グルジア侵攻 帝国主義大国化を狙うロシア 石油・資源の確保が根底の動機
グルジア侵攻 帝国主義大国化を狙うロシア
帝国主義間・大国間の争闘戦が侵略戦争-世界戦争へと転化
石油・資源の確保が根底の動機
グルジアをめぐり米ロ対立が激化し、それを契機に帝国主義の争闘戦と侵略戦争が拡大し、世界戦争爆発の危機が高まっている。世界を戦争に引きずり込む最末期帝国主義を打倒し世界革命を実現するために、今こそプロレタリアートの国際主義的な団結を強め、闘おう。その最短コースが階級的労働運動の白熱的展開と11月労働者集会への1万人結集である。
第1章 「大国復活」かけた戦争
8月8日にロシアとグルジア(米帝に支援された)が南オセチアの分離独立問題をめぐり軍事衝突した。ロシア軍は、グルジア軍を撃破してグルジア領内に侵攻した。13日の6項目停戦合意への署名後、22日に「撤退完了」を宣言したが、一方的に「緩衝地帯」を設けてグルジアにとどまっている。米欧はロシアに完全撤退を迫っているが、ロシアは動こうとしない。しかもロシアは26日に南オセチアとアブハジアを国家として承認した。米英独仏日は一斉にロシアを非難した。米ロの政治的軍事的応酬は激化するばかりだ。
ロシアが米帝との緊張・対立の激化も辞さずグルジア侵攻・駐留を続けるのは、これをロシアの帝国主義大国としての復活をかけた戦略的な戦争の開始として位置づけているからだ。とくにカスピ海地域の石油・天然ガス利権、パイプライン利権の獲得は死活的だ。そこでロシアは南オセチア、アブハジアへの介入を正当化しつつ、グルジアへの軍事的くさびを打ち込もうとしている。
帝国主義にとっても、カスピ海の石油・天然ガス資源とそれを運ぶパイプラインの確保は死活的だ。だからカスピ海と黒海の間に位置するカフカスの戦略的要衝、グルジアの支配をめぐっては、ロシアとの間で激しい暗闘を展開してきた。また米帝と欧州各国帝国主義との間でも、この地域のエネルギー資源確保をめぐる争闘戦が展開されてきた。
今や帝国主義は、米帝を先頭に、ロシアのグルジア侵攻をとらえてグルジアに全面介入し、親米政権を軍事的に支えてグルジアへのロシアの影響力を実力で排除しようとしている。これは、帝国主義によるカスピ海・黒海地域への侵略戦争の新たな開始だ。米帝は「ロシア=悪」を大宣伝し、「新冷戦」といった帝国主義的なイデオロギーをふりかざすことで、自らの侵略戦争拡大を正当化し、ロシアを排除して資源・市場を独占しようとしているのだ。
すでに黒海東部では、ロシア黒海艦隊のミサイル巡洋艦と、米第6艦隊の最新鋭ミサイル駆逐艦が互いににらみ合いを続け、米ロ海軍が激突寸前の状況に入りつつある。世界金融大恐慌の爆発が始まったなか、石油・天然ガスなど資源の確保を軸とする世界の帝国主義間・大国間の争闘戦が、今や新たな世界戦争に転化しようとしているのだ。その火点の一つがグルジアだ。
第2章 「2国独立承認」を強行
8月26日、メドベージェフ・ロシア大統領は、南オセチアとアブハジアの2地域のグルジアからの独立を承認した。メドベージェフは、軍事衝突の発端となったグルジアの先制攻撃を強く非難し、「2地域には民族自決の権利がある」と独立承認を正当化した。
だが、こうしたロシアの行動は、大ロシア主義的、帝国主義的な領土併合であり、民族問題を利用したグルジアへの侵略と介入、分割、転覆の策動だ。ロシアは、グルジアに侵攻・駐留し、2地域を国家承認することでグルジアにくさびを打ち込み、親米国家グルジアを屈服させ、戦略的要衝としてのグルジアを支配下に入れようと躍起になっているのだ。
グルジアのサーカシビリ大統領は「これはロシアによる2地域の事実上の併合だ。欧州では大国が他国の領土を併合するのはナチスドイツとスターリン以後初めてだ」などと最大級の非難を浴びせ、領土復活のためのグルジアへの支援を帝国主義諸国に訴えた。
第3章 米欧ロの軍事的な対峙
米欧日の帝国主義はこのグルジアを即座に支持し、一斉にロシアを非難している。米帝ブッシュは26日、2地域の独立を「承認しない」と宣言、ロシアをG8から外すことも検討するとし、NATOはロシアとの軍事協力を停止し、演習を中止した。米ロ原子力協定も凍結する方針だ。
また米帝は、グルジアとウクライナのNATO加盟を支援する方針をあらためて強調した。20日には、米帝とポーランドがミサイル防衛(MD)の迎撃ミサイル基地をポーランドに設置する協定に調印した。10基配備される迎撃ミサイルは、チェコに設置されるレーダー基地と一体運用される(チェコとはすでに協定に調印した)。グルジア問題の爆発がポーランドのMD配備協定調印を早めた。米帝はいかにロシアを刺激しようが両国へのMD配備を強行し、最前線基地化しようとしている。
米帝に対抗してロシアはNATOとの協力関係を凍結した。プーチン首相はWTO加盟交渉の凍結方針を表明した。EU・ロシアパートナーシップ協定の協議も凍結されようとしている。メドベージェフは26日、グルジアのサーカシビリ政権との断交を宣言した。
グルジアは、ロシアが主導する独立国家共同体(CIS)からの脱退を表明した。これにウクライナやアゼルバイジャンも連動し、ロシアを牽制しようとしている。また「併合された領土」をロシアから奪回すべく、あらためてロシアとの戦争を構えようとしている。これらはすべて米帝の支持を背景にしている。
24日、黒海のグルジア西岸・バトゥーミ港に米海軍第6艦隊旗艦、イージス駆逐艦マクフォールが入港した。さらにロシアが現在支配するポチ港にマクフォールと沿岸警備隊の巡視艦ダラスを入港させ、ロシア軍と直接対峙しようとしている。「人道救援物資の供給」を目的に掲げているが、ロシア側は「武器をグルジアに運んでいる」と非難しており、戦争挑発そのものだ。
今や米ロがなんらかのきっかけで軍事的に衝突し、それが戦争に発展しても何ら不思議ではない状況に入っている。米帝は、こうした状況を意識的につくり出して、ロシアへの軍事的圧迫、NATO拡大を正当化し、推進し、自らの勢力圏を広げようとしている。こうした米帝の行動は、帝国主義大国としての復活をめざすロシアの対抗的軍事行動を引き出す。世界はますます侵略戦争と世界戦争へ突き進むのだ。
第4章 石油・ガス-戦略的要衝
グルジアをめぐる米ロ対立の激化の最大の理由は、カスピ海のエネルギー資源を欧州・アジア方面に輸出するパイプラインがグルジアを経由しているからだ。世界金融大恐慌への突入下、石油・天然ガスのエネルギー資源をめぐる世界の帝国主義間・大国間の争奪戦はますます激化し、グルジアの戦略的位置は一層高まっている。
米帝はソ連崩壊後、「民主化拡大」戦略をもって旧ソ連諸国に乗り込んだ。米帝は03—04年、親欧米でありながらロシアとも友好関係を保つシェワルナゼを「バラ革命」で追い落とし、サーカシビリを新政権に送り込み、極端な親米政権をつくった。米帝の言う「民主化」とは親米化の方便にすぎない。また米帝は02年以来、「テロ対策」の名で100人の米軍事顧問団を派遣し、グルジア軍を育成・訓練してきた(英仏、イスラエルも小規模ながらこれに続いた)。そこから2000人のグルジア部隊がイラクに派兵されてきた。米帝のグルジアへの軍事援助・武器供与は毎年2000万㌦に上る。
カスピ海に面するアゼルバイジャンには、ソ連崩壊後、欧米メジャーが国家がかりで乗り込み、バクー沖で石油と天然ガスを探査・掘削・開発した。アゼルバイジャンのアリエフ政権は、スターリン主義を引き継ぐ独裁政権の2代目だ。「民主主義」とは無縁だが、帝国主義にとって石油利権を確保できればそれはどうでもよいことだ。
帝国主義とメジャーは、バクー沖の石油・天然ガスを欧州方面に独占的に大量輸出するために、ロシアを経由せず、またトルコのボスポラス海峡を通らず欧州方面に出る新たなパイプラインを建設することにした。バクー・トビリシ・ジェイハン(BTC)パイプラインは100億㌦の資金を投入して完成、06年に開通した。1日100万バーレルが輸出される。
天然ガス輸送のためにはバクー・トビリシ・エルスルム(BTE)パイプラインが建設され、稼働している。さらに中央アジアからグルジア、アルメニア、トルコを通り欧州へ向かうナブコパイプラインも計画されている。いずれもグルジアを経由するものだ。グルジアをめぐる米欧ロの争闘戦、侵略戦争の再爆発は不可避である。
第5章 世界革命完遂で対決を
グルジアでの軍事的緊張の激化、一触触発情勢への突入は、世界の労働者階級にとって実に重大な事態だ。世界金融大恐慌とインフレの爆発に加えて、最末期帝国主義と新自由主義の破産の危機がついに新たな世界戦争として爆発しようとしているのだ。国際プロレタリアートの大決起でこの世界戦争を絶対に阻止し、プロレタリア世界革命の完遂による帝国主義の打倒を一刻も早くやりぬかねばならない。
グルジアで起きていることの本質は、「冷戦の復活」ではない。20世紀の二つの世界戦争を経て延命した最末期帝国主義が、ソ連スターリン主義の崩壊以後の帝国主義の基本矛盾の全面的爆発という情勢の中で、旧スターリン主義国のロシアや残存スターリン主義・中国などの大国をも巻き込んで、その積もり積もった全矛盾を最後的に、新たな世界戦争として爆発させ始めた点にある。それは同時に、世界革命情勢の決定的な成熟だ。11・2労働者集会1万人結集を、その突破口としてかちとろう。