インドネシアから看護・介護労働者 分断超えて団結を
インドネシアから看護・介護労働者
分断超えて団結を
8月7日、インドネシアから205人の介護福祉士、看護師労働者が日本に到着した。これは今年7月1日に発効した日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づいたもので、外国からの看護師・介護士導入政策の第一弾である。
2年間で看護職400人、介護職600人の計1000人を導入する計画だが、初年度から計画を大きく下回った。
第1章 外国人労働者政策の大転換
今回の受け入れは、日本の外国人労働者政策の大転換であり、日帝が少子高齢化社会の中でいかに必要労働力を確保するかという観点から外国人労働力の導入に踏み切ったものである。
もともと日本は外国人労働者について専門的・技術的部門以外の導入を正式には認めていない。しかし、単純労働力の受け入れ禁止を建前としながら、実際には技能実習・研修生制度を駆使して、3K労働の現場で多くの外国人労働者を奴隷労働的に酷使してきた。インドネシアからの労働者導入は、一切の歯止めをはずして外国人労働力を導入する第一歩だ。
日帝は、2050年以降に現在の生産力を維持するためには毎年65万人の外国人労働力が必要となる、と試算。この労働力不足という現実を東アジア経済圏構想の中で解決しようというのが、EPAによる労働者導入政策なのだ。インドネシアのほか、フィリピン、ベトナム、タイなどからも看護師・介護士労働者を導入する計画になっている。
今回のインドネシア医療労働者のうち、例外的に日本語能力を認められた3人は来日後すぐ医療現場に入って就労するが、それ以外の人は、まず6カ月間、日本語研修を受けた後、来年に入って全国98施設の病院、老人ホームなどで「研修」し、看護師は3年後、介護士は4年後に資格試験を受ける。その試験にパスした人だけが引き続き働くことができる(3年ごとの更新が必要)。試験に不合格の人は即刻帰国となる。
しかし、このインドネシア人労働者は、すでに看護師の資格をもち、最低2年間の臨床経験のある人たちだ。インドネシアで看護師としての実績を積んできた労働者が日本に来てなぜ看護助手としてただ働き同然の扱いを受けながら、揚げ句は帰国を強制されるなどという話があるのか!
同じくEPAで看護師・介護士の派遣を決めているフィリピンの場合、この不当な現実に対する批判があって、いまだにフィリピン上院で承認されていない。フィリピンの場合、年間1万人の看護師資格を持つ労働者が生まれているが、国内で働く看護職労働者が少なく、近い将来、フィリピンの医療現場で看護師不足という事態が生まれるという声もある。これはフィリピンに限らず、送出国に共通の矛盾となっている。
第2章 「研修手当」と低賃金で酷使
今回のインドネシア人医療労働者の導入は、第一に徹底した奴隷労働であり、使い捨て労働力としてインドネシア人労働者を酷使すること以外の何ものでもない。
そもそも研修生は労働者ではなく、労働法規の適用を受けず、研修中の事故や疾病について一切労災補償は受けられないことになっている。しかも、「労働者ではない」から賃金ではなく、研修手当として月12万円が支給される。しかしこのうち5万円は母国と派遣機関にあらかじめ取られるので、実際は6〜8万円が支給されるのみで、そこから食費などを引かれれば、後はほとんど残らない。
第二に、インドネシア人労働者に対して3年ないし4年間を無償労働に近い劣悪な労働環境を強制することをとおして、医療・福祉労働者の賃金引き下げ、労働環境の引き下げを強行し、職場の中に分断を持ち込もうとする攻撃そのものだ。
相次ぐ介護報酬の引き下げによる賃金切り下げと労働条件の劣悪化によって、介護労働者の離職率は20%を超えている(05年統計)。
われわれ労働者は、国境を超えてやってくるアジア人労働者と革命的に合流し、職場からの反乱を生み出そうではないか。医療労働者は、あらゆる分断を超えて団結し、職場で闘いを巻き起こそう。この職場の怒りを11月労働者集会1万人に結実させよう。
(佐久間祐)