「雇い止め許せない」 仙台の全逓労働者“職場の革命”を語る
朝礼に突入「雇い止め許せない」
仙台の全逓労働者“職場の革命”を語る
職制を遮ってくれた労働者
本紙では、仙台S郵便局の雇い止め攻撃と闘うAさんのビラを2回にわたり紹介しました(2343号、2349号)。それを受け、今回は同局で闘う労働者の座談会を企画しました。Aさんの闘いに多くの同志や読者が注目し、自ら闘う契機になったとの報告も寄せられています。(編集局)
座談会出席者
S局非正規労働者 Aさん
S局正規労働者 Eさん
S局正規労働者 Nさん
S局正規労働者 Wさん
マル青労同同盟員 Gさん
第1章 存在を全否定された怒りで A 「できっこない」が崩れ感動 E
第1節 ストライキを決行
——Aさんのほうから、雇い止めを通告されたときの気持ちから伺えますか。
A びっくりしました。いきなり通告された。理由を聞いたんだけど「こちらの判断だ」としか言わない。「納得いきません」と言って、その日は帰りました。
家で一人になったら、留め金がはずれたようになって、ワーッと泣いてしまった。地図を覚えたり大変な仕事だったけど、仕事に誇りもあった。仕事を奪われたと同時に存在の全否定ですよね。若い仲間にもメールして、反撃してやるぞと決めました。
首を切られて初めて分かった。みんなこんな簡単に首を切られているんだと。誰かが「3日間くらい涙が止まらない」と言っていた。僕も同じだった。こんな例を増やしていいのか。ここで自分がひっくり返してやるんだと腹を固めた。
それから「雇い止めを受けたり解雇されるのは、本人に能力がないからだ」とか、「努力が足りないからだ」という考え方をぶっ飛ばしたかった。みんな、今回のようなことがあると「自分の責任」かと思ってしまう。しかし本当は違う。悪いのは、僕ら労働者をいいようにこき使って、使い捨てにしている資本なんです。そのことをはっきりさせたかった。
E 私は怒りですね。雇い止めは集配職場ではごろごろある。それが問題にされないだけだ。非正規労働者は一番矛盾が押し付けられる存在。そもそも賃金が全然違う。同じ仕事をしても正規職の半分。だけど仕事は全部本人の責任にされる。3カ月たっても「ミスが多い」と、自分から退職願いを出させる。ミスが多いといっても、慣れてないし、仕事量が多いから当然で、すべて資本の責任なんです。その現実に対する怒りです。
今の職場は徹底的に分断されています。正規・非正規とか内務・外務とか、正規でも年配者を差別する。だから「隣の労働者は立ち上がらない」と絶望している人もいる。職場の中がバラバラにされている。今回の闘いで「一緒に闘おう」という気持ちを示したかった。でないと労働者階級としてひとつにならない。そこにかけようと。
W 職場で勝負するというのは考えてみればあたり前なんです。だけど、実際やるのは結構重い。でも職場を革命の火薬庫にしたいという思いはずっとあった。団結破壊は許さない。超勤の強制や、雇い止めとかとんでもない。労働条件もがまんならない。当局は、職場に闘いなんて絶対起こさせないと抑圧を強めてくる。職場の人もここでは闘いは起こらないという雰囲気が強い。それをぶっ壊したいという気持ちがあった。
第1項 職場でこそ勝負すると決意
E 今年1月から仙台のワーカーズアクションで青年労働者・学生、若い人も年輩者も一緒になって闘ってきたことが、大きな意味がありました。あの中で、今の社会のこと、労働者の状態、職場でどう闘うかをトコトン討論した。
自分たちは動労千葉と一緒に闘って、労働運動の力で革命やろう、動労千葉のように職場で闘おうと考えてきた。だけど、そんなことできっこないという思いから始まるわけですよ。職場は資本による分断支配でバラバラにされている。だから自分の職場の労働者が決起するなんて考えられない気持ちだった。
だけどワーカーズアクションでみんなと本音を出し合って討論し、彼らの職場での闘いを聞き、自分の職場でもやってみよう、失敗してもいいからそこからしか始まらないと思うようになった。
それと「郵政民営化ってなんだ?」とずっと考えていた。それは団結破壊だと確信した。職場でこそ勝負しなかったら団結は絶対つくれない。
それで昨年8月27日にS局で「郵政民営化絶対反対」のビラを配って職場の仲間に一緒に闘おうと訴えていった。
第2章 過労死の仲間の無念はらす N どの職場でも同志つくれる W
第1節 “非正規の壁”破る
N 僕の場合、前に分会の仲間が過労死した時に闘えなかった無念の思いがありました。仲間が全員「あれは過労死だ」と言う。でも組合の支部長は「過労死じゃない。そんな診断書もないのにそんなこと言うな」と言ってくる。それに負けてしまった。本当に無念だった。まわりの労働者が死んだり、理由も言われないでいきなり首になるなんて許せない。彼が雇い止めされて、ここで闘えなかったら俺はなんのためにマル青労同に入ったのか分からないという思いがありました。
——4月30日は、Aさんはどういう闘いをしたんですか。闘ってどう感じましたか。
A ドキドキでしたよね。それまで職場でビラをまいたことないわけだから、そんなことしていいのかと。最初はロッカーだろうがフロアーだろうがどんどんまいて回った。ワーッとやっていたら管理職が集まって来て、そこでEさんやNさんが管理職に「雇い止めを撤回しろ」と猛然と抗議して大混乱になった。そうこうしていたら集合のチャイムが鳴った。
E 朝のミーティングで、通路に軍隊みたいに全員が対面で並ぶ。
N その、みんなが並んでいる真ん中をA君が走った。約50㍍ある。
A 「みなさーん。僕はあの人に2日前雇い止めを通告されました。許せませーん」て。そしたら、総務課長が「やめろー」と追ってきた。
E その瞬間、課長が動けないように非正規の労働者が腕をつかんだ。
N いままでの職場では想像もつかない光景が広がっていた。感動的でした。
E そのうち全課の課長が集まってきた。がんがんやりあって、収拾つかなくなった。ミーティングは完全粉砕された。
A ものすごく気持ち良かった。完全に力関係が逆転したというか。俺たちがストライキやったら管理職は俺たちの言うこと聞くしかない。そう実感した。
ストライキ宣言したら班の人たちもびっくりしていた。「御迷惑おかけしますがよろしくお願いします」と言ったら、「まかしとけー」と言ってくれた。労働者は気持ち共有できるんだ、労働者って絶対団結できるんだなーって思った。
N 俺も「捨てたもんじゃない。俺のところの労働者もすげー」と思った。
G 当日は、私も、既成の体制内労働運動ではなく、革命運動やっているという実感でした。緊張感持って、怒りで突き抜けて、気分も高揚していた。かと思えば、今までの自分のあいまいなところもさらけ出しながら、一日が過ぎた。
具体的に闘いを開始する中で、一つひとつ初めてのことを学びながら進んでいった。やはり団結がすべてです。何かあればそこで一体となってやることをたえず確認しながら進んだ。
E 昨年夏から今回の決起まで職場で闘ってきて、労働者と資本の関係は力勝負なんだ、力関係でしか決まらないんだと実感しました。
動労千葉の田中委員長が、反合闘争が決定的だと言ってます。資本と非和解で闘い抜く闘い方です。安全問題は労働者の力で資本に強制する以外に実現できないと。
そのためには労働者の団結が必要なんです。団結こそが労働者の武器。労働者は一人ひとりに分断されていたら弱いけど、団結すれば資本と闘って、労働者の利益を資本に強制することができる。雇い止めや解雇を阻止できるし、動労千葉のように労働条件を良くすることだって可能。
第1項 資本主義打倒のために闘う
W 職場の仲間がバラバラにされていることによってみんな「人間関係がひどい」と言っている。それを取り戻すには社会の主人公として誇りを持って、みずから立ち上がって手に入れる。それによって労働者は生きられる。ともに闘う団結、生きる団結をつくっていきたい。それで職場の力関係を変えていく。
——Aさんがストライキに立ち上がり、みなさんが首をかけて決起した。なにを目指して決起したのかを伺いたい。
E 労働者の先頭というより、自分は革命党の党員なんだと、共産主義者なんだという気持ちが強い。非正規が決起しているのに正規職は首かけて闘わないのかとか、そういうところばかりに話しがいくと重い話しになってしまいますが(笑)そうではなく、非正規も正規も団結して闘う、ということなんです。
A 僕はそう言いましたよね。なんでみんな一緒にストライキしないんだよ、みたいな。(笑)
E 真っ先に怒りがあります。雇い止めは絶対に許せないと怒りで突き抜けたということ。
と同時に、このかん労働学校で学んで、労働者が置かれている現実の根本原因は資本主義社会にあるということをあらためてはっきりさせた。この資本主義を打倒するために職場で闘う。
N 資本主義を打倒する闘いにともに決起する以外に正規と非正規の壁を最終的に崩すことはできない。それを4月30日にやった。そういう飛躍をかけてこのかんの職場攻防を闘ってきた。
W 敵をはっきりさせ、怒りの矛先を誰に向けるべきかをはっきりさせる。これまで、敵は資本なんだとはっきりさせて職場に団結をつくることに挑戦してきたし、この闘いが団結をつくるチャンスという感じです。やっぱり怒りが団結の始まりです。
第3章 革命運動をやっていると実感したG
第1節 11月労働者集会へ
——処分についてはどう思いますか? 決起する前は重かったのではないかと思いますが。
E 首をかける覚悟で闘って、2カ月後に処分が出た。結構遅かった。戒告というのは懲戒規定で下から2番目なんです。それしか出せなかったというのは、思わずそんなもんかと笑っちゃったけどね。もちろん処分は不当で許せないんだけど、それぐらいの処分しか出せないのかと。
N 俺も戒告。
——今回は休暇届けみたいなのを出したんですか?
E 統括課長代理に口頭で「欠勤するからよろしく頼みます」と言ったんですよ。そしたら「はい、分かりました」と言った。だから無届けではないと。ところが昼になって総務課長が「欠勤届けは承認できない」と言ってきたけど、「そんなの関係ねーよ」と。とにかく1日欠勤して、職場で制服着て闘っていた。
N いい光景だよね(笑)。
——門前闘争は今はどのくらいの間隔でやってるんですか? 今後の方針は?
A いまは大体2週間に1回。これからもビラつくって、「俺はこれからも認めないぞ。俺と団結して革命やろう」と門前の管理職とぶつかりながらやりたい。中途半端には終わりません。
——最後に全国の仲間に訴えたいこと、11月労働者集会に向かって、一言お願いします。
A 泣き寝入りしないで本当に良かった。失ったものもあるけど、そんなの忘れるくらい団結を得た。本当に労働者は信頼できる。自分が労働者を信じられるようになったことが最大の成果。声をあげれば変わる。資本家なんて実はちっぽけな存在。俺たちに寄生しなければ生きていけない。ちっぽけな存在にふさわしい地位まで引き落としてやろう。革命を一緒にやろうと訴えたい。
W 何よりも訴えたいことは、どんな職場でも同志はつくれる、隣にいる労働者を信頼することです。絶対に団結できる。昨年からの職場攻防と今回の闘いでそれが分かった。それは皆さんのところでも同じです。
G A君以降も雇い止めが起こっているし、どこの職場でも同じ状況。では僕らは何をもって闘うのか。革命しかない。そのために職場で真に闘う仲間をつくる。同志をつくって勝利する。そういう闘いをやりたい。
確かにオルグも簡単ではない。しかしこの間学んだのは、オルグは一度断られてからが本当の勝負。しつこいと言われるくらいでないと仲間にならない。本音でぶつかって獲得していきたい。
第1項 浮くことを恐れず一歩前へ
N 労働者は団結できる存在だし、まわりの労働者こそがそういう存在だと気づいた。それが分かるには一歩踏み出さなければならない。職場で浮いてもいいじゃないか。むしろそれで自分が解放される。浮いているようでも底辺では絶対につながっている。だからもっと浮くことをやりましょう。11月労働者集会には隣の仲間を連れて行く。そこが総括軸。
E 一人を獲得するために俺たちは時代をもっと語らなければならない。これまでそういう話をしてこなかった。今の金融問題とかガソリンの価格がどうなるかとか。食堂で昼飯食いながら『蟹工船』の話しをすると、「『蟹工船』の漫画買ってきたよ」と反応が返ってくる。そういうところからやっていく。
これからが闘いだ。法政大だっていまからが闘い。労働者だってトコトン職場にこだわった闘いをやるべきです。それをやって11月へ。
決定的な一枚のビラが重要、それも含めてやりたい。可能性は大きい。
——長い時間有り難うございました。
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第4章 闘いの経過は教訓の山 “団結すれば勝てる”を証明
Aさんは今年4月2日、仙台市のS郵便局に「期間雇用社員」として採用された。ところが、1カ月を前にして「雇い止め通告」を受けた。
AさんはS局で一緒に働くE、N、Wさんと討議して、雇い止め最終日の30日にストライキで闘うことを決意し、E、N、Wさんもともに首をかけて闘うことを決意した。
当日は早朝から職場に登場。雇い止めを許さず闘うことを宣言したビラを同僚のすべての労働者に配布した。さらに労働者支配のためのミーティングを完全に粉砕するなど、終日闘いを貫いた。夕方には闘いを支持する9人の労働者を含めて集会をやり抜いた。
この闘いは突然に起こったのではない。S局の全逓労働者の営々たる闘いの歴史、とりわけ昨年8月27日に「郵政民営化絶対反対」「動労千葉のように闘おう」と宣言したビラを配布し、職場闘争を開始した闘いの積み重ねが結晶したものだ。
さらにまた、本年1月から、3・16ワーカーズアクションに向かっての仙台の実行委員会が始まり、それを担う青年労働者・学生との共同の闘いが生み出したものだ。
「労働者が団結すれば勝てる」。それが今回の座談会で記者が確信したことだ。
皆さんに共通するのは、闘う前は「職場で団結をつくるのは無理」との思いだった。それは職場での激しい団結破壊攻撃をぬきには語れない。
資本の攻撃の激しさを示す例は、朝のミーティングである。労働者を軍隊のように廊下に対面で並ばせ、管理職が「何々せよ」と訓示する。そして「お客様にきちんと挨拶(あいさつ)します」などと唱和させる。
毎朝の全体ミーティングが支配のかなめになっている。資本はそこで労働者を分断し、競争させ、資本に従うだけの存在にしばり付けておこうとする。そこには、労働者に絶対に反乱を起こさせないという階級意思が貫かれている。
しかしその底には、労働者の団結に対する資本の恐怖が見える。労働者が団結したら勝てる——これが階級的真実だ。現に、あえて言えばたった4人の労働者の団結した闘いでミーティングは完全に粉砕された。また、それに呼応した幾人もの労働者の感動的な闘いがあった。一時的にではあれ職場を労働者が支配したということだ。
「仲間との団結があったから今回闘えた」(Nさん、Wさん)というように、昨年から開始した職場闘争の蓄積が4人の団結を固くし、今回の闘いを生み出した。それがまた隣の労働者との団結をも生み出している。
どの職場でも労働者は団結できる。団結すれば勝てる。今回の座談会をとおして記者が確信したのもそれだ。
労働者は団結して闘おう。青年労働者はマル青労同に入って、団結して闘おう。
11月労働者集会に集まろう。「生きさせろ!」の賃金ゼネストをやろう。
(本紙・大崎浩)