〈道州制と民営化〉に反撃を
〈道州制と民営化〉に反撃を
〈道州制と民営化に絶対反対する〉路線こそ、自治体労働者が団結し、展望を切り開いていく路線だ。道州制と民営化は公務員労働者200万人の首切り攻撃だ。自治体に国鉄分割・民営化を超える攻撃が来ている。唯一ストで闘い抜き勝利した動労千葉のように闘おう。原則と路線を貫く労働運動だけが勝利の展望を開く。11・2全国労働者総決起集会に〈道州制・民営化絶対反対〉派は総結集しよう。
第1章 「丸ごと民営化」アメリカのケース 民間企業が一括受注 市職員は4人
アメリカには市政全体を丸ごと民間企業に委託した自治体がある。ジョージア州アトランタ市に隣接するサンデースプリングス市。アトランタ市から05年の住民投票で市として独立した。人口が約10万人の自治体で市役所職員はわずか4人。警察と消防を除くほぼすべての行政事務が全米有数の建設会社(CH2M社)の子会社に一括委任された。
CH2M社は、韓国ピョンテクの基地建設や各地の原発建設などにもかかわっている。契約した小会社は、公共サービス、特に下水道などの公益事業の運用・維持管理、廃棄物浄化などを行う会社だ。
同社の業務は、道路や公園の維持管理や補修から開発計画の認可、予算の編成、事業免許の許可、上下水道やごみ収集の契約管理、地方裁判所の支援、コールセンターの対応、広報誌の発行、税金の徴収まで含む。
市長は「税金を最も効率よく使う方法を考えた結果」という。同市の予算は同規模の市の半分以下だ。その実態は、現場の労働者の低賃金と強労働で支えられる。社員の多くは、元々の自治体である郡および各地の自治体から採用された。
こうした自治体丸ごと民営化は各地で増えている。これらの市の市長は「民間企業は地方公務員規則に従わなくてもよいので社員の増減が容易。建物や設備も減らせるので借入金も少ない」と利点を説く。周辺地域でもCH2M社に委託する動きが進んでいる。既存の市(ルイジアナ州セントラル市)で全面委託したケースも生じた。
「人口25万人以下の自治体であればこの手法がベストだと確信している。この前提に立てば10兆円以上の市場がある」——発案者はうそぶく。
第1節 杉並も全事業民営化計画
これが民営化の行き着く先だ。東京都の各自治体でも丸ごと民営化プランが軒並み出ている。杉並区は「スマートすぎなみ計画」で800人近くの職員が減らされた。学校給食も約半数、学校警備は3分の2が民営化・民間委託化された。保育園や図書館や学童クラブも進む。杉並区では全事業869をすべて民営化の対象とする「杉並行政サービス民間事業化提案制度」を実施している。山田区長の思惑どおりにうまく進んではいないが、文字どおりの「丸ごと民営化」制度だ。
こうした「丸ごと民営化」計画は、都内だけでも「江東区アウトソーシング基本計画」「江戸川区行財政改革推進プラン」「立川市経営改革プラン」など、まちまちの名称でほぼすべての自治体にある。民営化攻撃は必ずサンデースプリングス市に行き着く。
その上で、道州制こそ「丸ごと民営化」攻撃の主柱だ。その最先頭に立っているのが大阪府の橋下知事だ。橋下の狙いは、大阪府政を解体して、道州制の突破口を開くことにある。
第2節 道州制こそが橋下の狙い
「大阪府の『発展的解消』が将来目標。これにより関西州へのステップを確かなものにする」——橋下改革=「大阪維新プログラム」の最大の狙いは道州制導入だと公言している。
橋下は「民間の破産会社なら解雇・賃下げは当たり前」と声高に叫び、府の職員の賃金の4〜16%削減を強行した。その額は計330億円。そして「住民サービスは市町村、府は産業政策に特化する」「高齢化社会を乗り切るのは自己責任と互助」として府から社会保障、社会福祉の一切合切を切り捨て始めた。
他方で「すべては関西州という視点で考えている」として、新名神高速道路、府庁のWTC(ワールドトレードセンター)移転、伊丹空港の廃止、淀川左岸線延伸部の整備などを関西州構想の観点から推進している。
橋下の問題意識は、国家の枠組みを超えた都市間の国際競争に競り勝つことだ。道路・都市計画・関空関連事業などを推進し、効果的な産業戦略を展開できる司令塔機能を有した関西州を設立したいのだ。そのためには大阪府を廃止するという構想だ。
日本経団連の御手洗会長は、道州制について次のように説明している。
「都道府県を全廃し、10程度の道州に統合。市町村・道州・国の三層構造の統治体制にする。住民サービスは市町村が一手に担い、内政はその大半の権限を国から委譲された道州が行う」
「住民サービスは自立自助を基本とし、市町村がその財政に応じて実施する。道州は、現行の都道府県の枠組みを超えて産業振興策を推進し、道州内のインフラ(道路や港湾、空港)整備などを担う。国は軍事や外交、治安に専念する」
橋下と御手洗は完全に一致している。
道州制は第一に、1千兆円を超える国と自治体の借金をすべて労働者に負担させ、国と自治体の事務・事業を丸ごと民営化して金融独占資本が独占・私物化する、国・自治体の究極の分割・民営化攻撃だ。
第二に、帝国主義間の国際競争に競り勝つために戦後的な地方自治制度を解体する国家統治構造の大再編でもある。
東海・北陸は〈自動車・輸送産業〉、関西は〈ハイテク・バイオ〉、九州は〈自動車・半導体〉など大企業の国際競争力の強化を一切の基準に産業政策を進めるというものだ。産業拠点化と経済圏構築のために都市計画や税制の優遇措置、金融政策を進めることに道州の役割を特化しようというのだ。
道州制は、自治体を丸ごと大資本が簒奪(さんだつ)し、利潤追求のための食いものにした上で、資本のやりたい放題ができる地域を生み出すものだ。
第2章 「絶対反対」で分岐を 現場の怒りを路線での団結に
自治体に、80年代の国鉄分割・民営化を超える攻撃が来ている。すでに道州制と自治体丸ごと民営化で公務員200万人の仕事を民間に移す試算が出ている。国と地方の1千兆円の借金を公務員労働者のせいにし、200万人をリストラしようとしているのだ。
自治体労働運動の最大焦点は、労働組合解体と公務員労働者200万人の首切りだ。労働組合の闘う路線として、〈道州制と民営化絶対反対〉の路線を確立することだ。絶対反対派として、自治労・自治労連の都道府県本部・単組・支部・分会・職場レベルで登場しよう。民営化容認へ転落した体制内派と激突し、職場の中に〈道州制・民営化絶対反対〉路線で団結をつくろう。
体制内派と階級的労働運動との〈違い〉〈対立〉〈展望の有無〉はこの路線の違いにある。
要員問題、サービス残業、公務員バッシング、メンタルヘルス、非正規労働者の増加……現場は労働者の怒りで満ちている。現場の怒りと闘う意欲に依拠する以外に労働運動は成り立たない。職場の現実と労働者の怒りと闘う意欲を〈道州制と民営化絶対反対〉の路線による団結に転じよう。
労働組合の力は職場の労働者の団結以外にない。労働組合の力は労働者の存在にこそある。労働者が働かなければ資本は1円の利潤も得られない。自治体業務も1日も回らない。労働組合は、この労働者の力を一つにする団結体なのだ。
原則と路線で団結を組織する労働運動こそが展望を切り開く。動労千葉は〈分割・民営化絶対反対〉で「たとえ闘ってクビになっても仲間は裏切らない」と団結を守り抜き闘い抜てきた。〈絶対反対〉の階級的団結こそ勝利の道なのだ。