2009年4月13日

〈焦点〉 G20と大恐慌下の争闘戦 許すな5兆㌦の財政出動

週刊『前進』06頁(2387号3面4)(2009/04/13)

〈焦点〉 G20と大恐慌下の争闘戦
 許すな5兆㌦の財政出動 

 4月1〜2日、ロンドンで開かれたG20・金融サミットは、労働者の怒りのデモに迎え撃たれた。しかも今回のG20が突き出したものは、1929年をはるかに超える世界大恐慌の進行のただ中で、一方での日米と独仏の帝国主義間争闘戦の激化、他方での中国を先頭とした新興諸国のG7とドル基軸通貨体制に対する異議と突き上げであり、大恐慌に「一致結束」して対応できない現実だった。
 これまで労働者に「自己責任」を強調し、首切り・賃下げ・不安定雇用化や社会保障の切り捨てなど、あらゆる攻撃を仕掛けてきた帝国主義政府とブルジョアジーは、いざ大恐慌に陥るや、公的資金=税金を湯水のように注入し、大銀行・大企業の救済を図っている。しかも公的資金を注入された銀行の経営者らは、何十億円という年収や退職金を手にしている。本当に許し難いことだ。
 G20首脳宣言は、「2010年末までに総額5兆㌦(約500兆円)の財政出動を行い、世界の成長率を4%分押し上げる」とうたった。これ自体はすでに米欧日などが、これまで打ち出してきた恐慌対策の数字を積み上げ、さらに膨らませたものだ。つまりこれだけ巨大な公的資金を労働者人民からむしり取って、大資本の延命のためにつぎ込むということだ。
 だが、こんなことで大恐慌を抑え込むことなどできない。いやむしろ、G20の分裂と対立、保護主義の台頭は、大恐慌をさらに激化させるものでしかない。実際、G20終了直後に、日欧で一斉に長期金利が上昇した。膨大な財政出動が結果する国債増発が、必然的にこうした結果を生んだのだ。
 今後予想される天文学的な国債発行に対応して、FRB(米連邦準備制度理事会)は、日英の中央銀行と連携し、今後半年間で最大3000億㌦(約30兆円)の中長期国債の買い切り政策を打ち出した。だがそれは、米国債やドルへの信認をいよいよ揺るがすものとなる。G20を前に中国がドル基軸体制の限界を露骨に指摘したことも、それに拍車をかけている。
 さらにG20では、首脳宣言に「GDP比2%の財政出動」を明記するよう主張してきた米帝オバマや日帝に対し、すでに膨大な財政負担にあえいでいる独仏は、金融大恐慌の爆発の引き金ともなった金融活動への規制強化を対置して反発した。だが金融規制の強化には米帝が反対した。また英帝などが宣言に盛り込もうとした根拠のはっきりしない「1900万人の雇用創出」には新興国が反発し「何百万」に書き替えられた。
 新自由主義政策を先頭になって強行し、労働者階級を搾取・収奪してきた米帝や日帝が「大規模な財政出動」を声高に唱え、それに独仏が抵抗するという構図自体、大恐慌を生み出した新自由主義の破産と、最末期帝国主義の生命力の歴史的終わりを示している。
 麻生政権はG20を受けて、15兆円の09年度補正予算編成を指示した。09年度当初予算がようやく成立した直後に、もう補正予算を組むこと自体、統治能力の欠如と大恐慌の深刻さ、そして赤字放漫財政への突進を象徴している。
 「世界大恐慌をプロレタリア革命の勝利へ」。これが世界の労働者階級のただひとつの回答だ。