2008年9月22日

金融大恐慌を迎え撃ち11・2へ 全世界の労働者の団結で最末期帝国主義に断下せ

週刊『前進』06頁(2360号1面1)(2008/09/22)

金融大恐慌を迎え撃ち11・2へ
 全世界の労働者の団結で最末期帝国主義に断下せ

 3世紀続いてきた資本主義の最大の危機が始まった。完全に世界金融大恐慌に突入した。だがこれは入り口にすぎない。今日の世界情勢を規定するのは資本主義・帝国主義の最末期の根本矛盾そのものだ。実体経済の何倍にも膨張させた投機マネーで世界中の労働者や農民から搾取と収奪の限りを尽くしてきたブルジョアジーの命脈は尽きた。ブルジョアジーの支配に終止符を打つ時が来たのだ。革命の条件は完全に成熟している。社会主義の客観的前提条件はある。資本主義・帝国主義の危機の激化こそ革命の原動力なのだ。

 第1章 4大証券2社が破綻と身売り

 米証券5位ベアー・スターンズの実質破綻からわずか半年。今度は一夜にして3、4位の証券2社が経営破綻と救済合併に追い込まれた。翌日には世界最大の保険会社AIGが米政府の管理下に置かれた。
 「1世紀に1度の危機」——米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン前議長はこう表現する。まさに資本主義そのものの危機だ。
 15日に経営破綻した米証券4位のリーマン・ブラザーズの負債総額は約63兆円。米国で過去最大の倒産だ。同3位のメリルリンチは、バンク・オブ・アメリカに身売りした。同2位のモルガン・スタンレーの株価も急落し、経営破綻か身売りは不可避だ。
 FRBは翌16日、経営危機に直面するAIGを救済するため9兆円を緊急融資すると発表。実質的に公的管理下に置いた。1月に60㌦だったAIG株価は一時1㌦台に急降下し、倒産は必至だった。
 世界の金融市場で急速な株安とドル安が続く。日米欧の中央銀行が36兆円を超える資金供給を行った。01年9・11直後に匹敵する額だ。だが株安は止まらない。

 第1節 連鎖破綻とドル暴落の危機

 証券会社は近年、借金を膨らませて住宅ローンなどを購入し、証券化して投資家に販売する手数料ビジネスで高収益をあげてきた。だが住宅バブル崩壊で担保となる住宅などの資産価格が下落した。逆回転が始まったのだ。預金などの安定した資金源のない証券会社はたちまち窮地に陥った。
 米政府は大恐慌の反省から長く維持してきた銀行業務と証券業務の分離政策を99年に事実上廃止し、銀行と証券の融合を認める路線に転換した。これが住宅投資などバブルを加速した。リーマンとメリルは氷山の一角にすぎない。サブプライム問題で最も多く損失を計上しているのは米銀行1位シティグループ(総資産2・2兆㌦を有する世界最大の企業)なのだ。世界中の銀行・証券会社が連鎖破綻の危機にある。
 他方で保険会社は、保険料を受け取り企業が倒産した場合の損失を補填(ほてん)する、信用デリバティブ(CDS)を拡大してきた。これは、住宅ローンなどでローンを支払えなかった時に肩代わりする「債務保証」に近い。それが倒産増加や債務の焦げ付き増で補償負担が莫大に膨らんだ。CDSの想定元本は合計60兆㌦(約6300兆円)を超える。
 特にAIGのCDSは、サブプライム関連の証券化商品の「保険」として重宝され、住宅ブームに乗って急速に事業を拡大した。AIGは、本業の生損保事業は順調だったのだが、ここ数年は利ざやが薄くなっていた。それで本業の保険からCDSへ手を広げたのだ。CDSの保証残高は4千億㌦(約42兆円)超。自己資本の5倍以上に当たる。
 サブプライム危機から1年。AIGは、投資家から次々と保証金の支払いを求められた。経営が悪化し、格付け会社がAIG本体の格下げに動いた。これを受けて信用低下を補うためにAIGは現金担保の追加を迫られたのだ。資金繰りが一気に悪化した。破綻直前だったのだ。
 CDS市場大手のAIGが破綻すれば、契約を結んでいた金融機関は、直ちにサブプライム関連などの損失を避ける「保険」を失い、巨額の損失が世界の金融機関に広がる。AIGはデリバティブの形で転売されるリスクの「終着駅」だったのだ。
 ここからFRBは前日に経営破綻したリーマンには行わなかった9兆円という巨額の融資を決めたのだ。米国発の金融恐慌とドル暴落を食い止めるために必死なのだ。今回のリーマンに端を発した金融恐慌は、完全にドル暴落の危機を引き寄せているのだ。
 リーマンに公的資金を投入しなかったのも財政赤字からドル暴落を引き起こすことへの恐怖からである。反対に9月7日には政府系の住宅金融2公社に20兆円の公的資金を投入し、政府の管理下に置いた。日本のGDPを上回る約540兆円の住宅ローンを持つ2公社が破綻すれば米国家そのものの信用不安に直結するからだ。
 しかし、住宅バブルの崩壊はこれから本格化する。3倍に膨らんだ住宅価格はまだ3割しか下落していない。住宅ローンの焦げ付きは拡大し、住宅差し押さえ件数が激増している。危機解決の効果はまったくない。
 しかも公的資金の投入は、イラク戦費、景気対策費などで限界に近い。財政赤字はさらに悪化し、ドル暴落のより巨大な要因となるしかない。
 例えばFRBの財務内容は、10日現在で約9千億㌦の資産のうち、安全資産とされる米国債の保有額は1年前より約4割も少ない約4800億㌦に減少した。資金繰りを助けるため証券会社が保有する住宅ローン担保証券などと国債を交換したためだ。資産が急速に劣化しているのだ。
 米政府やFRBが問題企業を抱え込む応急措置は過重な負担となっていく。実際は、問題の先送りであり、矛盾を累積しているだけだ。必ずより大きな危機を生み出す。

 第2章 新自由主義は完全に破産した

 世界の金融資産の合計は、現在180兆㌦(約1京9千兆円)と言われる。世界のGDPが約52兆㌦でマネー経済は実体経済の3・4倍を超える。最末期帝国主義が繰り出す新自由主義政策のもとで、ブルジョアジーは90年代以降、金融の自由化や金融工学の技術革新によって自己資金をその何十、何百倍もの額で運用してきた。
 一握りの多国籍企業や金融機関が一国の経済規模を超えるマネーを瞬時に動かし、経済開放・規制緩和・民営化で世界中を荒廃させ、暴力的に世界経済を支配してきたのだ。非正規雇用、失業、低賃金、長時間労働、強労働、貧困、児童労働……利潤をひたすら追求する資本主義の運動は、歴史上かつてない惨状を世界にもたらしている。有史以来、現代ほど一握りの富裕層に富が集中し、貧富の格差が開いた時代はない。
 それがパンクした。実体経済の何倍にもなった投機マネーが負債となってブルジョアジーを襲っている。サブプライムにとどまらず、株式、不動産、カードローンに広がる金融資産の評価損が劇的に拡大している。サブプライム関連の損失だけでも1兆㌦を超える。損失処理はまったく追いつかない。金融機関の自己資本は急速に消耗しつつあるのだ。世界の主要金融機関が軒並み債務超過になる情勢なのだ。
 帝国主義は延命するために労働者をトコトン犠牲にしてきた。これが新自由主義の核心問題だ。それが破局を迎えているのだ。米国では数百万人がサブプライムローンを返せなくなっている。多くは移民や低所得の労働者だ。住宅ブームが失速する過程で、移民や低所得層がローンの新たな借り手として格好の標的となったのだ。学費や医療費を払えない若者が借金返済のためにイラク戦争に志願している。世界の労働者はこんな社会では生きていけない。

 第1節 総裁選もぶっ飛ぶ日帝危機

 資本主義の巨大な生産力と富は、一握りの資本家階級が握っている。そして社会の生産活動の一切がこの少数者の利益のために組織されている。一握りの資本家が利潤を得るためだけに社会的な生産が行われているのだ。だが、今日の資本主義の危機は、この資本主義を転覆する条件を生み出しているのだ。
 資本主義の危機であると同時に、この危機を根本的な社会変革(革命)へと転ずる人びと、すなわち労働者階級の闘いを生み出しているのだ。
 世界の労働者のストライキは、今すぐ労働者がこの社会を運営できることを示している。高度に社会化された生産は、社会の主人を、金融独占資本に代わって団結した労働者階級に置き換える現実性を示しているのだ。
 長きにわたった資本主義の時代は終わりだ。資本家階級にとっては史上最大の危機、労働者階級にとっては1917年のロシア革命を引き継ぐ世界革命の時代の到来を告げている。
 世界金融大恐慌への突入情勢が日本帝国主義を襲っている。日本経団連の御手洗会長の「正直ショックだ。あんな名門企業が倒れるとは」の言動は日帝ブルジョアジーの恐怖そのものである。株安と円高は輸出産業に打撃を与え、長期不況となる。インフレの危機もさらに加速する。自民党総裁選も総選挙もぶっ飛ぶ事態なのだ。
 公然たる階級闘争の時代が始まった。労働者と資本家は非和解だ。すべては労働者の団結と闘いによって決まる。労働者こそこの社会の主人公なのだ。この原則を貫く労働運動こそ求められている。10・24国鉄闘争幕引き集会は敗北と絶望の道だ。民営化絶対反対と解雇撤回を貫く動労千葉のように闘おう。世界大恐慌を迎え撃ち、9・27〜28ワーカーズアクションから11・2労働者集会に結集しよう。全世界の労働者の団結で最末期帝国主義に断を下そう。