「つくる会」教科書“合格”弾劾 杉並・山田区長と対決を
「つくる会」教科書“合格”弾劾
今夏採択を阻止しよう
不起立闘争と結合して杉並・山田区長と対決を
文部科学省は4月9日、「つくる会」中学校歴史教科書(自由社版)の検定合格を発表した。この暴挙を弾劾する!
自由社版の教科書は、4年前に合格した扶桑社版とほぼ同じ内容。加えて改悪教育基本法に踏まえ、教育の目標に「公共の精神」「伝統と文化の尊重」「我が国と郷土を愛する」を明記。「出雲大社」「戦艦大和」などの学習テーマや、昭和天皇の「お言葉」を2㌻で特集するなど、扶桑社版に比べてもより悪質だ。
この教科書に対して文部科学省は昨年12月、516カ所の誤記を指摘、いったん不合格とした。再申請でも136カ所に意見がついたが、すべて「修正」の上で合格させた。大量解雇に対する労働者の決起が始まったことに震え上がった日本経団連と麻生政権は、なんとしてもこの教科書を使わせるため、間違いだらけ、不備だらけであっても検定を通したのだ。
自由社版の合格により、今年8月までに行われる教科書採択(10年度から使う教科書を区市町村ごとに採択)は、「つくる会」歴史教科書は自由社版、扶桑社版の2種が対象となる(公民教科書は扶桑社版のみ)。
06年度から「つくる会」歴史教科書が使われている杉並区では、山田区長が採択に向け、中間派の教育委員長を更迭、「つくる会」派を教育委員長に据えた。6月には区主催で北朝鮮拉致被害者家族支援の講演会や映画会を企画し、区職員にブルーリボンバッジの着用を強要している。7月には「真に誇りある日本をつくる会」主催で前空幕長・田母神俊雄と評論家・渡部昇一の講演会が企画されている。再びの「つくる会」教科書の採択を絶対許さない!
戦争・改憲、民営化推進の教科書
「つくる会」歴史教科書(扶桑社版・自由社版)は侵略戦争を肯定するとともに、民衆の闘いの歴史を真っ向から抹殺している。天皇や支配者の心情は細かく述べ、歴史は天皇や支配者がつくったものと描くが、民衆が支配者をうち倒し、歴史をつくってきたことはまったく書いていない。
アジア人民の虐殺、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下、「従軍慰安婦」など、日本が行った侵略戦争の残忍さは露ほども書かず、他方で「国王を処刑するなどの過激な流血事件に発展」(フランス革命)、「共産党が敵とみなす貴族、地主、資本家、聖職者、知識人らが多数処刑」(ロシア革命)などと倒された権力の悲惨さだけは強調。労働者の闘いを死ぬほど恐れ、憎悪しているのだ。
また扶桑社版の公民教科書は、憲法改悪を前提にした教科書だ。「憲法改正」の項目を設け、同じ項で道州制も説明。領土・拉致・不審船などで排外主義をあおり、自衛隊の海外派兵、国防の意義を唱えている。戦後の年表には36項目しかないのに「電電公社・専売公社民営化」「国鉄分割民営化」を記載し、「規制緩和」のコラムを設けて民営化を絶賛している。
杉並の山田区長は「つくる会」教科書導入と一体で、師範館教員の育成、学校支援本部、「夜スペ」導入などで競争をあおってきた。団結を徹底的に破壊した結果、事故が相次ぎ、教育労働者が業務上過失致死容疑で書類送検される事態になっている。また麻生政権は、自衛隊のソマリア沖派兵を強行し、北朝鮮の人工衛星へのミサイル迎撃体制に自治体労働者を動員している。
「つくる会」教科書とは戦争と改憲、民営化・労組破壊、道州制攻撃を進めるための教科書だ。世界大恐慌下で沸き上がる労働者の闘いをつぶし、教育労働者に対して「お国のために死ぬ」教育をすること、資本に滅私奉公で働く人間を育成することを迫るものであり、自治労・日教組を破壊し、労働者の団結を解体する攻撃だ。
労働者の団結で葬り去ろう!
05年夏の採択では「つくる会」教科書は歴史0・4%、公民0・2%と低採択率で、ついに会を分裂に追い込んだ。杉並区では2人の教育労働者が「『つくる会』教科書は使えない」と告発した。07年のアンケートでは、社会科教員約40人のうち10人が「この教科書は使えない」と回答、教室では「大東亜戦争」を「太平洋戦争」に訂正させるなどしている。さらに教育基本法を改悪した安倍政権の崩壊、教科書検定撤回の沖縄12万人県民大会など、労働者は「つくる会」教科書を進めてきた政府と日本経団連を追い詰めている。
労働者を路頭に投げ出す資本への怒り、戦争や大資本に税金を湯水のように投入する政府への怒りは4年前とは比べものにならないほど大きい。「つくる会」の言う「守るべき国」は、日々労働者を殺し、資本家は労働者の血を最後の一滴まで搾り取っている。
全世界で教育の民営化と対決するストが激発し、韓国の労働者は検定合格に抗議声明をたたきつけた。「つくる会」教科書は労働者の闘いで跳ね返すことができる。不起立闘争をさらに発展させよう。6・14渋谷大デモと6・15闘争をかちとり、「つくる会」教科書採択を阻もう!
(東京西部 飯野依子)
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【注】「つくる会」分裂と、自由社版・扶桑社版
「つくる会」現会長の藤岡信勝らが執筆し、扶桑社が発行した中学用歴史教科書は2000年度、04年度の検定に合格したが、反対運動が巻き起こり、ほとんど採択されなかった。これをきっかけに「つくる会」は分裂した。
藤岡らの「つくる会」は08年度、自由社発行の歴史教科書を検定に申請し、今年4月に合格。
他方、元会長で高崎経済大教授の八木秀次らの「教科書改善の会」は引き続き扶桑社から教科書を発行。まったく改訂しなかったため検定対象とならず、今夏の教科書採択の候補となる。