2008年12月 8日

〈焦点〉 オバマ新政権は戦争内閣だ 2大政党制突破する闘い

週刊『前進』06頁(2371号3面2)(2008/12/08)

〈焦点〉 オバマ新政権は戦争内閣だ
 2大政党制突破する労働者の闘い

 「オバマの戦争内閣」——ウォールストリートジャーナル11月28日付社説のタイトルだ。米金融資本の代表紙が、ゲーツ国防長官の留任とジョーンズの国家安全保障担当補佐官への指名を歓迎し、「戦争内閣」と名づけたのだ。
 ゲーツは、米軍3万人イラク増派を立案・実行した。しかし、イラク戦争の泥沼化は解決せず、結局、市街地爆撃などイラク人民虐殺をエスカレートしていった。
 ジョーンズは典型的な軍産複合体代表だ。NATO最高司令官を退任して、米商工会議所に入り、07年7月にボーイング社の取締役となった。08年5月に大石油企業シェブロンの取締役になった。
 政権の要である首席補佐官にはラーム・エマニュエルが指名された。彼の父親はイルグンのメンバーだ。イルグンとは、パレスチナ人を大量虐殺して難民の波を作り出し、空き地になった町や村を乗っ取ってイスラエル国家を作る計画を実行した白色テロ組織だ。彼自身もイルグンを賛美する極右であり、イスラエル軍に志願し、レバノン侵攻を担っている。
 エマニュエルを軸に進めるオバマの「中東和平政策」とは、パレスチナ人民に全面降伏を要求し、弾圧と侵攻をさらに凶暴化し、そしてイスラエルのイラン核施設爆撃などを推進するものだ。
 新国務長官ヒラリー・クリントンは、強硬に軍事力行使を主張し、米軍増強法案などを推進してきた。またイスラエルの軍事侵攻の強力な支持者だ。
 世界金融恐慌の中で最も重要な経済閣僚は、金融資本への徹底した規制緩和・労働者攻撃を行ってきた者たちで構成されている。
 財務長官にはニューヨーク連銀総裁のガイトナーを、行政予算局長にはクリントン時代の大統領経済諮問委員だったオルザクを起用した。両者ともルービン元財務長官系で、一緒に金融規制緩和をやってきた。
 また、国家経済会議の委員長に指名されたサマーズはルービンの後任の財務長官(1999〜2001年)として銀行と証券の垣根を取り払う規制緩和を行った。オバマの経済閣僚全員が、今日破裂している天文学的な金融バブル、金融詐欺を作り出した張本人だ。
 以上のように、新政権の構成は、オバマが戦争拡大・大軍拡と金融資本救済=労働者への犠牲転嫁の政策を、公々然と開始したことを示している。
 「チェンジ」を叫んで登場したオバマが、ブッシュの国防長官をチェンジするどころか、そのまま留任させたのだ。また、ブッシュの金持ち減税の撤廃を語っていたが、これも存続を決定した。
 確かに、歴史上のどの大統領も公約を破った。だが、今回ほど急速に、手のひらを返すように露骨に破ったことはない。こんなやり方をすれば、必ずイデオロギー支配の危機をもたらすからだ。
 だが現在、アメリカ支配階級には他の選択肢は残っていない。資本主義始まって以来の危機に直面し、民主・共和の「対立」の形を作っている余裕などないのだ。
 このオバマの身もふたもないやり方は、オバマ支持運動を推進してきたAFL−CIO(米労働総同盟産業別組合会議)、CTW(勝利のための変革)の体制内労働運動の権威に決定的な打撃を与えている。
 もともと、今回の選挙では、予備選の段階から2大政党制と民主党を支持する体制内指導部に対する階級的潮流からの批判が激しく展開されてきた。資金源をウォール街とするオバマが労働者の敵だということは最初から明らかだった。パキスタン爆撃を主張するなど、「イラク戦争反対」のインチキも明白だった。
 そして、すでに2006年の選挙後の民主党の「裏切り」を全人民的に経験していた。
 民主党は、ブッシュ批判票を集めて上下両院で絶対多数を占めたにもかかわらず、戦争拡大を推進した。AFL−CIOやCTWの推薦を受けたのに、組合側が要求していた労組破壊攻撃防止の立法措置は棚上げだ。民営化・労組破壊、社会福祉破壊を率先して進めた。労働者人民のエネルギーを共和、民主両党の偽の「対立」の中に閉じ込めるシステムは、破綻を開始していたのだ。
 何よりも、労働者階級が自分たち自身の力への自信を回復したことが2大政党制を打ち破る挑戦の基礎になった。
 5月1日、ローカル10(第10支部)の発議に基づいてILWU(国際港湾倉庫労組)の労働者はイラクからの即時撤兵を求めて西海岸全29港を封鎖し、イラク港湾労組の連帯ストをかちとった。
 その広範な影響力を示している例が、このかん一貫してILWUローカル10と行動を共にしてきた「反戦の母」シンディー・シーハンさんの下院議員選挙闘争だ。彼女は、体制内「左派」の「オバマ批判は運動を狭くする」という非難に屈せずにオバマ批判を貫いた。結果は、初挑戦で16%の得票率、4万5千票で大健闘だった。しかも民主党の中で最も選挙に強いペロシ下院議長との真っ向勝負の結果だ(ペロシ20万票、共和党候補2万9千票)。
 職場・生産点からの労働者の決起で、体制内労働運動と激突し、オバマを打倒して革命への道を切り開こう。
 労働者階級が歴史の前面に登場する時代が来た。革命の時代だ。国際連帯を強め、共に闘おう。