オバマ演説を「核兵器廃絶」と絶賛する日共・志位 上川 久
原水禁運動-反核闘争の解体許すな
米帝の核独占と侵略戦争を狙う オバマ演説を「核兵器廃絶」宣言と絶賛する日共・志位
上川 久
日本共産党の志位和夫委員長が米帝オバマの4・5プラハ演説を「核廃絶宣言」として美化し、「心から歓迎する」「歴史的な意義がある」と絶賛する書簡をオバマに出した。米政府から返書が来たと大騒ぎだ。だが実際には、オバマはプラハ演説で、最大の核保有国・米帝の核独占体制を維持し、核拡散防止の名で侵略戦争を激化・拡大し、世界戦争に向かうことを宣言したのだ。「核廃絶」を唱えたのは、原水禁運動や反戦・反核闘争を幻惑し、解体するためだ。日共をはじめ体制内勢力はこれに乗っかり、反戦・反核闘争をオバマ賛美運動へとねじ曲げ解体しようとしている。世界大恐慌下、自らの延命のために帝国主義への屈服・恭順を誓い、階級的労働運動に敵対してくる。日共—体制内勢力を打破
し、帝国主義打倒へ、6・14—15大闘争、8・6広島—8・9長崎反戦反核闘争に総決起しよう。
“核廃絶のイニシアチブを”と戦争の元凶オバマに要請
日共・志位は、オバマ演説を①「核兵器のない世界」——核兵器廃絶を国家目標とすると初めて明かした②広島・長崎での核兵器使用が人類的道義にかかわる問題であることを表明した③「核兵器のない世界」へむけて諸国民に協力を呼びかけた——という3点にまとめ、「歴史的な意義を持つ」「心から歓迎する」と繰り返し賛美している。
その上で、オバマが「核兵器のない世界」の実現は「おそらく私が生きているうちには無理だろう」と直ちにあけすけに語っていることには(ここにオバマ演説の核心がある)、さすがに志位も「同意するわけにはいかない」と書簡に書いたと弁明している。しかし志位はこんなことには構わず、オバマ演説をあくまで支持し、進言する。
「何よりも重要なことは、核兵器廃絶を正面の課題にした交渉をよびかけ、交渉を開始すること」「大統領に核兵器廃絶のための国際条約の締結をめざして、国際交渉を開始するイニシアチブを発揮することを、強く要請する」
オバマのイニシアチブによる国際交渉で核廃絶が可能になるというわけだ。その国際交渉として、戦略核兵器削減条約(START)の交渉開始や包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准、兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の締結、核不拡散条約(NPT)の見直しなどを挙げる。これらを核兵器廃絶の目標と一体の具体的措置として取り組むべきだと進言する。
こうした条約にもかかわらず、2万発もの核兵器が存在する現実は、これらの具体的措置が核兵器廃絶の目標と一体的に行われず、部分的だったためだと説明する。だから逆に一体的に進めればよいというのだ。志位は「具体的措置」が帝国主義の核独占体制を保障する手段であるという現実を百%逆に描いている。
つまり志位は、米帝オバマがかつて核を使ったことに「道義的責任」を抱き、「核廃絶」を国家目標に据えて、STARTやCTBT、カットオフ条約、NPTなどの諸措置を国際交渉で推進すれば、核廃絶に至ると主張しているのである。米帝オバマのイニシアチブで核廃絶ができるというのだ。なんとおめでたいことか。
志位は特にNPTについて、米帝をはじめとする5大核保有国(米ロ中仏英)が「核兵器廃絶への真剣な努力を行うと約束した」と賛美している。だが、NPTなどの諸措置が5大国(とイスラエル)以外に核を保有する国や「テロリスト」が出現することを阻止することを目的にしていることは、公然たる事実である。にもかかわらず志位は、あえて帝国主義者の言葉を字義どおりに解釈し、5大国の核保有の論理を擁護しているのである。それは今、日本共産党が北朝鮮の核保有の動きを非難する排外主義キャンペーンに加わり、日米帝にくみしていることにも現れている。
オバマは、最末期のアメリカ帝国主義ブルジョアジーの代表であり、大銀行・大企業に巨額の税金を投入し、労働者を大量解雇して救済・延命させている張本人だ。そのオバマにエールを送ることは、アメリカをはじめ全世界の労働者階級への敵対にほかならない。
オバマ演説は、志位の主張するような素晴らしい演説だろうか。帝国主義諸国とりわけ米帝に核廃絶をめざして諸条約を結び履行する意思があるのか。断じてそんなことはない。
オバマはプラハ演説でなんと言っているのか(全文の訳は『国際労働運動7月号』に掲載)。
「核拡散阻止」を叫びイラン・北朝鮮への侵略戦争を策動
オバマのプラハ演説は第一に、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の直後に行われ、冒頭で、チェコ共和国が武力攻撃を受けた場合に米帝が同盟国として反撃することを約束している。世界支配のための軍事力発動の決意表明だ。まず戦争ありきなのだ。
第二に、その上で核問題に入り、「核攻撃の危険性は高まっている」「核兵器を保有する国が増えている」と危機を訴え、「核兵器を使用したことのある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と述べている。つまり自らの核保有国としての地位を保ちつつ、他国と「テロリスト」の核保有と核使用、すなわち核拡散を抑えるために行動することを「道義的責任」だと言っているのだ。けっして自らの核兵器を廃棄するとは言っていないし、核攻撃をしないとも言っていない。
したがって第三に、「私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念をもって明言する」と言った直後に「この目標は、私の生きているうちには達成されないでしょう」とただし書きを付け加えたのである。このただし書きに真実がある。オバマは核廃絶の彼岸化と核独占を宣言したのだ。「核兵器のない世界」とは、米帝が核を独占し、5大国以外に拡散していない状態を指しているのだ。
「核のない世界」に言及した米大統領はケネディやカーターらたくさんいる。しかし彼らは米ソの勢力均衡を理由に実際上、核軍拡を進めた。レーガンさえも1984年に議会で「私たちの夢は核兵器が地上からなくなる日がくることだ」と語った。ソ連の大陸間弾道ミサイルを無力化する「戦略防衛構想」(スターウォーズ)を推進するためだった。米帝の言う「核のない平和な世界」の正体は明らかだ。
レーガン演説とオバマ演説とはどこにも違いはない。オバマはむしろ「道義的責任」を米帝の独占体制構築の固い決意として語っているのだ。
第三に、オバマは具体的な措置をとるとして、「国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小する」「核兵器が存在する限り、わが国は、いかなる敵であろうとこれに対する核抑止を行い、……確実かつ効果的な核備蓄を維持する」と述べている。「米国の安全保障(=防衛)」のために「確実(=ターゲットを確実に破壊する)かつ効果的な(=破壊効果が高い)核備蓄を維持する」という。核戦力を高度化し、核を備蓄し、核を行使するということだ。
その上で第四に、「しかし、私たちは、自国の核兵器の保有量を削減する努力を始める」と言っている。「削減する努力」であって、「廃棄」や「なくす努力」ではない。その具体的措置として米ロの新たな戦略兵器削減条約交渉の開始、米国による包括的核実験禁止条約の批准、核分裂性物質生産禁止条約の締結、核不拡散条約の強化を挙げている。いずれも米帝をはじめとする5大国の核保有・核独占体制を前提にした条約だ。
ただ、5大国その他が核を保有している限り、自らも核を持とうとする国、人びとが現れるのは不可避だ。現にイスラエルやインド、パキスタンは核保有を容認され、北朝鮮、イラン、日本は核開発を進めている。
そこで第五に、米帝の核独占を維持し核拡散を阻止する決意を表明している。北朝鮮やイランを始め日本やその他の国、「テロリスト」の核開発・核保有・核使用を阻止する行動に出る決意を示しているのだ。侵略戦争の発動の宣言であり、帝国主義争闘戦がらみの恫喝である。特に、北朝鮮の「挑発行為は行動をとることの必要性を浮き彫りにしている」とし、「核拡散阻止」行動に出ると明言している。「規則違反は罰せられなければならない」——制裁と戦争だ。「イランの脅威」を理由にチェコ、ポーランドに「ミサイル防衛(MD)システムの導入を続ける」「イランへの関与を追求する」と約束している。国家に加え「テロリスト」「規則を破る人びと」の核爆弾購入・製造・使用、すなわち核拡散を封じ込めると宣言した。「テロリスト」の核保有を阻止する目的を含んで発動されたイラク—アフガニスタン侵略戦争を継続・拡大するという意味だ。
オバマ賛美の大合唱粉砕し6・14-15から8・6-8・9へ
以上のようにオバマ演説は徹頭徹尾、米帝の「核独占」宣言であり、核戦争を含む侵略戦争の激化・拡大、世界戦争の発動の決意表明だ。これを「核廃絶」をめざすものとして美化・礼賛することは反戦・反核闘争への解体・破壊・襲撃宣言にほかならない。オバマを絶賛する志位書簡の犯罪性は次の諸点にある。
第一に、現に今、圧倒的な核優位と核独占を背景に侵略戦争を継続・激化させ、人民を虐殺している米帝オバマを完全に免罪している。そして一層の核軍拡と先制攻撃—世界戦争へ突き進む米帝を尻押ししている。日共は米帝の核独占と戦争を支持する側に立った。
第二に、オバマを救世主のように押し出し、オバマ幻想にすがる運動を提起している。労働者人民の反戦・反核闘争、帝国主義打倒の闘いを解体し、敗北に導こうとしているのだ。
第三に、米帝の核独占と「対テロ戦争」に伴うあらゆる反動政策を事実上擁護している。オバマは大統領就任直後、キューバのグアンタナモ米軍基地にある対テロ戦収容所の閉鎖命令を出したが実施していない。逆に「テロリスト」の予防拘禁、特別軍事法廷の再開、水責めなどの拷問を容認した。愛国者法もそのままだ。こんなオバマに核廃絶を期待することなど絶対にできない。
今やあらゆる意味で日本共産党スターリン主義の反革命的本性は明らかだ。1930年代を超える世界大恐慌の爆発、資本主義の終わりの時代、世界革命情勢の到来のなかで、階級闘争、労働運動を帝国主義への屈服・翼賛運動にねじ曲げ絞殺しようとしている。30年代階級闘争の敗北を教訓化した革共同と労働者階級はスターリン主義反革命を許さない。反戦・反核闘争、階級的労働運動を強大に国際的につくり出し、民主党—連合—原水禁・核禁会議の帝国主義労働運動勢力と日本共産党—全労連—原水協のスターリン主義勢力をもろとも打倒し、日本プロレタリア革命—世界革命への大道を切り開こう。その突破口は6・14—15連続大闘争だ。