2008年11月 3日

『農地収奪を阻む』 三里塚反対同盟 萩原 進著

週刊『前進』08頁(2366号5面3)(2008/11/03)

『農地収奪を阻む』
 三里塚反対同盟 萩原 進著
 国家権力と絶対非和解で闘う反対同盟農民の思想


発行/編集工房 朔
発売/星雲社
定価/本体11800円+税
四六判272㌻

 三里塚闘争の勝利に向かって、決定的な武器になる本が出版された。
 平行滑走路敷地内に農地を持つ萩原進さん(三里塚芝山連合空港反対同盟事務局次長)が著した本書は、国家権力が空港計画を突如ねじ込んできた時から43年間、不屈の闘いを貫いてきた農民の手になる三里塚闘争の記録である。同時に今日の農業・農民問題、労農同盟の問題に、闘う農民の側から切り込んだ意欲的な論考である。これまで三里塚闘争を闘ってきた人も、初めて三里塚に接する人も、本書によって闘う三里塚農民の魂に触れることができるであろう。
 本書は、3部に分かれている。
 まず第1部は、萩原さんによる闘いの回想と総括。開拓時代の生い立ちから、闘いに加わっていく過程、闘いの中で突きつけられた国家権力の暴力、闘う農民の内部での路線闘争、裏切りとの闘い、そして今日の市東孝雄さんの農地強奪攻撃との闘いに至るまで、縦横に語り尽くされている。「貧乏な開拓農民など札束でひっぱたけばたたき出せる」という帝国主義権力の傲慢(ごうまん)な攻撃を打ちのめしていることは痛快だ。
 「農地収奪を阻む」という書名に示されているように、43年間の懐旧談ではなく、今現在の敵の攻撃に勝ち抜く実践的な総括になっている。
 第2部は「崖(がけ)っぷちの食と農」と題する二つの農民座談会。最初の座談会に登場する坂本さんと小川さんは典型的な米作農家で、坂本さんは秋田県の八郎潟干拓で移住した大潟村の農民だ。座談会は、今日の日本の農業がトヨタなどの大企業のために徹底的に切り捨てられている現実を告発し、これとの闘いに三里塚闘争が光を与えていることを明らかにしている。ミニマムアクセス米をめぐる事件など、「食と農」の問題が帝国主義の農業・農民切り捨ての矛盾として爆発的に露呈している今日、これに対する階級的な解答を導き出すための問題提起がなされている。
 また、産直座談会は、今農地収奪の矢面に立たされている市東さん、芝山町菱田地区で孤軍奮闘している鈴木謙太郎さんと萩原さんの3人が、無農薬・有機栽培で産直運動を行っているわけについて語りあっている。闘いと生産と生活が一体となった3人の意見は、きわめて示唆的だ。
 第3部は、「労農連帯」がテーマとして据えられている。まず、動労千葉前委員長の中野洋さんと萩原さんの対談。そして萩原さん自身による労農同盟論の書き下ろし。
 中野さんは、革命的左翼が三里塚に登場するごく初期から、千葉県反戦青年委員会の議長として深くかかわってきた。ジェット燃料の貨車輸送の攻撃に対し、動労千葉は順法闘争とストライキで立ち上がった。三里塚空港の開港阻止のために首をかけて労働者が決起する、そして農民がこの闘争支援に大挙駆けつけるという、絵に描いたような労農連帯が実現した。
しかもそれは、反革命カクマルとの組織をかけた闘いだった。当時の動労千葉地本は、「三里塚と一線を画する」と言って統制処分の攻撃をかけてきたカクマルと闘い、分離独立をかちとって、今日の動労千葉の礎を築いたのだ。
 「反対同盟と動労千葉は車の両輪」と言われた。歴史家・羽仁五郎は「三里塚は現代のパリ・コミューンだ」とたたえたが、まさに反対同盟と動労千葉の連帯は、世界の革命運動史上にかつてない地平を切り開いている。対談では、この闘いの歴史とその意義が鮮明にさせられている。お互いに助っ人として闘ったのではなく、自分たちの闘争として闘ったという点で共鳴しあっている。
 最後の「労農同盟で世の中変えよう」という論考は、農地法を使って市東さんの農地を取り上げる攻撃の背景には政府・財界の農業つぶし政策があること、農民と資本家階級は非和解的関係で、労働者階級と連帯してこの社会を転覆しなければならないことを訴えている。
 本書は、三里塚闘争の真実を知り、近づくための不可欠の書だ。多くの労働者、特に青年労働者学生に読んでほしい。
 (坂上潤一)