2008年12月 1日

裁判員制度への怒り 銀座に響く 600人のデモに熱い共感

週刊『前進』08頁(2370号7面1)(2008/12/01)

裁判員制度への怒り 銀座に響く
 裁判員制度はいらない!大運動
 600人のデモに熱い共感
 “なりたくない、廃止しかない”

 「人を裁くことを強制するな」「裁判員制度は現代の『赤紙』だ」。裁判員制度への怒りのシュプレヒコールが都心に響き渡った。11月22日、東京・銀座で裁判員制度廃止を訴える労働者、学生、弁護士、市民ら600人のデモが闘われた。弁護士や学者たちが呼びかける「裁判員制度はいらない!大運動」が主催した。最高裁が11月28日に「あなたは裁判員候補者名簿に記載されました」という通知書を30万人に一斉に送付し、5月21日に裁判員制度を開始しようとしていることへの先制反撃となった。
 「ストップ裁判員制度」と赤地に白く大書した鮮やかな横断幕を先頭にしたデモは、最高裁のある三宅坂から赤坂見附を通り、首相官邸前で怒りをこめてひときわ大きな声で麻生太郎首相を弾劾、新橋から数寄屋橋交差点に向かった。
 「大運動」呼びかけ人や「憲法と人権の日弁連をめざす会」の弁護士が宣伝カーから訴えた。「裁判員制度は国家による苦役の強制であり、憲法違反。裁判への人民動員は戦争への動員、徴兵制への道だ。死刑を含む判決に加担することはできない。裁判員を拒否しよう。反対の声を広範に上げれば阻止できる」
 真剣な訴えに街頭から「そうだ」「裁判員にはなりたくない」「拒否できないなんて困る」という声が返される。舗道からデモに加わる青年も現れた。「がんばって!」と手を振って応える人も多い。商店主が店から出てきて「私も裁判員制度に絶対反対だ」とデモ隊に告げる。デモ中に沿道で配布した「ストップ!裁判員制度」のビラは2500枚。かつてないことだ。
 デモは圧倒的な支持と共感を得て銀座・数寄屋橋交差点を席巻し、常磐橋公園まで全行程5・7㌔、たっぷり2時間に及んだ。「裁判員制度絶対反対。廃止しかない」という声は今や世のほとんどを占めていることが示された。

 第1章 東京集会 「ノーの声上げよう」

 デモに先立って「さあ廃止だ!裁判員制度 11・22東京集会」が社会文化会館で行われ、640人が結集した。
 「大運動」呼びかけ人で交通ジャーナリストの今井亮一さんは開会あいさつで「6月13日に日比谷公会堂で1500人を集めて裁判員制度反対集会をやったことが世論に流動を起こした。社民党や共産党が裁判員制度見直し・延期へ態度を変えた。最高裁などが必死の巻き返しに出ているが、制度に人民が参加しなかったら成り立たない。ノーの声を大きく上げよう」と訴えた。
 作家で臨済宗僧侶の玄侑宗久さんはビデオレターで登場し、「これまで日本では人が人を裁くことを拒否してきた。人を裁くのは神かそのなり代わりだった。ところが裁判員制度が導入されると、法や国家に市民が合体させられ、市民が裁判にけちをつけられなくなる。怖い世の中になる」と批判した。
 新潟の高島章弁護士が新潟地裁と新潟地検の前でデモとシュプレヒコールをやると11月29日の行動を予告。続いて高山俊吉弁護士がコーディネーターとなってパネルディスカッションが行われた。パネリストは漫画家の蛭子能収(えびすよしかず)さん、元小学校教員、FM放送のパーソナリティ、台東区の町内会長の4人。蛭子さんは市民が裁判に参加する怖さを訴えた。元教員は教育基本法改悪などと並ぶ教育現場にかけられた戦争への攻撃だと指摘した。パーソナリティは「死刑判決を出してよいのか」という疑問が模擬裁判の放送で出されたことを紹介した。町内会長は、国家が「義務」と押し付けで人民を戦争に動員し、自らも軍国少年になった苦い体験を踏まえ、「裁判員制度に絶対反対だ」と強い意思を表明した。
 最後に一言ずつデモのプラカードに意見を書いた。「迷惑だ。店がつぶれる」「知れば知るほど怖い」「国家による殺人(死刑・戦争)に加担させられる裁判員制度反対」「それでも僕は裁判員になりたくない」。参加者は「そのとおり」とうなずき、拍手で応えた。
 最後に「大運動」の事務局長である佐藤和利弁護士がまとめと行動提起を行った(要旨別掲)。「私たちの決意は現代の赤紙の絶対阻止と制度の廃止です。権力が攻撃を強めるほど運動は一層強化される。裁判員制度廃止へ、労働者、市民、自営業者、弁護士は一緒に闘おう」と訴えた。また連合が日本経団連とともに裁判員制度を推進している状況を覆す鍵を握っているのは労働者、労働組合だと強調し、「ぜひ、春闘のスローガンに『裁判員制度はいらない』を加えてほしい」と提案した。「闘いを積み上げ、3—5月に大集会はもとより、ストライキや一斉休業、署名などあらゆる闘いを展開しよう」と呼びかけると、参加者一同が大きな拍手で応えた。佐藤弁護士の「やればできる! 政府の言いなりになる従順な民ではないことを態度で表そう」との行動提起を受け、勇躍デモに出た。
 11・22東京行動をはじめ「さあ廃止だ!裁判員制度 11月全国一斉行動」は、5月裁判員制度発足を既定方針のごとく強行しようとする最高裁、麻生政権・法務省、日弁連執行部に決定的な打撃を加えた。国家権力は追いつめられている。「裁判員制度はいらない!大運動」の提起する4月の大集会(東京)の成功をかちとり、裁判員制度廃止の決定打としよう。
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 第2章 労働者の闘いが鍵 「大運動」事務局長 佐藤和利さんのまとめ

 11月28日、最高裁は全国一斉に29万5千人の裁判員候補者に勝手に名簿登録の通知を発送する。10月から10億円をかけてテレビCMと新聞折り込み広告を開始した。政府、最高裁がどんなに金を使って制度の推進を画策しようとも反対の声は鎮まらない。反発と抗議の声は広がっている。
 本東京集会をはじめ全国一斉に裁判員制度反対の集会やデモなどが取り組まれている。私たちの決意は「現代の赤紙」絶対阻止と裁判員制度の廃止です。
 来年5月21日からの制度の実施は既定方針として変更はないと強硬姿勢を示して、反対の声をあきらめさせようと、推進勢力も必死だ。昨日、最高裁長官を退官した島田仁郎に「裁判員制度の準備はかなり整ってきた」「裁判員制度の広報をつうじて裁判所と国民の距離が近くなった」と記者会見させ、新長官には、最高裁事務総局の中で司法改革を推進してきた竹崎博允東京高裁判事を異例の14人最高裁判事飛び越しで就任させ、制度開始・定着を狙っている。
 よいではないか。権力が攻撃を強めるほど私たちの運動は一層強化される。本集会の成功が制度廃止の確信になった。請願署名、ビラまきに取り組み、集会や学習会を開こう。
 「大幅賃上げ、首切り反対、非正規職撤廃」など春闘のスローガンに「裁判員制度はいらない」を加えてほしい。連合は日本経団連とともに裁判員制度を積極的に推進している。労働者の闘いが鍵を握っている。
 3—5月に大集会はもとより、ストライキや一斉休業、署名などあらゆる闘いを展開しよう。やればできる! 政府の言いなりになる従順な民ではないことを表そう。