旧来の伝達方針を転換し、4月2日までに県内の全市町村がエムネットを導入した。これによって戦後初めて政府は地方自治の壁を破って全国の市町村に瞬時に「警報」を発令する体制を整備し、これを実戦的に発動したのだ。
地方自治体を自衛隊が支配
もう一つは、有事体制の発動によって自治体と自衛隊の一体か化が進められたことだ。秋田県が危機管理連絡部を設置して以来、自衛隊の連絡官が県庁に常駐し、県の対処方針の決定に深くかかわっていた模様だ。地方自治体を自衛隊が直接支配する構造が生まれたことが重大だ。
しかも大仙市は、今年度から新設した総合防災室の初代防災管理官として陸自秋田駐屯地の自衛官を採用していた。自衛隊と自治体の一体化は、戦争に反対する公務員労働運動への破壊攻撃だ。
ほとんどの自治体が、政府がエムネットで流した情報を、様々な手段で住民に「通知・伝達」する仕事を行ったことは、有事法制に規定された「警報の通知」の一環であり、公務員労働者の戦争動員そのものだった。
県内市町村の多くは、打ち上げ予定日前に県の「対策連絡部」に対応する組織を作り、連絡体制の整備や対処方針の作成などを行い、打ち上げ予定日は休日返上で対応に追われた。
秋田県の国民保護計画の「市町村の警報伝達の基準」で、伝達方法の一つとされる「武力攻撃が迫り、または現に武力攻撃が発生したと認められる地域に当該市町村が含まれる場合」「原則として同報系防災行政無線で国が定めたサイレンを最大音量で吹き鳴らして住民に注意を喚起した後、……警報が発令された事実等を周知するものとする」という項目をそのままむき出しで実行して注目を集めたのが八峰町だ。同町は防災行政無線を使用してサイレンを鳴らした。事前に2度の試験放送、2度の誤報も流し、本番の速報もすべて流した。そのたびに町全体から警報のサイレンが鳴り響いた。「こんな思いはもうごめんだ」という怒りの声が起こった。
予定日に先立って、横手市や由利本荘市は「日中は外出を避けるように」「落下物や被害を発見した場合は連絡してください」などのチラシを全戸に配った。打ち上げ予告の最初の2日間は土日だったが、ほぼすべての市町村は休日返上で担当者が役場に詰め、速報や訂正を住民に伝えた。
県の発表で一切伝達を行わなかった自治体もあったが、結局19市町村が国民保護法で規定したなんらかの伝達を行った。
ミサイル騒ぎを口実に、政府はかつてない規模で自治体労働者に国民保護法の実戦演習を行わせた。かつて戦時において公務員は官吏として、労働者人民を戦争に動員する手先にされた。今回の伝達はまさにその再来だ。戦争動員をとおした思想攻撃、労組破壊攻撃だ。絶対に許せない。
「避難訓練」で学校を戦場に
国民保護計画の重要な行動の中に「避難」が規定されている。秋田県国民保護計画には具体的な想定の中に「弾道ミサイルによる攻撃の場合」が明記されており、今回その模範として各地の学校で避難行動が行われた。
3月31日、県教委は全学校にメールで連絡体制の整備を指示した。状況によっては北朝鮮の発射する「飛翔体」が落下してくることがあり得るとして「被害が及ぶと考えられる場合は屋外行事の中止や階下への避難など必要な措置を講じること」などと通知した。実際に、入学式の準備をしていた生徒や教職員がテレビの誤報で体育館に避難したり、部活をやっていた生徒が部室や体育館に避難したりというケースがあった。「ほんとにミサイルが落ちてくるんじゃないかと思って怖かった」という6年生の声が報じられている。まさに戦時中の空襲警報から防空壕(ごう)へという世界だ。かつて子どもたちを戦場に送るのが教師の役割だった。その再来のような光景だ。
今回有事法制で強制的に戦争動員の義務を負わされているマスコミ各社や東北電力などの指定公共機関でもこれと関連した動員が行われた。
県の危機管理対策本部は、国からの発射速報の伝達の後、直ちに安否確認の作業を行った。これも国民保護法に規定されたシナリオどおりだ。そしてこれを確認した段階で、対策本部を連絡部に戻した。
最大の戦場は4大産別決戦
この攻撃は、戦争と改憲の攻撃であり、4大産別(国鉄・郵政・教労・自治体)労働運動破壊の攻撃だ。有事体制の発動は、明らかに自治労や日教組の破壊を狙った攻撃だ。4大産別決戦・道州制決戦で、戦争と改憲、民営化・労組破壊の攻撃を粉砕しよう。