欧州で労働者が続々とスト 新自由主義への怒りが爆発
欧州で労働者が続々とスト
新自由主義への怒りが爆発 「生きるため」の賃上げ要求
第1章 金融大恐慌下全産業分野で職場から決起
世界金融大恐慌が破滅的な局面に突入し、ブルジョア支配階級は震え上がっている。資本主義の歴史的崩壊が始まったからだ。このなかで全世界の労働者階級は「生きさせろ」の怒りの叫びをあげて、大幅賃上げ要求を掲げ、青年労働者を先頭にストライキに立ち上がっている。
この決起は、昨年来サブプライムローンの破産が全世界的な金融危機として拡大・深化していったただ中で拡大してきた。昨年夏から半年におよび、30%賃上げを要求して長期ストを闘いぬいたドイツ機関士労組(GDL)を先頭に、イギリス郵便労働者の7月から10月にかけての賃上げ要求・首切り反対の物ダメ波状スト、10月から年末へのフランス交通労働者、公共企業労働者、公務員労働者の賃金・年金問題でのストと大デモ(95年のゼネスト以来といわれる)と続いた。
闘いの高揚は、今年に入り、金融危機が実体経済の収縮と世界経済の分裂に転化する中で、ますます全世界に拡大し、あらゆる産業部門、社会的領域におよんでいる。08年のドイツでは、機関士労組に引き続くベルリン交通労働者の39時間スト、そして公務員労働者・教育、医療・福祉労働者の全国的波状的ストライキ、郵便労働者の主要都市における集配ストとして展開した。そして、不況への突入が明らかになるなかで、IGメタル(金属労組)の自動車・電機労働者がストに立ち上がり、6〜7月のルフトハンザ航空労働者のストライキ、さらに金融恐慌で直撃されている銀行労働者の画期的決起を引き出すにいたった。
イギリスでは、4月に公立学校の3分の1が、賃上げ要求の24時間ストで閉鎖。この教職員労組の十数年ぶりの闘いに、40万人の公務員労働者がストライキで大合流。7月には、ロンドンの地下鉄労働者、バス労働者が、民営化による分断をのりこえる統一賃金要求を掲げて48時間のストライキ闘争を闘った。
フランスでは、大学民営化攻撃に反対する昨年末の大学キャンパス占拠闘争に続き、教育制度改悪反対を掲げた今年4月の高校生の全国的決起と各都市でのデモにこたえ、教育労働者・公務員労働者30万人が、5月に全国でストとデモに立ち上がった。さらに、6月国鉄労働者、9月には郵便労働者が民営化反対のストを行っている。
イタリアでも、7月から9月にかけて、鉄道労働者、航空労働者がストライキを闘っている。
第2章 全世界で体制内労働運動との分岐始まる
このように、新自由主義の強行と破綻にさらされて怒りを燃やす労働者は、資本と体制内労働運動指導部の一体となった攻撃、「闘えば会社がつぶれる」「賃上げは国際競争力をそこなうものだ」「不況のさなかに大幅賃上げなどとんでもない」などという攻撃を、いたるところで実力によって打ち破り、階級的な闘いに決起している。階級的労働運動を求めて新たな分岐が世界的な規模で開始されているのだ。
新自由主義への労働者の積年の怒りと闘争力の高まりは、世界各地の闘争におけるスト権投票の80〜90%という圧倒的高率に示されている。ロンドンのバス運転士組合では、反対がたった1票と報告されている。さらに、労働組合本部の妥結提案が現場労働者に拒否されている。資本とその手先=体制内労働運動指導部への怒りが爆発しているのだ。
闘争は、どこでも圧倒的にストライキという形態をとっている。いったんストに立ち上がった労働者は、自分たちの階級的な力に目覚め、自信を強めていく。ストライキをとおして、職場を回しているのがだれか、社会を動かしているのがだれかを階級的に自覚していく。ストライキを軸とする職場からの決起が階級的団結を固め、職場集会、ピケット、街頭デモ、連帯集会などとして発展し、職場を越え、企業の枠を越え、さらに国境を越えて、さらなる団結を求めて発展している。これが、初めて決起した労働者にとって巨大な共同の経験として主体化されていく。「今度のストで、ピケットを越えるスト破りは、私たちの職場では一人もいなかった」と、イギリスの公務員労働者はスト総括集会で誇らかに報告している。
この間の闘争のほとんどが、生きるためのぎりぎりの要求として大幅賃上げを掲げている。新自由主義が国際競争力強化のためと称して、体制内労働運動の協力のもとで、徹底的に賃金を切り下げてきたからである。
「大幅賃上げ」の要求と闘いのなかには、新自由主義への労働者の積年の怒りがこめられている。この怒りの爆発としての闘いは、労働者の階級的な力を解き放つ。
第3章 階級的労働運動で分断打破し国際連帯を
その典型的な例がドイツである。今年の第2四半期のドイツの賃金上昇率は、前年同期比でわずか0・7%だった。これは、EU27カ国平均の上昇率3・4%(賃金が急上昇したEU新加盟国を含んだ平均)からみて最下位である。英仏なども平均より低率だ。かつての「高賃金国」ドイツの実質賃金が昨年、20年前の水準にまで落ち込んだ。ここにインフレが直撃した。
このような状況のなかでIGメタル(金属労組)は、9月の協約交渉で電機産業部門の要求として、8%の賃上げを打ち出した。16年来(!)の高額賃上げ要求だといわれている。この16年間、ドイツの労働者は、賃金要求を低額に抑えつけられてきたのだ。このIGメタルを民間労組の柱とし、Ver−di(統一サービス労組)をもうひとつの支えとするDGB(ドイツ労働総同盟)は、1998年に政権についたシュレーダー(社民党と緑の党の連立)の「構造改革路線」=新自由主義攻撃を公然と支持した。さらに、それを引き継ぐ現メルケル政権(キリスト教民主同盟・社会同盟と社民党の大連立)による資本家階級への減税、低賃金、社会保障制度の解体、非正規雇用の拡大などを労働者階級に押しつける先頭に立ってきたのである。
ドイツ労働者階級の昨年来のストライキ闘争は、体制内労働組合と対決し、労働運動内部の新たな分岐を恐れない、運転士労組(GDL)のような闘いとして、初めて前進することができたのだ。ドイツ資本は、90年代以来、国際的争闘戦の激化のなかで、「高賃金」がドイツの国際競争力をそぐとして、拡大EU内の「低賃金国」への工場移転を強行してきた。「賃上げを要求するなら、低賃金国に工場を移転させるぞ」と脅し、賃上げ要求を抑えてきた。だがいまや、それが粉砕されつつあるのだ。
昨年来、その「低賃金国」(チェコ、ポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど中東欧諸国)の労働者の反乱が相次いでいる。さらにEU域内を越えて、中国やインド・パキスタン、そして中東ではクウェートなどの労働者が、20〜30%の賃上げを要求して決起している。
大幅賃上げを求める世界各国の労働者の闘いは、国境を越えて団結を拡大し、帝国主義の新自由主義政策をさらに破綻に追い込んでいる。
1929年世界大恐慌に続く30年代、ILWU(国際港湾倉庫労組)を始めとするアメリカ・プロレタリアートは、旧来の労働運動の壁を破り、ストライキ・工場占拠など、職場からの実力行動を展開し、30年代の革命的激動期に突入していった。そのような歴史的過程が、いま新たな歴史的条件のなかで始まっている。最末期帝国主義の破局のなかで労働者階級が立ち上がり、ますます団結を拡大し、階級的自信を深め、社会を転覆する力を形成している。その先頭に立つものこそ、動労千葉を軸とする3労組共闘・3国連帯の前進であり、11・2集会への1万人結集である。
〔川武信夫〕
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全世界でストライキの嵐【詳しくは本紙速報版ブログ参照】
■アメリカ
5.1 ILWU(国際港湾倉庫労組)がイラク労働者と連帯して反戦スト
7.14 カリフォルニア大学の現業労働者が賃上げでスト
8.28 カリフォルニア医療労働者が労働条件改善要求で24時間スト
9.6 ボーイング労働者が賃上げでスト突入
■ドイツ
5.29 ベルリン公共部門労働者がスト
6.4〜9/17 IGメタル(金属労組)の自動車労働者が年金問題でスト
6.23 ルフトハンザ地上勤務労働者が4時間の山猫スト
7.22/28 ルフトハンザのパイロット組合、整備・清掃労働者がスト
9.8 IGメタル、電機部門労組が賃上げでストへ
9.8/23 銀行労働者がスト
9.25 ベルリンで13万人の医療労働者が賃上げ要求、政府の医療政策反対でデモ
■フランス
5.15 教育・公務員労働者ら30万人が教育制度改悪反対などでスト・デモ
5.22 年金制度改悪反対で70万人がデモ
6.10 国鉄・教育など公務員労働者がスト
9.23 郵便労働者が民営化反対スト
■イギリス
4.24 公務員労働者40万人が賃上げ要求スト
7.1 ロンドン地下鉄の清掃労働者が賃上げで48時間スト
7.16 公共部門労働者50万人が賃上げ要求で48時間スト
7.28 12,000人の鉄道労働者が18時間スト
8.20 スコットランドの自治体労働者15万人が24時間スト
8.26 ロンドンのバス運転士が24時間スト。9月12日にも48時間スト
■イタリア
7.6 鉄道労働者が24時間スト
7.18 航空労働者がスト
9.26 鉄道労働者が全日スト
■その他(韓国・中国は今回省略)
5.19 ベルギー鉄道労働者が24時間スト
5.31 ロシア鉄道労働者が会社前でピケ
7月 クウェートの移民労働者3日間のスト
7.14 ハンガリー鉄道労働者賃上げ時限スト
7.30 パキスタン電機通信働者5万人がスト
8.20 インド公共機関労働者が12時間スト
8.20 チェコのジーメンス労働者が工場閉鎖に反対してスト
8.29 ポーランドのワルシャワで5万人デモ