2008年11月24日

〈焦点〉 大恐慌に無策の金融サミット ドル基軸性巡り米欧対立

週刊『前進』06頁(2369号3面4)(2008/11/24)

〈焦点〉 大恐慌に無策の金融サミット
 ドル基軸性巡り米欧対立

 11月14〜15日に金融サミットが開かれた。帝国主義国だけでなく、ロシア、中国、韓国、インド、ブラジルなど20カ国首脳が集まる初の会議(G20)となった。しかし、資本家階級は「百年に一度の危機」と認識していながら、有効な対策を持ち合わせていないことを露呈した。むしろドルの基軸性をめぐって米欧が対立するなど、帝国主義間争闘戦の激化を浮き彫りにするものとなった。G20をも機に、帝国主義を打倒する情勢はいよいよ深まっていく。
 金融サミット首脳宣言は、金融安定化のために「あらゆる措置」を取るとした。だが、どんな措置をとっても世界金融大恐慌は押しとどめられない。すでに金融市場への大量の資金供給、銀行への公的資金の投入などが実施されてきた。しかし、世界的な信用収縮は一段と深刻化している。銀行間取引で資金を供給しているのは、各国の中央銀行ぐらいだ。民間の金融機関は逆に貸出資産を圧縮している。銀行による貸し渋りと貸しはがし(融資回収)が世界中で起きている。貸し渋りは企業・家計に破壊的な作用を及ぼす。こうなると、もはやどういう措置をとっても無駄だ。
 現在の大恐慌の一因となった信用格付け会社やヘッジファンドの動きを監督し規制することも議題となった。しかし、米帝が米金融資本の利益を守るために反対し、規制は決めなかった。帝国主義は80年代以降、金融投資・投機でしか延命できなくなり、格付け会社やヘッジファンドは好き放題の投機を繰り広げてきた。そういう帝国主義の末期性こそが世界金融大恐慌を引き起こしている。金融規制とかではどうにもならない。
 金融サミットの合意で具体性を持つのは、「財政出動策を取る」と確認したことぐらいだ。しかし、すでに全帝国主義国の財政が破綻しており、30年代のような「ニューディール」は再現できない。それでも大規模な財政出動策を取るのなら、国債増発と金利上昇、通貨価値の暴落を引き起し、大恐慌を促進してしまうだけだ。
 さしたる具体的な確認がなかった一方で、ドルの基軸性を維持するのかどうかを巡り米欧間で激しく対立した。仏サルコジ大統領は金融サミット直前に、「米ドルはもはや世界の基軸通貨ではない」と明言した。帝国主義国首脳がこのように言うのは歴史的に初めてだ。欧州帝国主義は、基軸通貨ドルを支えるIMFなどの抜本的改革さえ主張した。それほど米経済とドルが没落してしまったのだ。これに対し米帝は、ドル本位制にしがみつくのに必死になった。
 こうした対立が始まったこと自体、ますますドルを暴落させていくものとなる。そして、基軸通貨が吹っ飛び、かといってユーロがそれに取って代わることもできず、世界経済が大崩壊していく。そうした過程が始まったのだ。
 日帝・麻生はサミット前に「ドル基軸維持に努力する」との異例の声明を出した。日帝は通商面で米帝と対立していながら、通貨面ではドルにすがるしかない。帝国主義としてどうしようもない弱さをさらけだした。日帝打倒の展望もいよいよ鮮明になっていく。