2009年4月20日

〈焦点〉「廃絶」の名で核独占狙う オバマのプラハ演説

週刊『前進』06頁(2388号5面3)(2009/04/20)

〈焦点〉 「廃絶」の名で核独占狙う
 オバマのプラハ演説弾劾

 米大統領オバマは4月5日、プラハで演説し「核廃絶をめざす包括的戦略」なるものを打ち出した。「核兵器のない平和で安全な世界」を追求するとのふれこみだ。マスコミはこぞって歓迎し、日本の被爆者団体なども「一歩も二歩も前進。期待できる」(広島県被団協)「オバマ政権の核廃絶への一歩と信じたい」(ピースデポ)とコメント。また日本共産党は「核兵器をなくす強い意志を表明した」とオバマを持ち上げた。
 しかし今回の「オバマ戦略」の実態は、「平和への前進」とは百八十度逆のものだ。大恐慌下で大国間の利害が激しく衝突する中、崩壊するアメリカ帝国主義の世界支配の危機を、新たな軍事・外交戦略で突破しようとする、独善に満ちた新たな戦争政策なのだ。
 プラハ演説の出発点は3月27日にオバマが発表した「アフガン・パキスタン包括戦略」だ。アフガンの米軍を年内に6万人規模に拡大、多国籍軍全体で9万人規模とし、ブッシュが始めた中東再植民地化のための「対テロ戦争」を、世界の帝国主義と大国を動員して継続する意志を明示した。
 そしてオバマは「アフガニスタン国際会議」(3・31オランダ)、米露首脳会談(4・1ロンドン)、さらにG20金融サミット(4・2同)をはさんでNATO首脳会議(4・3〜4ドイツとフランス)、米EU首脳会議(4・5チェコ)と、軍事外交政策にかかわる重要な国際会議を連続的に組織、「テロへの対応と中東和平」を中心とするオバマ政権の戦略に、世界の帝国主義諸国と大国を動員することに全力を傾けたのである。プラハでの演説はその仕上げだった。
 今回オバマが打ち出した「包括的戦略」なるものの柱は「核拡散防止条約(NPT)体制の強化とテロリストから核兵器と核物質を守る」というものだ。侵略戦争と殺戮(さつりく)の歴史の中で自らが招いた「反米帝」の民族解放闘争、国際的内乱への対処。これが戦略の実態である。
 具体的政策としては、①核実験全面禁止条約(CTBT)の批准、②核兵器用の核物質生産を禁止する「カットオフ条約」新設、③NPT体制による査察強化などだ。オバマは「ただし世界に核兵器が存在するうちは米国は核兵器を維持する」と言い放った。また「違反国には相応の処罰が必要だ」とも強調した。
 何のことはない。圧倒的ともいえる最大の核保有国であるアメリカが、自らの核は最後まで維持した上で、世界の核を取り締まるという“核独占戦略”なのだ。この種の演説で「処罰」を明言したことも重大だ。オバマは「核拡散阻止」と銘打った侵略戦争を継続すると宣言したのだ。ちなみに演説前日の4月4日、アフガンに展開する米軍は無人機によるミサイル攻撃でパキスタン北西部の部族地域を爆撃、女性と子どもを含む少なくとも13人を虐殺している。作戦の最高責任者はオバマである。
 帝国主義が帝国主義であるかぎり、核の廃絶などおよそ不可能である。オバマ戦略は、大恐慌と世界の分裂化・ブロック化の中で世界を破滅に導く新たな戦争の道なのだ。労働者人民による帝国主義の打倒、プロレタリア世界革命こそが、核廃絶の唯一の道である。