2009年3月30日

〈焦点〉 西松建設献金事件の核心

週刊『前進』06頁(2385号4面3)(2009/03/30)

〈焦点〉 西松建設献金事件の核心
 “小沢政権阻止”へ強権発動

●麻生・漆間による国策捜査
 3月3日に政治資金規正法違反容疑で逮捕された、民主党代表・小沢一郎の公設第1秘書が24日に起訴され、それを受けて小沢が「代表続行」を表明した。この事件は、小沢・民主党が準大手ゼネコンの西松建設と深く結びつき政治献金を受けていた金権腐敗を暴き出したという次元の問題ではない。明らかに、麻生政権が漆間官房副長官を使い検察を動かして、「小沢政権」が生まれるのを阻止するために仕組んだ、戦後史上かつてない「国策捜査」であり、超重大事態である。
 麻生と日帝権力中枢が指揮権発動にも等しい検察権力の行使をもって、自民党政権護持のために周到に準備し、政敵=民主党・小沢に攻撃を仕掛けたものだ。
 それは民主党・連合のもとにある労働者階級全体に対する攻撃を本質としている。まだ議会主義の幻想のもとにあって民主党政権を求めること自体をも支配階級として許さないということだ。民主党と連合に一層の屈服のくさびを打ち込むことを狙っている。
 それは大恐慌下の日帝の危機、日帝政治支配の末期的危機の表現であり、支配階級がこれまでどおりのやり方ではやっていけないという統治能力の喪失をさらけだし、支配階級内部で激烈な分裂と暗闘を繰り広げていることの現れでもある。つまり、労働者階級が資本家政府を倒して権力を握らなければならない情勢であること、革命的情勢そのものであることを告げ知らせているのだ。
 大恐慌に直撃されて、日帝支配階級は震え上がっている。日帝は帝国主義の中で「最弱の環」であることがますます浮き彫りになっている。特に昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻以降、輸出依存の日帝経済の弱点が完全に明らかになり、自動車・電機・鉄鋼を始め日帝の基幹産業が総瓦解し、資本家階級は派遣切りを始め大量解雇と賃下げ、「聖域なきリストラ」の強行で一切の矛盾を絶望的に突破しようとしている。
 この中で、帝国主義ブルジョアジーの政治委員会である麻生政権が、支持率10%台に低迷し、政権運営もままならない状況にあり、政治危機を深めていたことは、支配階級にとってゆゆしき事態だったのだ。麻生では総選挙は闘えない、と「麻生降ろし」の動きが強まっていた。「かんぽの宿」問題が噴出し、郵政民営化そのものの破産が突きつけられていた。定額給付金をめぐって、衆議院での再議決には加わらないと小泉元首相が言明し、「造反」がどこまで出るかが取りざたされていた。
 まさにこういうタイミングで小沢の秘書逮捕が敢行され、政治情勢は一変したのだ。そしてそれを境に、民主党が防戦に回っただけでなく、自民党内の「麻生降ろし」の動きもぴたりと止まった。検察が時の政権の直接の利害の道具としてフルに権力を行使するという前代未聞の事態だ。そして、新聞は連日、検察当局のリークに沿った情報を垂れ流し、権力の意のままに情報操作を行った。
 そして、元警察庁長官の漆間内閣官房副長官が、オフレコの会見で「(捜査は)自民党には波及しない」と発言した。二階経済産業相や森元首相以下多数の自民党議員が西松建設から献金を受けてきたこと、しかも政権政党である自民党の方が職務権限を持っていることが明らかなのに「自民党には波及しない」と言うのは、この捜査が民主党をたたくために発動されたことを自己暴露するものだ。漆間は、樋渡検事総長らと直接的なパイプがあり、連携していることも明白だ。
 今回の小沢・民主党への攻撃の背後には、小沢の「日本改造計画」=国連中心主義と一連の対米対抗的言動があった。最近の「在日米軍は第7艦隊で十分」という小沢発言は、現在の米軍再編を否定するような露骨な対米対抗性をエスカレートさせたものだ(とは言え、実際に小沢政権になっても単純に日米同盟破棄となるわけではない)。また、クリントン米国務長官来日時に面談を求められて小沢が拒否したこと(後に会見)も、米軍再編や米国債購入などについて米側から言質を取られないように「一線を画す」態度の現れだった。日帝支配階級と麻生は、小沢発言に対する米帝の一定の「意思」をも受けて、小沢への攻撃を早めたとも言える。
●プロ独こそわれわれの回答
 この一連の事態に対し、日本共産党は、ここぞとばかりに小沢・民主党「批判」を満展開しているが、検察の異様なまでの政治的捜査についてはまったく言及せず、事実上検察側に唱和し尻押ししている。そこには、支配階級の分裂と暗闘という見方も、統治能力の崩壊という見方もなく、検察庁とともに現体制を維持することに腐心する腐敗した姿がある。「資本主義の枠内での民主的改革」とは、大恐慌下で、絶望的にあがく支配階級と一体化することにほかならない。
 だが事態は麻生の思うように整合的に進んでいるわけではない。権力・ブルジョアジー内部の意思も一つにまとまらず、動揺と分裂を拡大している。日帝の政治危機はこれからますます激化する。
 われわれの回答は、ブルジョア独裁に対して、プロレタリアート独裁を対置する、プロレタリア革命への闘いに決起するということである。「生きさせろ!」ゼネストに立ち上がり、資本家階級を打倒しよう。動労千葉のストを先頭にした3・20闘争は、その第1歩をしるした。麻生・御手洗打倒へ今春闘争の爆発を切り開こう。