〈焦点〉 組織的なクーデター的突出 田母神空幕長論文事件弾劾
〈焦点〉 組織的なクーデター的突出
田母神空幕長論文事件を弾劾する
●参考人質問で反動的開き直り
航空自衛隊前幕僚長・田母神(たもがみ)俊雄による「侵略戦争正当化」論文と、辞職拒否は、超重大な事態だ。世界金融大恐慌の中で末期的な危機に立つ日本帝国主義の体内から、それも武装した実力部隊である自衛隊のトップから、既成の秩序・価値観を真っ向から打破することを呼びかける人間が出てきて、しかも「処分」に対し開き直っている。個人的な意見表明にとどまらず、組織的な広がりをもったものであり、いわば軍隊内からの反革命クーデターともいうべき性質のものだ。
田母神は、11日の参議院外交防衛委員会での参考人質問を自分の見解の宣伝の場と心得、言いたい放題の放言を繰り返した。与野党の質問も、田母神を打倒はおろか批判・弾劾すらできず、その引き立て役でしかなかった。明らかに田母神はこの質疑をとおして自衛隊を丸ごと獲得し、労働者人民の中にその反革命思想を流布することを狙ったのだ。
論文を募集した「アパグループ」の元谷外志雄代表は、田母神の求めに応じて「小松基地金沢友の会」を立ち上げるほどじっこんの間柄だ。田母神は、元谷を空自小松基地のF15戦闘機に体験搭乗させたりしている。そしてこのアパグループの懸賞論文に、田母神など94人もの自衛官が応募し、そのうち62人が小松基地所属の自衛官だというのだ。
●田母神の思想百も承知で抜擢
そればかりではない。田母神は統合幕僚学校長時代にも、「歴史観・国家観」のカリキュラムを新たに設け、今回の論文と同様のおぞましい侵略戦争美化の主張を満展開していた。参考人質疑で、田母神は論文応募を指示したのではないかという質問に対し「私が指示すれば1000を超える数が集まる」と答弁した。つまり、田母神の反動思想は空自全体に浸透していることを豪語しているのだ。田母神は、03〜04年にも4回にわたり、隊内誌「鵬友」に今回と同じ趣旨の自説を書き記している。
そういう思想の持ち主であることを百も承知で、安倍政権の時(防衛庁長官は石破、事務次官は収賄の罪で5日に実刑判決を受けた守屋だ)、空自のトップに抜擢(ばってき)したのだ。今回、田母神は空幕長の任を解かれ、辞職を求められてそれを拒否する際、二人の元首相の名をあげたという。石川出身の森であり、極右の安倍である。後ろ盾がいるのだということを押し出しているのだ。
●旧帝国軍隊の復活を目指す
田母神は参考人質疑で「書いたものはいささかも間違っているとは思わない」「『日本の国は良い国だった』と言ったら、解任されてびっくりした」「日本をいい国だと思わなければ、国は守れないと思った」などと言い、論文の立場を全面的に開き直った。つまり、柳条湖事件(31年)から盧溝橋事件(37年)〜真珠湾攻撃(41年)〜敗戦(45年)に至る15年戦争(中国・アジア侵略戦争と対米英帝国主義戦争)の全過程の日本軍が「被害者」であり、「正当な行為」であったということを自衛隊の国家観、歴史観として打ち立てるのが正しい、と国会の場でまくし立てているのである。
また、「これほど意見が割れるようなものは直した方がいい」と言って憲法改悪を主張し、「集団的自衛権も行使し、武器を堂々と持とうというのが本音か」と聞かれて「そうすべきだと思う」と答えた。
田母神は「イラクでの自衛隊の活動は違憲」という名古屋高裁判決について「そんなの関係ねえ」と言ったが、要するに行政も司法も無視して軍隊の論理で突き進むのが正しいと主張し、扇動しているのだ。戦前の帝国軍隊の復活を目指しているということだ。
そして、こういう反動的突出に対して国会もまったく無力であることを示した。また、麻生政権は本音では田母神と同様の思想を持っているため、完全に容認している。11日の自民党防衛関係合同会議では、田母神を容認する発言が噴出している。まさに元凶は安倍であり、麻生だ。
●日帝・麻生政権を打倒しよう
一連の事態は日帝のイラク・アフガニスタン侵略戦争への派兵、改憲に向かっての攻撃の中で起こっている。一方では派兵された兵士の自殺や、上官指揮のもとでの残酷なリンチ殺人が発生している。軍服を着た労働者である兵士の反乱の条件が満ちてきている。
重要なことは、これは日帝のすさまじい危機の表現だということだ。田母神の目指している道は、1945年にいったん完膚無きまでにたたきのめされた道であり、日本の圧倒的多数の労働者人民が二度と繰り返してはならないと考えている道である。また、朝鮮・中国・アジア人民が絶対に許さないものである。
日帝にとって憲法改悪と自衛隊の帝国主義軍隊化は、田母神のような思想でしか切り開かれないことも示している。
だから労働者階級にとっては、「文民統制を徹底せよ」とか、「国益を損なうな」というような対応では、問題にならない。極右クーデター攻撃に対しては、帝国主義そのものを打倒せよ、の闘いでこたえなければならない。体制内労働運動を打倒し、階級的労働運動の前進で、「攻めの改憲阻止闘争」を強力に推進しよう。麻生政権打倒、対テロ新特措法(給油新法)延長法案を阻止しよう。