2009年4月13日

4・21裁判員制度阻止へ(下) 改憲と「国民総動員」狙う

週刊『前進』06頁(2387号6面2)(2009/04/13)

4・21裁判員制度阻止へ(下)
 職場から反対の声を拡大しよう
 統治形態の転換をかけて改憲と「国民総動員」狙う

 裁判員制度とは、重大事件の裁判に、「くじ」で選ばれた国民を参加させ、裁判官と一緒になって審理に加わり、多数決で有罪か無罪かを決定し、刑の重さも決める制度だ。
 2001年司法制度審議会最終意見書で打ち出され、04年、国会でなんの議論もないまま全会一致で「裁判員法」が制定された。そして政府は本年5月21日に施行し、7月からは裁判員裁判を始めようとしている。だが最高裁・法務省・日弁連が全力で推進し、野党や連合、全労連などが、「裁判の民主化」とか「よい裁判員になろう」などというデマゴギーを駆使して翼賛しているにもかかわらず、今日でも労働者人民の8割は、裁判員制度に反対である。「お上の側に立って人を裁くことを拒否する」と裁判員制度の本質を突いた批判を力強く投げかけている。
 国家権力と労働者階級人民は、絶対的対立関係にあり、裁判員制度など最初から根本的矛盾をはらんだものであり、強制をもって動員する以外そもそも成り立つはずもないのである。
 裁判員制度導入阻止の声をさらに拡大し、廃止を闘いとろう。

 第1章 「国を守れ」の意識植え付け

 世界大恐慌が爆発し、ついに資本主義の命脈が尽き、「恐慌と戦争」の時代に入った。階級矛盾、階級対立がどんどん激化し、労働者階級の怒りが激しく噴出し始めている。麻生政権も崩壊寸前であり、民主党も小沢党首への「国策捜査」で大打撃を受け、政治的危機、混迷が激しく進行している。支配階級の側が、これまでどおりの体制ではやっていけなくなった。
 そういう中で、労働者支配の反動的・強権的突破をかけた民営化・労組破壊の道州制導入、改憲攻撃へのふみこみと同時に、一方で海自のソマリア沖派兵の強行、「北朝鮮のミサイル迎撃」をあおりたてた戦争突入態勢に入った。
 裁判員制度の導入もこれと一体であり、体制的危機とプロレタリア革命の恐怖に脅えた支配階級が、革命の圧殺と、労働者支配、統治形態の転換をかけて打ち出した大攻撃にほかならない。
 裁判員制度の狙いは第一に、「動員」という制度の導入である。裁判員裁判は年間で約3500件、裁判員は年間約2万人、候補者として裁判所に面接するのはその10倍、候補者通知は半年ごとに数十万人に送られる。これを何年も続ければ、大変な数になる。
 裁判員になることは義務とされ、拒否した者には行政罰(10万円)が科される。まさに裁判への「強制動員」なのである。それは戦前の徴兵制や国民総動員法と同質のものであり、「現代の赤紙」と言われるゆえんである。
 この「動員」の目的について、「国民の法に対する意識を変えるもの」(樋渡検事総長)「統治主体意識への転換」と露骨に言っている。つまり、労働者人民を国家権力の側に立たせ、治安維持の担い手とし、その自覚を植え付けるためだというのである。
 日帝の危機の中で、「国を守れ」「資本主義の秩序を守れ」という「国民総動員」を狙った制度なのである。

 第2章 「戦時司法」の復活を許すな

 裁判員制度の狙いは第二に、刑事裁判の戦時型への大転換であり、治安管理体制の強化にある。
 裁判員が参加する裁判は連日開廷とし、9割は3〜5日で判決を下すといわれている。
 警察や検察によって、ひとたび逮捕・起訴された者は、直ちに刑務所に送りこむということであり、裁判は処罰のための単なる儀式と化してしまう。
 被告人の防御権・弁護権は著しく侵害され、国家権力によるデッチあげが激増することは火を見るより明らかである。
 また労働者階級人民は、国家権力によるデッチあげえん罪事件、人権侵害事件、戦闘的労働運動や革命的左翼への政治弾圧事件に対して、広範な大衆運動・救援運動と結びついた裁判闘争・法廷闘争を闘ってきた。こうした闘いを「国民」を動員して圧殺し一掃することも、裁判員制度導入の狙いである。
 戦前の戦時刑事特別法(1942年)に「有罪の言い渡しをする場合には、理由を詳しく説明する必要はない、有罪と認定した証拠の標目と法令名を書けばよい」(26条)とあるとおり、裁判員裁判は、戦時司法への転換攻撃であり、改憲攻撃そのものである。

 第3章 4・21日比谷に大結集を!

 裁判員制度実施阻止の闘いは、昨年から全国各地で集会・デモ、学習会が積み重ねられ、確実に日帝・国家権力を追いつめている。
 「生きさせろ!」のストライキと、戦争反対の闘いが結び付き、歴史が大きく転換を開始した。百万人署名運動による「裁判員制度反対」のキャラバンは、街頭にうずまく青年労働者の怒りを糾合しはじめた。
 裁判員制度を推進する共産党や社民党、連合や全労連は「よい裁判員になろう」などと言って、完全に屈服している。これを弾劾し、裁判員制度の反動性と反人民性を訴え、職場から反対の声をあげよう。
 「裁判員制度はいらない!大運動」が主催する4・21日比谷野音全国集会に全力で結集しよう。
 (小野寺浩)