2009年2月23日

〈焦点〉 大恐慌に無力、保護主義へ オバマの景気・金融対策

週刊『前進』06頁(2380号3面3)(2009/02/23)

〈焦点〉 大恐慌に無力、保護主義へ
 オバマの景気・金融対策

 2月半ばに米帝・オバマ政権の景気対策と金融安定化策、総じて恐慌対策がほぼ決まった。鳴り物入りで事前宣伝されたものの、その経済効果はきわめて薄い。
 景気対策は約7870億㌦(約72・5兆円)で、GDP比では5・8%弱となった。しかし、30年代のニューディール政策全体のGDP比11%に比べても半分以下にすぎない。しかも全体の3分の1が減税だ。減税は家計・企業の貯蓄や借金返済に充てられる見込みで、景気刺激効果はさらに弱まる。米議会予算局は「需要不足は年1兆㌦」と試算している。こんな対策では個人消費や企業投資の急降下は食い止められない。
 それに景気対策の中には雇用の増大策はない。ニューディール政策のWPA(就業促進庁)は政府が直接に雇用するものだったが、そのGDP比だけで5・7%に上った。オバマ景気対策はニューディール的装いをとりつつ、むしろ「政府が350万人雇用創出」と称し、労働者に対する階級戦争を仕掛けることに核心がある。
 金融安定化策はもっと破産的だ。もともと昨秋の金融安定化法は金融機関の不良資産を買い取る目的だった。しかし、不良資産は証券化商品の形をとっており、しかもそこにCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が張りついていて価格すら確定できない。このため金融機関への資本注入に変更された。金融安定化法に基づく3500億㌦はすでに1月までに使い果たされた。しかし金融危機は一向に収まらず、金融機関の貸し渋りは強まるばかりだ。
 そこで再び米帝は不良資産の買い取り策を迫られた。しかし、今回決まったのは「官民共同の投資ファンドによる不良資産の買い取り」である。要するに政府としてもうこれ以上カネを出せないから、民間から資金を募るというのだ。しかし、どうやって民間から資金を集めるのか、いくら不良資産を買い取るのか、なんの具体策も出されていない。
 絶体絶命の危機にありながら、米帝ができることはこの程度のことだ。逆に、今回の恐慌対策は米財政赤字をさらに膨張させ、ドル暴落を切迫させるだけである。米帝がなすすべがなくなったという点でも、世界金融大恐慌は今一つ新しい局面に突入しているのだ。
 また、景気対策の中に「バイ・アメリカン(米製品買い)」条項が盛られた。公共事業には米国製の工業品の使用が義務づけられた。「国際協定を順守」と付帯条項が付けられたが、なんの意味もない。米製品を優先購入した後に仮に他国がWTOに提訴したとしても、その判定には時間がかかり、実害はないからだ。
 米帝がこういう保護主義にかじを切ったのは超重大事態だ。公共事業に限ったものではあるが、額の多少の問題ではない。保護主義は他帝国主義国の対抗措置、報復措置を必ず引き起こす。それは世界経済を収縮させるとともに、分裂化とブロック化を招く。だから、保護主義こそ世界大恐慌を後戻りのないものにする。30年代がそうだった。帝国主義はついに、1929年を超える大恐慌に突っ込んだのだ。この大恐慌をプロレタリア革命に転化する情勢が一段と進んでいるのである。