『部落解放新聞・号外』を批判する 西郡住宅闘争に憎悪と敵対 小山たかし
『部落解放新聞・号外』を批判する
旧与田派が全国連を私物化 西郡住宅闘争に憎悪と敵対
小山たかし
第1章 はじめに
最末期帝国主義は延命をかけた新自由主義にもかかわらず世界史的な危機にひんし、革命情勢が到来している。プロレタリア革命の勝利をかちとるために、階級的労働運動路線と7・7思想を豊かに発展させる闘いが、動労千葉や法政大の学生や青年労働者の階級的団結と戦闘的な闘いとして、『蟹工船』ブームの中で前進している。帝国主義を打倒する部落解放闘争の本格的な推進も待ったなしに問われているのである。
このとき全国連中央本部は、『部落解放新聞・号外』(以下『号外』とする)を「2008年6月5日付」をもって発行した。「西郡支部の『第17回全国大会に対する態度表明』について」という見解を、「部落解放同盟全国連合会中央執行委員会(2008年5月18日)」名をもって表明し「批判」したのである。これは、西郡支部への組織破壊策動であり、断じて許すことができない。4月の全国連第17回大会は、転向を宣言する歴史的な意味を持っており、不参加を態度表明して身を処することは、不退転の決断による正しい選択であった。
『号外』に対する批判は、革共同から脱落・逃亡した旧与田一派らとの党派的、路線的決着をつける闘いであるばかりではない。住宅闘争や狭山闘争を労働者階級の課題に押し上げていくためにも、階級的労働運動路線と7・7思想の実践の真価のかかった闘いである。
そして、その実践的結論は、新自由主義攻撃をあくまでもごり押しする最悪の福田政権の打倒を目指して、11・2労働者集会への1万人結集を実現することである。
第2章 融和主義へと転落した17回全国大会
『号外』全体の核心問題は、「西郡支部が革共同と共闘していることが問題である、革共同と手を切れ」と、激しくわめくように言い立てているところにある。その狙いはいったい何か。革共同から「集団脱党」した旧与田一派らは、全国連中央本部を牛耳り、全国連を私物化し、全国大会では「革共同との断絶決議」まであげた。「マル学同広島大支部の合宿での討論」を「差別事件」としてねつ造し、「自民党や解同本部派とも手を組んだ糾弾闘争」を運動の基軸に据えたのである。全国大会は、転向を宣言する反階級的な大会であり、これを批判し不参加を表明した西郡支部を恫喝し、暴力的に抑え込むことに、生き残りの一切をかけているのだ。
『号外』の第一の問題は、結論部分にあたる「誰の利害のために」において、「『西郡支部態度表明』は、……デマと歪曲に基づいた意図的な文書」でしかない、とまず事実を歪曲し、「ただ革共同のほうをむき、革共同擁護あるのみ、革共同の利益のためだけの文書です」と、口をきわめて叫んでいるところにある。さらに言葉をつづけて、「その背景には、革共同が存在し、革共同に追随する一部役員が暴走していることは誰の目にも明らかです」と断じるのである。
これに類した物言いは、随所にみられる。「西郡支部の執行部の一部の諸君は、革共同の東大阪地区委員会に所属しています」とか、「彼らの指導部、東大阪地区委員会の副委員長の要職にある人物も」である。このくだりは、警察権力の文書と見紛うばかりである。「たれこみ」と言うべき利敵行為そのものであり、断じて許すことはできない。
革共同から脱落・逃亡した旧与田一派らは、与田を打倒した〈党の革命>を承認しないことを根本におき、それを共通の確認とし、全国連中央本部書記長の略式起訴受け入れ=完黙・非転向の不貫徹、権力への屈服問題や、東大阪市議選敗北の自らの責任を主体的に総括することを拒否した。そのあげく追いつめられて、革共同へすべて責任転嫁したばかりでなく、「広島差別事件」をねつ造して革共同を「差別主義集団」と規定し、「糾弾」することに自らの反階級的延命をかけたのである。
そのために旧与田一派らは、全国部落青年戦闘同志会を解散し、こぞって革共同からの「集団脱党・離脱」に踏み切ることをもって、帝国主義国家権力に対し闘わずして屈服し、投降したのである。
第二の問題は、「大会」への不参加の態度表明をめぐる問題である。「西郡支部態度表明」は冒頭、「大会に西郡支部は参加しません」と、態度を明らかにし、全国大会を前に「4月9日付」の文書を全国連中央本部に郵送して、「不参加」をきっぱりと通告した。「不参加」理由の核心問題は、「(糾弾闘争を)『自民党や解放同盟(本部派)にもよびかける』方針は全国連の旗を降ろすこと」であり、この重大な誤りをとらえて「不参加」を決断したのである。
第3章 “自民・解同本部派とも組む”と言明
その「第一の理由は、1月12日〜13日の拡大中央委員会での討論です」と指摘し、次のように問題を突き出している。「小森糾弾闘争本部長は、中央執行委員会で討議した方針として以下の提案をしました。『革共同への糾弾闘争を、自民党や、(革マル派と日本共産党を除く)解放派など様々な党派、解放同盟(本部派)にも呼びかけ、この差別は許さないという一点ですべての勢力を結集してたたかう』という方針です」
西郡支部は、「自民党や解同本部派とも一緒にやるというのは全国連でなくなること」「部落解放闘争をめぐる路線論争を差別問題にすべきではない」と即座に批判し、つづいて「国を相手の糾弾闘争を軸にすべきだ」と批判した。
この全国連中央への反対意見には、「『殺したろか』というヤジや罵声(ばせい)が浴びせられ、方針は拍手で採択されてしまいました」というのである。ヤジや罵声は、「広島差別事件」と「糾弾方針」への反対意見や批判を一切認めず抑え込むための、全国連本部権力を行使した旧与田一派らの暴力的恫喝と脅迫にほかならない。
「西郡支部態度表明」は、小森糾弾闘争本部長の発言を問題にしたが、『号外』は「(小森発言の)一部分のみをとりあげ、かつその部分すら歪曲して大騒ぎしています」と反論している。そして「実際の小森発言は次のようなものです」と臆面(おくめん)もなく披瀝(ひれき)するが、聞くに堪えないおぞましい内容だ。
「私たちは、革共同の政治利用を絶対に許さないし、私たちが政治利用する何ものもありません。私たちはこのことを断固として確認し……革共同を断固として糾弾していかなければならないと思います」「そのうえで、各地で真相報告集会を開催していきます。自民党から解放派からさまざまな党派、あるいは解放同盟にも呼びかけをしてですね、すべての勢力を結集して真相報告会をもってですね、糾弾闘争になっていく。糾弾闘争というのは、〈この差別を許さない>という一点でたちあがっていくわけです」
この発言で強調されている内容は、全国連中央本部の今日の反動的立場が、「自前の運動」という主張とも相まって、階級的立場を放棄し敵階級の側に完全に移行することを鋭く表している。「〈差別を許さない〉という一点でたちあがっていく」ということは、“部落民は部落民の利害以外では決起しない”ということを意味するのである。
つまり、“革共同を糾弾することは部落民の利益であり、そのためなら誰とでも一緒にやる”と言い切ってはばからないのだ。それは、徹頭徹尾、部落民主義に依拠し血債主義・糾弾主義思想にもとづき、労働者階級との階級的団結を破壊する立場に立つという反階級的なものである。
だが、このことこそが、「広島差別事件」のねつ造と糾弾闘争の偽らざる内実であった。その意味では、全国大会は、帝国主義的融和運動へと決定的に踏みこむものであり、全国水平社の幕引きとなった水平社第16回大会(1940年)にも匹敵する部落解放闘争の〈歴史的な汚点>を刻む大会となったのである。
第4章 階級的団結めざす西郡と共に闘おう
第三の問題は、『号外』が「住宅闘争について」で取りあげている、「分納」か「供託」かという住宅闘争の方針をめぐる問題である。住宅闘争とは何か。それは、最末期帝国主義の新自由主義が、「同和対策法」失効後をとらえて「公的」な「同和住宅」を市場原理によって民営化する攻撃との闘いであり、住居を奪いムラを解体し、部落民の団結を破壊する差別攻撃との闘いである。西郡支部は、応能応益家賃絶対反対を掲げ供託方針を貫き、差別行政による「住宅明け渡し」や「給料や年金の口座の差し押さえ」による団結破壊の攻撃と全力で闘っているのである。
新自由主義は部落民への攻撃であるとともに全労働者への攻撃でもある。膨大な非正規雇用労働者の創出や民営化=労組破壊、賃金削減や労働強化、リストラ、そして医療や福祉切り捨てなど極限的な搾取と収奪に対して、「生きさせろ!」という闘いが労働者階級の深部から大きなうねりとなって起こり始めている。住宅闘争は、この怒りの反撃と結合し、労働者階級とともに闘うとき、勝利の展望を切り開くことができるのだ。
「西郡支部態度表明」は、「住宅闘争は供託を貫くべき—大会方針の分納方針は敗北の道」だと本部方針を批判している。西郡支部の住宅闘争は、「応能応益家賃絶対反対・供託方針」を断固貫くところに基本をおき、差別行政糾弾闘争として支部大衆の主体的な決起と団結によって推進されている。それは動労千葉型の闘いと言える。困難ではあっても、ここに住宅闘争の正義性と勝利性があり、労働者がともに団結して闘う根拠がある。
『号外』は、一方では「大会議案書」を長々と引用し、奈良の住宅闘争の取り組みを最大限に評価し、「分納においても団結しだいで、たたかいの武器に転化できます」と、とんでもない転倒を行い、“これ以外に全国連の方針はあってはならない”と西郡支部を恫喝しているのだ。他方では、「明け渡し攻撃。必ず、やがて執行段階がやってきます。そのときどうするのですか」という行政権力そっくりの物言いをして、「闘っても勝てない」と敗北意識をもたせ屈服させようとしている。
いずれも恫喝と脅迫による卑劣な支部破壊策動である。これに対し、身ぐるみ剥(は)ぐような理不尽な攻撃にも動ぜず、もはや失うものを持たない西郡支部と支部大衆、八尾北診療所労組などのともに闘う労働者・労働組合にとって、団結こそ武器であり、恐れるものは何もないのだ。
『号外』は、こうした階級的団結にたいする分断と破壊のためのデマゴギーに満ちており、満身の怒りを込めて徹底的に弾劾し粉砕し尽くさなくてはならない。
“労働者との階級的団結こそ勝利の道”という確信を、西郡支部は07年11月労働者集会に参加し戦闘的デモをやり抜く中でつかみとった。自分たちの闘いが世界につながり、全世界の労働者階級・被抑圧民族との結合と階級的団結の中に、部落解放があることをつかみとったのだ。
今年前半、5・23狭山闘争をうちぬいた東日本で、関西で、広島で、部落解放共闘会議の闘いが前進している。旧与田一派らのあがきを踏みしだき、解放共闘の旗を高々とかかげて、10・31寺尾差別判決34カ年糾弾—狭山第3次再審闘争に立ち上がろう。11・2労働者集会の1万人結集をかちとろう。