世界金融大恐慌 資本主義崩壊と革命の時代 ウォール街大デモ
11・2労働者集会 UNITE!
世界金融大恐慌 資本主義崩壊と革命の時代
ウォール街大デモ 「資本家救うな!刑務所行きだ!」
世界は革命情勢——これが現在進行している事態だ。単なる株価の暴落や金融危機の経済事象ではない。資本主義という社会経済組織の崩壊が始まったのだ。米ブッシュ政権が一度否決された金融救済法を通した。日本の国家予算に匹敵する70兆円で金融機関の不良債権を買い取るものだ。だが株価は再び下落、ニューヨーク株式市場は1万㌦の大台を割った。ブルジョアジーはさらなる暴落の不安におびえる。世界の資本主義を支えてきたアメリカ資本主義が音を立てて崩壊を始めた。(写真右=9月25日、NYウォール街で金融救済法に怒りを爆発させる労働者たち)
第1章 30年代をも超える危機
われわれは今、資本主義の倒壊の現場を現在進行形で目の当たりにしている。歴史的に言えば、資本主義はいったん第1次世界大戦と1917年ロシア革命で破産した。それを再建し、約1世紀にわたり支えてきたアメリカ資本主義が瓦解(がかい)を始めたのだ。
人類に未曽有の惨禍をもたらした第1次世界大戦(1914〜19年)。ヨーロッパは焼け野原となり、戦争、虐殺、伝染病、飢餓などで約6千万の人びとが死んだ。工場、農地、鉄道、道路も徹底的に破壊された。資本主義の中心だった欧州は瓦礫(がれき)の山となって劇的に没落した。世界革命の波が押し寄せた。ロシアでは世界最初のプロレタリア社会主義革命が勝利。ドイツなど欧州全域で資本主義の危機は深まり、革命運動が高揚した。
他方で戦場化を免れた米国は第1次大戦をとおして、資本主義国として類例のない成長を遂げる。数年で工業生産は2倍になり、世界の工業生産の半分を生産するようになった。14年には米国は35億㌦の海外負債を抱える債務国だったが、大戦後一挙に130億㌦の債権国になった。ニューヨークは世界の金融の中心地となった。存亡の危機に立つ資本主義世界を米国基軸で再建したのだ。
「永遠の繁栄」と呼ばれた資本主義の発展をおう歌していた米国を大恐慌が襲った(29年)。株価は8割下落し、1万の銀行が閉鎖された。工業生産の規模は6割弱に落ち込んだ。失業率は25%になり、4人に1人が路頭に迷った。
29年世界大恐慌は資本主義を根底から動揺させた。こうした中で33年に政権の座についたルーズベルト大統領は前代未聞の資本主義の救済政策を展開した。金本位制を停止し、産業を強力に統制した。巨大な公共事業を実施し、850万人の失業者を政府が雇った。さらに労働者の団結権と団体交渉権を認め、労働者の支持を得た。
30年代は米国の過去の歴史で最も激しい階級闘争の時代だった。自動車や鉄鋼労働者を組織したCIO(産業別組合会議)は、GM(ゼネラル・モーターズ)やUSスティールで流血のストを闘った。経営者たちは私立警察を雇い、大量の機関銃や催涙・嘔吐(おうと)ガスを購入した。CIOも共産党も社会党もニューディール政策に屈し、ルーズベルトと政治的同盟を結んだ。それは第2次大戦賛成にまで行き着く。
ニューディールは前例のない規模の資本主義救済の政策だった。だが、これは30年代の米国だからできたのだ。英国に代わり世界の盟主なった新興帝国主義の米国には世界の金の半分以上が集まっていた(実際に本格的な景気の回復は第2次世界大戦による軍需の増加による)。米国は、第2次も勝ち抜き、第1次大戦で破産した資本主義を1世紀近く支えてきた。そのアメリカ資本主義が崩壊を始めているのだ。
第2章 基軸通貨ドルの暴落へ
今度こそ資本主義の最期が始まった。今の米国にはニューディール政策を行う力はまったくない。米国に代わって資本主義を再建できる力量を持つ資本主義国もない。資本主義はもう絶対に立ち直らないのだ。
金融大恐慌の発端となったリーマン・ブラザーズ倒産にしてもブッシュ政権は全力で対応しても破綻を阻止できなかったのだ。そもそも米政府がすべての民間会社を救済することは不可能だ。
危機に陥っているのは金融機関だけでない。自動車最大手GMの経営危機も深刻だ。GMの4−6月期の赤字は154億7100万㌦(約1兆5500億円)。6月末時点の債務超過額は570億㌦(約5兆7千億円)と天文学的な数字だ。経営破綻が現実味を帯びている。世界最強企業と呼ばれた電機・金融大手GE(ゼネラル・エレクトリック)ですら資本増強せざるをえない情勢だ。
7000億㌦(70兆円)という巨額の金融救済資金を投入しても問題は何も解決しない。そもそも住宅ローンの焦げ付き問題には直接の効果はない。住宅ローンの支払いが継続できない家庭はまだ数百万件も存在する。住宅ローンの焦げ付きは日増しに増加し、70兆円をはるかに上回る。金融機関が抱えている資産の価値がどこまで悪化するかはもはや誰にも分からないのだ。
売るに売れない不良債権を米政府はいくらで買うというのか。買取価格が救済する金融機関の「言い値」に近い水準になれば、損失リスクは政府に丸ごと移る。逆に価格が低水準に抑えられると金融機関は大幅な損失計上を迫られる。身動きが取れないのだ。
だいたい金融救済法は資本主義の自己否定だ。新自由主義とは弱肉強食ではなかったのか。ブルジョアジーは「弱い資本は強い資本に食われる」とうそぶいてきた。だがその最強の資本が次々破産しているのだ。ブッシュの泣き言を見よ。「論議している時間はない」「このままでは悲惨なことになる」——新自由主義をこのまま続ければ資本主義は瓦解すると告白しているのだ。ブッシュが演説するたびに株価が下落していく。
米政府が金融機関に投入を表明した公的資金枠は2兆㌦に迫る。こんなことを続ければ必ず財政は破綻する。米国の累積財政赤字は11兆㌦(1100兆円)を超す。それがわずか1年間で2兆㌦以上の赤字が増えるペースだ。公的年金や医療保険も加えた累積赤字は53兆㌦(5300兆円)を突破している(07年11月米会計検査院の報告)。国家丸ごと倒産に等しいものになっているのだ。
これはドル暴落を必ず招く。基軸通貨の崩壊は資本主義の歴史では前例がない。29年恐慌の比ではない事態が起きようとしているのだ。ドル紙幣が紙くずになる。そうなれば世界中の為替取引が止まる。世界貿易は急激に縮小し、米国債や米株価の暴落が各国に連鎖する。資本主義は破局だ。日本の外貨準備もほとんどドルだ。ドルが凍結状態になれば、日本は石油も食料も買えない。
だからドル防衛に必死なのだ。もはや米1国では対応できない。米欧日が共同で何十兆円ものドルを湯水のごとく市場に供給し、なんとか全面的な崩壊を免れているにすぎない。それでも金融収縮と貸し渋りは進行する。金融危機は実体経済の危機に進む。
第3章 「資本主義はもう死ね」
70兆円という膨大な税金投入をわずか1週間で決めようなど絶対に許されるものではない。70兆円はすべて労働者から搾り取ったものではないか。「税金を投入しなければ恐慌になって失業者が増え、労働者の生活が苦しくなる」などと言い訳している。
冗談ではない! これまで労働者を苦しめ、徹底的に搾り取り、ボロもうけした末に、行き詰まったからと救済し、もっと徹底的に労働者から搾り取ろうなどという魂胆に屈してなるものか。
金融救済法を主導したポールソン米財務長官はどんなやつか。99年から06年まで証券1位ゴールドマン・サックスのCEO(最高経営責任者)だった。05年度の報酬額は約40億円、政権入りが決まった06年は半年で約20億円。財務長官になる際に受け取った退職金は約500億円(誤植ではない)。しかも財務長官になったため無税だった。このポールソンに70兆円の使い道を白紙委任するのが金融救済法なのだ。
この恥知らずなブルジョアジーに対し、労働者階級の怒りが爆発した。ニューヨークのウォール街を始め、各地の連邦準備銀行前で一斉に労働者の抗議デモがたたきつけられた。「行動するなら今だ。今ならまだ救済策をめぐる議論に影響を及ぼすことができる。ウォール街でデモを」という1通のメールが米国中の労働者の街頭デモに発展した。
「われわれは家を失い、職を失ったのに、ウォール街を助ける必要はない」「救済するな! 刑務所にぶち込め」。ウォール街には怒りが噴出した。議員事務所には「反対票を投じよ」というメールや電話が殺到した。下院で修正前の法案に反対票を投じたのは民主党の議員が4割、共和党は7割に上った。
新自由主義は、労働者を徹底的に搾取し、ボロもうけした揚げ句の果てにパンクしたのだ。こんなやつらを救済する必要は毛の先ほどもない。資本主義はもう死ね! ブルジョアジーは全員くたばればいいのだ。少しでも救済し、立ち直ったら、もっと労働者を苦しめるだけなのだ。
これこそが新自由主義のもとで辛酸をなめ、また資本と非和解で闘ってきた米国の労働者の階級感覚であり、歴史認識だ。ブルジョアジーは、新自由主義の旗のもと「資本主義は弱肉強食だ。飢えさせれば労働者は一生懸命働く。社会保障制度で労働者は堕落した」などとうそぶいていた連中なのだ。
労働者の怒りと憎しみが米国の階級闘争の大地を揺るがしている。労働者階級の怒りという階級闘争の論理が「否決」情勢をつくり、経済事象を動かしている。大恐慌の爆発とは、純経済事象ではなく、階級闘争の問題なのだ。
労働者の怒りの爆発が恐慌過程で、打倒対象であるブルジョアジーを大混乱にたたきこむのだ。恐慌によって経済は縮小し、解雇・失業・賃下げで労働者は塗炭の苦しみにあう。労働者の生きるための闘いは生活防衛にとどまらない。困苦の根源である資本主義を打倒する革命に行き着く。11・2労働者集会に結集し、世界の労働者とともに「資本主義を倒せ!」の大デモをかちとろう!
(片瀬 涼)