〈焦点〉 「テロ指定」解除と日米争闘戦 北朝鮮政策の根幹は不変
〈焦点〉 「テロ指定」解除と日米争闘戦
北朝鮮政策の根幹は不変
米帝ブッシュ政権は10月11日、北朝鮮に対する「テロ支援国家指定」なるものを解除した。ブッシュは6月段階ですでに指定解除の意向を米議会に通告しており、解除の方向自体は「既定路線」だった。だが実際の決定に踏み切ったことは日帝にとって突然の「頭越し」の事態であり、現在の日米関係(=日米同盟)の危機と空洞化、日米争闘戦の深刻さを象徴的に突き出している。
イラク・アフガニスタン侵略戦争で泥沼の危機に追い詰められている米帝は、この間、対北朝鮮政策では一定の融和的対応をとることを余儀なくされてきた。6月の解除方針の表明に続く今回の決定は、直接的には政権末期のブッシュが、核再処理施設の再稼働などの動きも見せていた北朝鮮を引き止めながら6者協議の枠組みを維持し、任期中の「外交的成果」を優先した結果でもあった。
しかし、現実には米帝は核や人権問題で北朝鮮に引き続き多くの制裁を加えており、今回の指定解除はあくまでも「象徴的」な意味合いが強いものでしかない。米帝は、残存スターリン主義としての北朝鮮の体制転覆と朝鮮侵略戦争の野望、「拡大戦略」とグローバリズム貫徹の政策を放棄したわけではまったくないのである。
むしろ今回の決定にはらまれた大問題は、日米同盟の危機ということだ。解除決定を直前に連絡されて衝撃を受けた日帝は、中川財務・金融相や中曽根外相らが「拉致被害者の家族にショック」「認められない」などと米帝に抗議を表明したが、国務長官のライスは「解除は形式的な問題。まったく意味のないことだ」と、まともに取り合わない態度に終始した。
米帝は今日、イラク・アフガニスタン侵略戦争の泥沼化に加え、世界金融大恐慌爆発の震源地として歴史的没落と資本主義体制崩壊の危機にあえいでいる。そこからの延命をかけて、国内での労働者階級人民に対する階級戦争と、資源や市場をめぐる帝国主義間・大国間の争闘戦を、より一層激化させてきている。その場合、日本の労働者人民の意思と闘いにより9条改憲もまだ展望のない日帝の無準備性を突いてきているのだ。
米帝内では今や「日米同盟不要論」さえ台頭しており、ライスなどは米中関係を軸とした現在の6者協議を「北東アジア平和・安全保障機構」(NAPSM)に発展させ、それをNATO(北大西洋条約機構)的なものとしてはどうかといった発言さえ公然と行っている(「フォーリン・アフェアーズ」7〜8月号)。11月15日にワシントンで行う世界20カ国・地域による金融緊急サミットの方針も、G8サミット議長国・日帝などをらち外にして、ブッシュと仏大統領サルコジがアメリカで会談して発表したことであった。
こうした日米争闘戦の深刻化と日米同盟の危機にあえぐ日帝・麻生は今、給油新法延長やアフガニスタン本土への部隊派兵の策動に躍起となっている。世界金融大恐慌の爆発の中で分裂と対立を深め、階級戦争と侵略戦争・世界戦争で延命を狙う国際帝国主義を、今こそ万国の労働者の団結の力で打倒するために闘う時である。