2009年4月27日

〈焦点〉 「海賊法案」の成立阻止を 衆議院で与党が採決強行

週刊『前進』10頁(2389号5面4)(2009/04/27)

〈焦点〉 「海賊法案」の成立阻止を
 衆議院で与党が採決強行

 「海上警備行動」の名目で3月14日からソマリア沖に派兵されている海上自衛隊の活動を、正式の自衛隊の任務とする「海賊対処法案」が、与党と民主党の修正協議の「決裂」を受け、4月23日の衆院本会議で自公により強行可決された。法案が成立すると、①日本と無関係の外国船舶も護衛できる、②船舶に対する「危害射撃」など武器の使用が可能となる。さらに、③活動海域の制限はなく世界のどこでも「海賊対処行動」が可能となる。
 とりわけ武器の使用は「正当防衛」以外でも可能となる。相手を殺してもいいのである。すでに展開している米英軍など多国籍軍との共同作戦も可能だ。まさに、戦後憲法的枠組みを大きく踏み破る事実上の恒久的な海外派兵法が、与党による衆院再議決で成立しようとしているのである。成立を絶対に阻止しなければならない。
 現在ソマリア沖に展開する海自護衛艦2隻には、「海賊」を逆襲してせん滅、または拿捕(だほ)する能力を持った完全武装の海自特殊部隊が乗り込み、これを運用する高速の特別機動船を計4隻搭載している。さらにこの特別機動船と連携するSH60哨戒ヘリ計4機も搭載している。この最新ヘリは、機銃や魚雷から空対艦ミサイルまで搭載する武装ヘリだ。
 これらの装備を使った作戦は「海上警備行動」では採用できない。しかし法案成立と同時に発動可能となる。今回の海自の派兵自体が、現行の憲法や法をも無視した見切り発車だったが、今後、米艦などとも連携した文字どおりの軍事行動に移行するのだ。
 これは、敗戦以来の日帝再軍備の歴史を質的に塗り替える画期をなすものだ。世界大恐慌下で帝国主義各国や大国間の激しい権益争奪戦が拡大し、米帝のイラク戦争敗退で中東石油支配の崩壊が激しく進行する中で、改憲を先取りする事実先行の形で日帝の海外派兵体制を作り出すこと。これが今回の派兵強行と法案の狙いだ。
 現在「海賊対策」と称して、米欧の帝国主義諸国はいうにおよばず、ロシアや中国、インド、韓国を含む世界の主要国が競うように中東海域に集結している現実も事態の本質を物語っている。そもそも米帝は、「海賊対策」を中東での「対テロ戦争」の一環として位置づけているのだ。
 今回の海自護衛艦の派兵と「海賊対処法案」は、イラク戦争以後の世界的戦争の新たな始まりに対応した、日帝支配階級のむき出しの”戦時対応”なのである。
 民主党はそもそもこの法案に反対せず、国会事前承認の有無や派兵の組織形態をめぐる「修正協議」に応じ、今国会で成立させるという全面屈服方針だった。
 また日本共産党は「海賊は犯罪行為だから警察力で取り締まるのが一番正しい」(志位)などと、警察力(海上保安庁)の出動なら良いとする。日帝の侵略的意図を擁護する恥ずべき見解である。
 日帝・麻生政権は、一方で連合・全労連を先兵とする激しい賃下げと首切りを大々的に進め、他方で戦後憲法的枠組みを突破する軍事・外交政策の急速なエスカレートに乗り出している。その狙いを徹底的に暴露し、「海賊対処法案」の成立を断固阻止しよう。