2009年4月27日

資本主義への怒りと国際的団結の欲求 大恐慌下の世界の闘い

週刊『前進』10頁(2389号2面1)(2009/04/27)

資本主義への怒りと国際的団結の欲求
 大恐慌下の世界の闘い

 世界中でストや工場占拠などが激しく闘われている。労働者階級は、体制内指導部の制動をうち破り、国際的に団結することが展望を切り開くことを学びつつある。「戦争と民営化・労組破壊」との闘いを貫くことが核心だ。

 第1章 アメリカ オバマ幻想、3カ月で崩壊 公共労働者メーデー大行進へ

 第1節 民営化で破産のカリフォルニア

 日本の道州制・民営化攻撃のイメージの一つにアメリカの州制度がある。特に1960年代にレーガン元大統領が州知事だった時代から露骨な資本家優遇政策をとってきたカリフォルニア州だ。80年代のレーガン新自由主義政策が、そこでまず実験的に開始されたからだ。
 カリフォルニアでは、それまで独占的支配が制限されてきた土地利用、水利、電力などの全面的な規制緩和を行った。資本家による州の私物化である。
 1978年の州民投票では、固定資産税を1%以下とするなどの資本家の税負担軽減を行った。これは「納税者(資本家のこと)の反乱」として全米、全世界に衝撃的に宣伝された。その結果が、現在の全米で最も深刻なカリフォルニアの財政危機なのだ。労働者への手当、税の還付、業者への支払いなど未払金が山積している。州債も買い手がつかず、当面の資金調達もできない。
 この中で、教育、医療などの予算削減・大量解雇が労働者を襲っている。労働者階級の怒りは激しい。
 UTLA(ロサンゼルス統一教組)の労働者は、「財源がないなんて冗談じゃない」「金持ちに課税しろ。軍事費や大銀行救済より教育費を優先しろ」と言って闘っている。UTLAは4千人の教育労働者解雇計画に対して、各学校でのテスト拒否闘争、デモ、教育委員会占拠などを積み重ね、5月15日には1日ストに突入する。
 UTLAなどの教職員組合、AFSCME(米自治労)の諸支部、郵便労組、サンフランシスコ労組評議会、学生組織などが軸になって、UPWA(公共労働者統一行動)という共闘組織が結成された。UPWAは、全州150万人の公共部門労働者のメーデー統一行動を準備している。
 UPWAの結成が可能になったのは、これまで労使パートナー路線を取ってきた各労組の中央指導部の制動が、この大恐慌情勢の中できかなくなり、カリフォルニアの各支部が団結して動きだしたからだ。階級的労働運動の巨大なチャンスが到来したのだ。
 民間でも、200万人の超巨大組合SEIU(サービス従業員国際組合)が極悪の労使パートナーシップ路線をとり、ホテル従業員の組合に切り崩し攻撃をかけていることに対し、SEIUの支部を含め地域の諸労組支部が反撃している。サンフランシスコなど北カリフォルニアの各地やワシントン州シアトルなどでは、SEIU本部に対する弾劾決議が上げられた。
 ここを拠点にして、米帝オバマ政権との大激突が開始されている。

 第2節 拷問・盗聴、解雇と戦争のオバマ

 オバマは、金融資本にはけた違いの救援資金を出しながら、UAW(全米自動車労組)の組合員には、組合をつくらせないトヨタの北米工場並みの賃金にまで下げろと恫喝している。
 そして、ブッシュ政権の時以上の軍事予算の支出を決定した。「撤退前に治安を回復する」として、イラクでの戦闘を強化している。そしてアフガニスタンへの増派とパキスタンへの侵略戦争だ。
 「拷問をやめる」「グアンタナモ収容所を閉鎖する」と言った舌の根も乾かぬうちに、CIAによる世界各地での拉致・強制収容作戦の続行を明らかにした。4月16日には「拷問を推奨した司法省責任者も実行者も処罰しない」「国際的に訴追されても無料で弁護をつける」と発表した。令状なし盗聴も免責なのだ。これまでにアメリカでもほかの国でも、拷問、令状なし逮捕、盗聴の例はあった。しかし、これを公然と法務当局が奨励し、居直ることは別問題だ。
 最末期の危機にあえぐアメリカ資本主義は、13世紀の英マグナ・カルタ(大憲章)以来の原則を守るという体裁さえとれない。むきだしの警察国家として、労働者人民の憎しみの炎に焼き尽くされる存在になったのだ。
 労働組合に公約した「被雇用者自由選択法」についても成立させない態度をとっている。国民皆保険制度の導入についても公約をあらかさまに踏みにじっている。
 労働者階級の間でオバマへの幻想は急速に崩壊している。
 ところが日本共産党は、オバマの大統領就任について「民主的活力の発揮につながることを期待」(志位委員長)と言い、4月には「他国が核を持っている以上、米国も核を持ち続ける」と言ってはばからないオバマを「核兵器廃絶」の推進者であるかのように賛美しているのだ。
 体制内勢力は、アメリカ労働者階級を信頼せずにオバマへの信頼を語るのだ。

 第3節 資本主義に怒りが急速に拡大!

 資本主義に対する労働者の怒りは大きい。ブルジョア世論調査会社でさえこれを無視できなくなっている。
 08年12月29日に行ったラスムセン社の世論調査では、70%が市場経済のほうが良いと答えていた。だが3カ月後の4月9日の調査では、アメリカの成人の53%しか資本主義が社会主義より良いと信じていない、という結果となった。社会主義の方が資本主義より良いという人が20%もいる。分母が国民ではなく労働者なら社会主義支持ははるかに多いだろう。
 オバマの支持率も急落している。就任時の1月21日の段階では「強力に支持」が44%、「強力に不支持」が16%だった。だが3カ月後の4月22日は「強力に支持」34%、「強力に不支持」32%となった。
 階級意識が巨大な規模で激変している。アメリカ労働者のオバマへの幻想は失われている。問題は、体制内指導部がいまだにオバマを支持し、労働者を裏切っていることだ。その制動を突破することがアメリカ—世界革命の展望を切り開く。
 (村上和幸)

 第2章 韓国 激化する民主労総つぶし 現場握る労働者を恐れる政府

 韓国のイミョンバク政権はこの間、昨年の百万ロウソク闘争の主体に対し弾圧を集中している。昨年5〜7月、米国産牛肉輸入反対を契機に闘われたこの闘争を、支配階級の立場から反動的に総括しているのだ。

 第1節 言論弾圧と闘うマスコミ労働者

 韓国政府と検察は4月8日、MBC(文化放送)に対して押収捜索を行おうとしたが、MBC労組組合員はこれを実力阻止した。
 MBCは昨年4月29日、報道番組でBSE(牛海綿状脳症)の危険性を検証、その衝撃的な映像が闘争の引き金となった。これに対し政府・当局は昨年来、MBCを名誉毀損で告訴告発し、プロデューサーを逮捕するなど弾圧を強めていた。
 検察は今回、番組制作陣の逮捕と取材原本の押収のために本社捜索を狙った。だが朝から結集した組合員300人が正門でピケを張り、1時間余りの攻防の末、検察を追い返した。MBC労組委員長は、死守隊活動を強化する方針を明らかにした。
 一方、公営企業的性格の強いYTN(聯合ニュース所属の放送局)もロウソク闘争を支持したことから、イ大統領は政権の息のかかった人物を社長に送り込んだ。これに対し全国言論労組YTN支部は「イ政権の言論掌握の陰謀を阻み、公営放送を守る」として、昨年7月18日から今年4月1日にかけて、韓国放送史上初の長期にわたる社長出勤阻止闘争を闘った。3月には、支部長ら4人の逮捕に抗議し10日間のストライキを打ち抜いた。
 マスコミ労働者の闘いには圧倒的な支持が寄せられている。言論機関をめぐる政府の攻撃の狙いが政権による言論掌握とそれを阻む労働組合の破壊にあることは明らかだ。

 第2節 労組破壊、教育の民営化との闘い

 韓国政府はこの間、個人請負で働くトラックやダンプの運転手や建設重機の操縦者を「個人事業主」と規定して労働者性を認めず、労働組合をつくって団結する権利を否定してきた。
 これらの労働者を組織する民主労総の建設労組と運輸労組に対し、労働部(省)ソウル南部支庁は、トラック・ダンプ労働者でつくる貨物連帯や建設重機労働者でつくる建設機械分会を除名しなければ組合自体を非合法化する、と圧力をかけてきた。これに対し、民主労総は4月11日、建設・運輸労組抹殺糾弾決意大会を開き、団結権破壊と分断の攻撃を糾弾した。
 貨物連帯は一昨年、「物流を止めよう! 世の中を変えよう!」を掲げ、運賃制度の改善と労働基本権を要求してストに立った。昨年6月には、百万人ロウソク決起に連帯し、運送料値上げと団交を要求してストに入った。建設機械分会もこれに続いてストに入った。
 イ政権がトラック・建設重機労働者の団結権を認めないのは、現在の物流・建設現場の大部分がこうした労働者によって担われているからだ。実際、昨年6月の建設機械分会のストでは全国の土木建設作業の9割以上がストップしている。
 現代建設の会長出身で、大運河建設などの大規模事業によって経済危機を切り抜けようとあがくイ政権にとって、「現場を止めよう! 世の中を変えよう!」の闘いは恐怖以外のなにものでもない。
 百万ロウソク決起は、イ政権の競争と分断の教育政策に怒る生徒たちの決起を突破口に爆発した。だがイ政権はそれでも、昨年10月と今年3月に「教科学習診断評価」(全国一斉学力テスト)を強行した。全教組ソウル支部などの闘う教育労働者は処分を受けながらも評価拒否などの闘いを展開。生徒も「一斉学テ反対! 解任した先生を学校に戻せ! 競争教育反対!」を叫んで街頭に出ている。
 イ政権の教育政策は、資本家のために黙って働く労働力をつくることだ。労働者階級の子どもを徹底的に分断し、労働者家族に個別教育への支出を強制して資本をもうけさせるものだ。何よりも教育労働者の闘いを破壊する攻撃だ。まさに「教育の民営化・労組破壊」の攻撃だ。

 第3節 闘いに確信持ち現場の組織化を

 韓国でも2月以降、政労使共同宣言が中央・地域・企業レベルで相次いで出された。他方で民主労総つぶしの攻撃が激しさを増している。
 その中で「民主労総の危機」と呼ばれる状況が、一部産別幹部による性暴力事件などとも絡み合い、組合員の中に激しい危機意識を生んでいる。「内部的に崩れそうだ。現場組合員もかなり萎縮(いしゅく)し、精神的にすでに負けている」。ある活動家の言葉が主体の危機を物語る。別の活動家は「今の闘いには、87年労働者大闘争や97年労働法改悪反対ゼネストの時のような感動がない」と語る。
 その背景・原因として、何人もの活動家が、97年のIMF事態以来十数年間にわたる新自由主義の大量解雇・非正規職化攻撃と闘いきれてこなかったことを挙げている。百万ロウソク決起についても「労働運動が結合しきれず、百万決起でも政府を倒すことができなかった」と後ろ向きに総括している。
 日本と同様に韓国でも新自由主義の嵐は激しく吹き荒れた。しかし、韓国労働者階級とイ政権の現在の攻防を全体として見た時、イ政権が人民の闘いを恐怖し、現場を握る労働者が闘いの中軸に座ることをいかに恐れているかがわかる。
 支配階級の側は事態をきわめて階級的にとらえ、攻撃の焦点と方法を的確に定めてきている。ともすると労働者階級は、自らの切り開いてきた巨大な地平をつかみきれず直接の困難に負けてしまうことがある。民主労総は、こうした困難性を突破するために5・1メーデー10万人集会を開催し、6月全面ストと民衆総決起闘争を宣言すべく組織化を進めている。職場生産点と政治権力を労働者の手に握る組織化こそ、日韓労働者の勝利の展望を切り開く道だ。
 (池田崇文)

 第3章 欧州 体制内派への怒りが噴出 自動車工場閉鎖に各国で反撃

 欧州の労働者階級の闘いは、かつてなく戦闘的に闘われている。各国の体制内労働運動指導部は資本主義救済と闘争圧殺、分断の策動を強めているが、現場の組合員はそれを突破して実力闘争に立っている。

 第1節 独オペル政労資救済路線に怒り

 2月26日、破綻の危機を深めるGM(ゼネラル・モーターズ)傘下の子会社や工場の所在地で、GMによる欧州諸工場閉鎖・人員削減計画に反対する統一行動が行われた。
 GMは、米政府からの公的援助を受けるために、世界で4万7千人、米以外で2万6千人の削減と幾つかの工場の閉鎖を計画している。ドイツのGM子会社オペルは、政府資金によって救済するか否かをめぐり大連立政権内で意見が分かれている。イギリスにある子会社ボグザールは、英政府の救済が受けられず、倒産が決まり、従業員は全員解雇される。
 中央集会は、オペルの中心工場のあるリュッセルハイム(フランクフルト近郊)で行われ、オペルの5工場、英ボグザールの労働者が参加した。
 主催者のIGメタル(金属労組)の代表は、オペルを救済するために「米GMから独立して欧州自動車資本の統一的な経営を確立すべきだ」と述べた。反米排外主義をあおり、労働者を欧州資本・国家への屈服と協調の道に引き込もうとしているのだ。政権与党の社民党のシュタインマイヤー副首相・外相(次期首相候補)は「オペルはドイツの誇り。その担い手の労働者とともに米国資本と闘う」と愛国心をあおり、政労資一体となってオペルを救おうと訴えた。だが労働者はそのための犠牲になれと言っているのだ。
 労働者は、これらの発言に怒りを表明した。「IGメタル本部は企業みたいになった。84年以来まともなストをやっていない」「組合費をマネーゲームに使っている」「工場の労働者は数年で4万8千人から1万8千人に減らされた。今や労働者の半分以上が非正規雇用だ」「今こそ国境を越えて団結して闘う時だ」。現場には、政労資一体の屈服路線に幻想はない。

 第2節 伊フィアットでストとデモ続く

 イタリアでも2月27日、フィアット社のポミリアーノ工場(ナポリ近郊)で5300人の正規雇用労働者と1万人の非正規労働者が操業短縮に反対しストライキを行った。ミラノやトリノなどフィアットの拠点工場でのスト・デモに続く闘いだ。
 フィアットは昨年9月以来、19週間にわたって操業を短縮、実働労働時間は5週間だ。賃金は月額わずか750ユーロ(約9万5千円)に引き下げられた。フィアット社は5万8千人の従業員をレイオフし、ポミリアーノとシチリアのイメレーゼ工場を閉鎖する計画を進める。
 スト連帯集会には2万人が結集。イタリア全土のフィアット工場の労組代表が合流。ナポリ地方の労組地区組織、学生も大挙参加した。市内の商店の大半が閉店ストで連帯を表明。ポミリアーノ市はゼネスト状況だ。
 「車を作ったこともないやつらが工場閉鎖? ふざけるな! 毎朝5時起きで働きに出るおれたちの気持ちが分かるか」「労働者が奴隷のように扱われている。国際的団結が必要」
 操業短縮と賃下げを許してきたのは金属労組本部だ。三つの労組全国組織も政労資協定に署名、ベルルスコーニ政府のスト禁止立法攻撃に屈服している。もう一つの労組全国組織CGIL(旧共産党・社民党系)は政労資協定とスト禁止法に反対し、4月4日に全国行動を行った。CGILも労資協調路線で屈服を重ねてきたが、労働者の怒りを前に闘うポーズを取らざるを得なくなったのだ。

 第3節 サルコジと対決2度のゼネスト

 フランスでは今年すでに1月と3月に2度のゼネストが行われた。新自由主義攻撃を強めるサルコジ政権と資本への怒りが爆発した。国鉄、教育、医療・福祉など公務員労働者のほか自動車など民間労働者、学生も多数参加した。パリやマルセイユなど大都市のほか地方都市もストとデモに覆われた。参加者はそれぞれ250万人、300万人を数えた。ゼネストに続き、各地で労組が経営者を監禁・追及したり、工場や役所を占拠するなどの実力行動を展開している。4月下旬時点で十数大学で占拠が続いている。
 他方で1月5日、ゼネストを前にしてG8と称される労組全国組織は「共同宣言」を発し、雇用と賃金の維持、購買力向上のために景気を回復させよと要求した。資本を救済・延命させてこそ労働者の生活と権利は守られるというわけだ。この8労組に、これまで「左翼」と見られてきたSOLIDAIRESも加わっている。2月初めの第4インター=革命的共産主義者同盟(LCR)解散、反資本主義新党(NPA)結成と軌を一にした大恐慌下の転向現象だ。
 こうした状況を打ち破って労働者は不屈に闘っている。4月16日から20日までトヨタ自動車のオネーグ工場で80人の労働者が工場を封鎖、生産を完全に止めた。昨年末から工場は減産に入っている。労働者は操業停止期間も賃金を100%払えと要求した。
 タイヤ生産のコンチネンタル社の2工場では、ルーマニアへの工場移転に反対し3〜4月、長期ストが行われた。クレロワ工場の労働者は、郡役所や工場事務所を占拠、4月21日に破壊した。サルコジらは「犯人を見つけて起訴する」とわめくが、そんなことでは闘いは終わらない。23日、ドイツ・ハノーバーで東欧への工場移転に反対し、数千人の独仏コンチネンタル労働者が合同集会を持った。
 サルコジ政権は、2度のゼネスト、G20サミット抗議デモ、NATO首脳会議へのデモが実力行動として爆発したことに慌て、覆面・フードでのデモ参加を禁止する新弾圧法案を提出することを決めた。こんなことで労働者階級の闘いが鎮圧されることはない。
 (木村紀明)