2009年6月 1日

新自由主義30年の全矛盾が爆発 大恐慌と戦争に6・14-15大デモで反撃を 片瀬 涼

週刊『前進』08頁(2393号4面1)(2009/06/01)

新自由主義30年の全矛盾が爆発
 大恐慌と戦争に6・14-15大デモで反撃を
 片瀬 涼

 大恐慌の進展と資本主義の終焉

 21世紀の資本主義は、労働者の生活を破壊し、世界を徹底的に荒廃させ、極限的に膨張した挙げ句の果てに体制としての限界を完全に超えて大恐慌として大崩壊を開始した。資本主義のもとで社会の発展はもはやない。大恐慌は新自由主義の総破産であり、積もりに積もった恐るべき負のエネルギーの爆発だ。だがオバマや麻生には〈戦争・改憲、民営化・規制緩和、労組破壊〉の新自由主義攻撃しかない。労働者の生きる道は、新自由主義と徹底的に対決して、世界大恐慌をプロレタリア世界革命に転じることだ。

 ドル暴落−大破局はこれからだ

 内閣府が5月20日に発表した09年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報によると、日本の実質GDPは年率換算でマイナス15・2%。08年10〜12月期も14・4%減で6カ月連続で戦後最悪のマイナス成長となった。
 1〜3月期のGDPの規模は年換算で516兆円。1年前の567兆円から1割減少している。マイナス15%が4年続けばGDPは半分になる。1929年の世界大恐慌で米国のGDPは4年連続で減少し、実質GDPは3割縮小した。これに匹敵するペースで日本経済は縮小しているのだ。
 企業の09年3月期決算では、電機大手9社の純損益の合計額は2兆2200億円の赤字。過去最高の黒字が相次いだ前年から一転して大幅赤字となった。赤字額はITバブルが崩壊した02年3月期の1兆9千億円を超える。日立製作所の純損失7873億円は製造業としては戦後最大だ。
 ソニーは2278億円の赤字で来年も1100億円の赤字の見通しだ。昨年秋からの業績悪化を乗り切るために1万6千人以上の人員削減に踏み切り国内外3工場の閉鎖を進めている。さらに追加のリストラ策として今年末までに岩手、千葉、静岡、メキシコ、インドネシアの5工場を閉鎖する。
 自動車大手10社の3月期決算の合計は3200億円の赤字。計4兆7千億円の黒字だった08年度3月期から一転した。来年3月期はさらに悪化、1兆円の赤字になる見通しだ。
 トヨタ自動車は、08年に過去最高の2兆2703億円の営業黒字をたたき出したが09年は急転直下の4610億円の赤字となった。トヨタの世界生産台数は半減し、1〜3月期の純損失は7658億円。経営難の米ゼネラル・モーターズ(GM)を上回る赤字だ。来年の予想は8500億円の営業赤字で2期連続の赤字になる見通しだ。国内企業では過去最悪となる。

 10年で資産3倍に

 今回の世界大恐慌は一時的・循環的な景気変動ではない。資本主義の誕生以来最大の危機の時代に突入したことは間違いない。29年世界大恐慌をはるかに超える歴史的大恐慌であり、資本主義の最後を告げる大恐慌だ。直接的には三十数年に及ぶ新自由主義の展開がため込んだ途方もない負のエネルギーが大爆発している。
 実際には資本主義の戦後発展は、74〜75年恐慌で完全に行き詰まっていたのだ。米日欧の製造業は過剰資本・過剰生産力状態のもとで利潤率が鈍化する状況が30年以上続いている。このとてつもない危機をのりきるために70年代半ばに登場したのが新自由主義だ。レーガン、サッチャー、中曽根は資本主義の最後の延命策として〈戦争・改憲、民営化・規制緩和、労組破壊〉の新自由主義攻撃に突進したのだ。
 それは一方で社会保障制度を徹底的に解体し、民営化と労働組合の弱体化で労働分配率を下げる攻撃だった。労働者からの極限的搾取と収奪で資本の利潤を増やそうとした。他方で、実体経済から離れた金融とバブル経済を極限まで拡大し、金融市場で利潤と資産を増大させる政策にのめり込んだ。
 同時に、レーガンは世界を核戦争の恐怖にたたき込む大軍拡を展開して91年にはソ連スターリン主義を崩壊させた。東欧や中国を世界市場に取り込むことにより全世界の労働者を超低賃金で搾取する構造がつくられた。
 米帝は、80年代半ばから金融自由化を徹底し、金融IT化、金融工学化、金融証券化を強力に推進。膨大な貿易赤字・経常赤字を膨張させつつ、世界中から資金を集め、カネがカネを生む構造をつくり出し、異様なITバブルや不動産バブルと過剰消費を継続する仕組みをつくり上げたのだ。
 95年に約64兆㌦だった世界の金融資産は、ピークの07年には187兆㌦に達した。資本主義世界は、最後のわずか10年余で資産が3倍になるけた違いの膨張をしたのだ。ある意味で創成以来400年の資本主義の「頂上」とも言える拡大を実現した。だが資本主義の歴史的生命力は完全に燃え尽きた。限界を超えた資本主義は、大恐慌として雪崩を打って崩壊を始めたのだ。

 本当の危機は何か

 世界金融大恐慌の引き金となったサブプライムローンと証券化商品の大破産がもたらす本当の危機は何か? 株価や為替の騰落で一喜一憂するレベルの話ではない。本当の破局はこれからやって来るのだ。米帝が世界中から巨額の投資マネーを集める最後のカラクリが完全にパンクしたのである。これは基軸通貨ドルの大暴落に必ず行き着く。
 米帝は、世界経済の基軸国でありながら類例のない巨額の経常赤字を垂れ流してきた。06年は87兆円、07年は76兆円。これだけ見れば米経済はとっくの昔に崩壊してもおかしくない。(経常赤字とは、貿易収支、旅行や輸送のサービス収支、外国投資の利子・配当など一国の経済取引の総計)
 ところが米帝は25年以上も経済崩壊しないで経常赤字を続けてきた。それどころか06年には、87兆円の赤字に対して166兆円という倍近い資金を集め、余剰分を再び海外に投資として出しているのだ。
 07年8月のパリバ・ショックを契機に世界金融大恐慌が現実化する以前の米帝は、世界中からマネーを吸い込み、また世界に吐き出すポンプのような存在だった。米帝の過剰消費(貿易赤字)を海外からの借金で埋め合わせ、その過剰消費が中国やインドなどからの輸出を支え、世界市場にマネーが再投資される構図だった。
 このメカニズムが完全に破綻したのである。米帝は90年代後半以降、バブルのリレーで世界から巨額の資金を集め続け、最後は、サブプライムローンと証券化商品で史上最大のバブルを生み出し、そして大破産したのだ。米帝への投資はいまや極限的に縮小している。これが米帝と世界の経済に与えるダメージは計り知れない。

 証券化商品の役割

 90年代後半にインターネット関連企業の株価が異常に上昇したITバブルは00年3月に崩壊し、さらに翌01年に起きた9・11反米ゲリラ戦争の衝撃で米帝への資金流入は低調になった。市場に資金を供給するために金利はどんどん下げられ、00年の6・5%から03年には1%に利下げされた。当時のインフレ率は約2%だから実質金利はマイナスだ。金融機関や企業は借りれば借りるほど得した。
 株価は低迷したが今度は不動産価格がぐんぐん上昇し始めた。持ち家比率がピークに達した03年、さらなる貸し手が必要になり、脚光を浴びたのがサブプライムローンだ。従来はほとんど住宅を購入できなかった貧困層にもローン貸付を広げて、住宅ブームと消費を一段と加熱させた。
 この時に米帝が世界中から投資マネーをかき集める手段として重要な役割を果たしたのが証券化商品だった。
 04〜06年の3年間で米経常赤字の2割強に匹敵する50兆円がサブプライムローン証券化商品の販売で世界中からが流れ込んだとも言われる。06年末には住宅ローンの残高は約1300兆円に上り、米国債市場をはるかに上回る規模になった。その6割が証券化され、世界中にばらまかれたのだ。
 住宅バブルに牽引された好況で企業の発行する社債にも巨額の資金が流入し、M&A(企業の合併・買収)や不動産の直接投資も激増した。
 証券化とは何か。債権と証券の違いは、債権が基本的に転売できない性格のものであるのに対して、証券はそれが可能である。多数の債権を合算し、その総額を担保に不特定多数に証券を発行する仕組みだ。この手法を使って30年の住宅ローン債権も証券化商品にして販売すれば、あっという間に現金に変わる。証券化を通じて金融機関の資金基盤とは無関係にいくらでも住宅ローンが提供できるのだ。
 こうして返済できる可能性の低い移民労働者などにどんどん住宅ローンを融資し、それを証券化して転売したのだ。驚異的な回転率でサブプライムローンと証券化商品は拡大した。世界的な超低金利とカネ余りの中、金融機関や投資ファンドは危険を承知で手を出したのだ。不動産などを証券化した市場での名目価値は、世界のGDPの10倍にまで達した。
 すべての前提は住宅価格が上がり続けることだった。

 金融バブルと投機の膨張と破裂

 このカラクリの中心に位置していたのがリーマン・ブラザーズやメリルリンチなどの投資銀行(証券会社)だ。
 米帝は80年代から対外債権(貸した金)より対外債務(借りた金)が多い純債務国になっている。だから通常なら外国との間の利子や配当などの所得収支はマイナスになる。ところが米帝はこの黒字を保ち続けているのだ。
 理由は収益の差だ。89〜06年の米帝側の外国投資の利回りは10・4%。外国側の米帝投資は6・1%。04〜06年に限れば15・1%と6・5%だ。ようは他国の資金を借りてきて、その運用で3倍近い収益を上げているのだ。
 米国の投資銀行は、自己資本に30〜40倍のレバレッジ(テコの作用)をかけて運用してきた。投資銀行が全盛期を迎える90年代後半から外国からの投資は急増し、約10年で3〜4倍に増えた。それに30〜40倍のレバレッジをかけた。大恐慌前、米帝の金融業界は実に10年前の百倍以上の資金を運用していたのだ。米帝の株や不動産価格が天井知らずで上昇するのは当然だ。
 これが最後にはサブプライム問題へ行き着いたのだ。
 住宅価格下落が表面化し始めた08年3月、米帝の投資銀行5位のベアー・スターンズがサブプライム問題で資金繰りが悪化、経営に行き詰まった。ニューヨーク連銀から30兆円の緊急融資を受け、JPモルガン・チェースに救済合併された。8月には、政府系住宅金融機関のファニーメイとフレディマックが破綻寸前で政府管理に置かれた。両者の住宅ローン残高は約550兆円。約160兆円が焦げ付いたと言われる。
 そして9月15日、米投資銀行4位のリーマンが60兆円の負債を抱えて倒産した。同3位メリルリンチはバンク・オブ・アメリカに買収され、2位モルガン・スタンレーと1位ゴールドマン・サックスは普通銀行へ転向し、FRB(米連邦準備制度理事会=中央銀行)の管轄下に逃げ込んだ。米帝の5大投資銀行はウォール街から消えてなくなってしまったのだ。
 サブプライムローンと証券化商品が大破産し、米の金融ビジネスの象徴ともいえる5大投資銀行が消滅したことの意味は大きい。もはや米帝はサブプライムローン証券化商品に代わる、投資マネー集中の仕組みなど絶対につくれない。

 ドル暴落の現実性

 世界中から資金を吸引し、また海外に吐き出す巨大な資金循環のパワーの源泉・土台が国際基軸通貨ドルだ。各国の外貨準備はドルが6割以上。ある国の貿易黒字が増加し、国の貯蓄が増えればドルの外貨準備は増える。だから資金が米帝に流れるのは不可避とも言える。
 71年のニクソン・ショックで、米帝はドルと金の交換を停止し、ドルは単なるペーパーマネーとなった。しかし世界の取引の多国間決済は、在米銀行のドル預金残高の振替で行われてきた。また中東産油国の多くが自国の通貨をドルに連動させるドルペッグ制を敷いている。ソ連スターリン主義と対峙・対決する政治的・軍事的パワーも決定的だった。その結果、米帝は長年にわたり巨額の経常赤字を計上しながらも、ドルは基軸通貨たりえた。
 しかし、それも限界を超えようとしている。米国発の金融大恐慌でドルの国際的信用は地に落ちた。もはや「強いドル」は最末期状態だ。最大の国際商品である石油の値立てと国際決済がドルから離れる時、基軸通貨ドルの地位は根本から揺らぐ。
 大恐慌で信用が極限的に収縮し、経済活動が著しく弱まる中で、各国政府と中央銀行は対抗手段として通貨を大量発行している。だが、これで恐慌が克服できるのか。米政府の70兆円の公的資金投入など焼け石に水だ。莫大な公的資金の投入は、財政赤字を未曽有のスケールに膨らませるだけだ。
 天文学的な財政赤字で米国債の償還のあてなどない。百兆円規模の国債発行がいつまでもスムーズにできるのか。日本や欧州、中国がいつまでも値崩れが確実のドル建て国債を購入し続ける保証は何一つない。
 ドルが暴落して紙切れになれば、世界にドルは環流しなくなる。米帝は世界中から借金をしてモノを買うことも不可能になる。国際決済もできない。今まではドルで行ってきた取引は円と元、円とポンド、ある意味で物々交換に近くなる。実体経済における取引は劇的に縮小する。文字どおり第一次大戦中や29年大恐慌後の30年代のような経済的破局が訪れる。

 衰退した米製造業

 そもそも実体経済の数倍になるほどの金融の肥大化を導いたのは、米日欧の低成長化で、蓄積された資本が増殖の機会を求めて、金融・資本市場に大量に流入を始めたことにある。特に90年代後半からは、低金利がマネーをさらに増殖させ、膨れ上がった資本が再び投資機会を求めて金融・資本市場を徘徊(はいかい)する現象が起きた。
 とりわけ貯蓄の規模が世界一の日本の金利が6〜7年間実質ゼロが続いたことが大きい。ヘッジファンドは、ただ同然の金利で日本から資金を調達し、外貨に換えて運用した。国内で金利を稼げないジャパンマネーが米帝の金融資産を増やすのに使われた。
 サブプライム証券化の根幹にあったのも世界のカネ余りだ。金融商品をつくる銀行や証券会社は、その旺盛な需要に合わせて証券化商品を組成した。21世紀に入って金融取引のすべてが証券化されるような状態になった。
 しかし、金融の世界だけで自己増殖し続けることは不可能だ。証券化は、突き詰めれば投資家に転売して将来の収入を先取りするものにすぎない。その暴走が転倒した時、その衝撃は実体経済を一気に縮減する。カネを回すだけでは世界は成り立たないのだ。
 オバマの新たな「ニューディール政策」で米帝経済が再生する可能性は限りなくゼロだ。金融の破産だけではなく、かつては米帝の主要産業であった繊維、自動車、鉄鋼、電子産業は軒並み衰退してしまった。
 自動車のクライスラーは1兆6千億円の負債を抱えて倒産した。約7兆円の債務を負うGMの破綻も秒読みだ。米帝は失業者数、個人消費、住宅着工件数などあらゆる経済指標が大幅悪化し、完全に縮小局面に入った。金融も実体経済も回復の見込みはない。

 恐慌の克服ではなく革命が必要

 基礎に労働力商品化

 恐慌の根本原因は労働力の商品化を基礎とする利潤率の傾向的低落による過剰資本という問題がある。利潤率は、資本の競争が激しい資本主義社会では低落する傾向があるのだ。過剰資本は利潤を生まない。
 資本は競争に勝ち抜くために常に新しい機械・技術を導入する圧力にさらされる。資本家にとって利潤とは投資した総資本を超えて得られる部分だ。分母が大きくなるので投資が巨額になるほど利潤率は下がっていく。
 現実社会の中では資本家が労働者から搾取する剰余価値は、自分の工場の中だけでなく、競争相手の工場労働者からの搾取も含まれる。だから資本は商品を平均的な価値より少ない価値で生産した方が得である。より低価格の商品をつくるためには工場や機械、原料などの増大が欠かせない。これが利潤率の傾向的低落を生み出すのだ。
 しかし、利潤率の低下は必ずしも利潤の絶対量の減少を意味するわけではない。むしろ逆で、労働者は、巨大になった機械装置や原料を使って、より少ない労働で生産するようになる。つまり労働の社会的生産力は圧倒的に発展しているのだ。
 したがって利潤率が傾向的に低落しても、むしろ資本家階級が取得する剰余価値の絶対量は増えるのだ(つまり労働者はより多く搾取される)。生産力の発展と利潤率の低下はコインの裏表の関係なのだ。
 にもかかわらず資本の増殖率である利潤率こそが資本主義的生産の唯一の動機であるので、利潤率の低落は、資本主義的生産過程に致命的な脅威を与えるのだ。利潤率の低下は結局、過剰生産、過剰資本、投機や失業者、最後には恐慌を生み出すからだ。
 生産力の発展が資本主義を危機に陥れる——これが資本主義の没落を不可避とする弁証法なのだ。資本主義は利潤を求めて永続的に生産手段を改良・拡大し、利潤率を下げていく。それが結果として資本と生産を過剰にし、市場を閉塞(へいそく)させるのだ。
 資本主義的生産様式は、資本の自己増殖だけが一切の動機・目的として現れる。生産が資本の増殖=利潤のためにしか存在しないのだ。だから生産手段は、けっして社会のために存在しない。資本主義はあくまで資本の利潤を実現するための経済なのだ。
 それゆえ消費と生産のアンバランスが起きる。過剰生産と言いながら、商品が欲しい人がいても買えない。こうした事態が資本主義が引き起こす過剰生産の状態なのだ。結局、資本主義的生産は、人類の欲望を満足させるには不十分な過小生産になる。
 利潤率が低落するにしたがい資本は過剰になっていく。やがて資本を追加しても利潤を引き上げられないレベルに達し、生産資本としては余剰になる。利潤率の低落は景気後退として現象し、過剰資本は資本家相互の競争を激化させる。自分だけが損をしないために相手を犠牲にする競争が始まる。

 基軸は労働者の搾取

 株式や債券、証券の世界は、資本主義のある意味で最高形態だ。新自由主義のもとで、あらゆる金融取引を証券にし、その配当をめぐって値打ちをつけて売り抜けるところまで暴走した。むき出しの高利貸資本の形態だ。しかし利子や配当は、最後の最後は生産資本の利潤からしか生まれない。誰も働かないで利子をとることはできない。
 新自由主義のもとで米帝の「強いドル」政策が満展開したこの十数年はカネがカネを生むかのような倒錯した状況だった。米帝の金融・不動産業のGDP構成比は2割を超え、製造業の2倍だ。新自由主義の常套句は「企業は株主のもの」である。利潤は労働者からの搾取ではなく、貨幣から生まれるという転倒した世界観である。
 本来の利潤は、貨幣が生産に投資されて生み出される労働者の労働力からの搾取しかありえない。資本主義の生産様式のもとでは労働者から搾取することなく資本が利子を生むことはない。資本主義が生産なしで進むことは無理である。
 この十数年は、金融資本が世界中から巨額の利子や配当をせしめる腐敗・腐朽の極限的な様相を呈していた。新自由主義のもとで数十億人の労働者が苦しんできた。あたかもひとりでに魔法のように生まれる利子や配当……だが利子だけで資本主義は発展するのか。貨幣が無限の利子を生むのか。結局、貨幣の背後には労働者が汗水たらして働く実体経済がなければ意味がないのだ。
 今回の大恐慌直前、資本家階級は、生み出される信用に見合うだけの実体経済が発展したように錯覚していた。利子や配当さえ払われていれば景気がいいと思う転倒した観念だ。確かに信用が膨張しても直ちには恐慌にはならない。さらにもうけを狙って生産の外部から来る投機の増加でブームは継続する。だからバブルは歯止めなく最悪の事態まで行き着くのである。
 新自由主義は、世界中で産業と商業を破壊し、世界経済を徹底的に疲弊させた挙げ句の果てに大恐慌を引き起こした。何よりも世界中の労働者を超低賃金でこき使い、仕事を奪い、貧困をつくり出してきた。これが資本主義の破局を導いた。
 大恐慌でもはや資本主義は自立展開できないほどの危機に陥っている。革命と反革命が激突する階級闘争が公然化する時代に入ったのだ。戦争か革命かをかけて階級闘争が内乱的に展開する時代だ。克服すべきは恐慌ではなく資本主義そのものである。資本主義社会はもう終わりだ。大恐慌をプロレタリア世界革命に転ずることが労働者の生きる道だ。米帝オバマと日帝・麻生の打倒をかけて6・14−15中央政治闘争に総決起しよう。