2008年8月25日

〈焦点〉 FTAとブロック化が加速へ WTO交渉が決裂

週刊『前進』06頁(2356号3面3)(2008/08/25)

〈焦点〉 FTAとブロック化が加速へ
 WTO交渉ドーハ・ラウンドが決裂

 WTO(世界貿易機関)ドーハ・ラウンド(貿易拡大と規制撤廃交渉)の閣僚会合が7月29日、決裂した。アメリカが自国の農業補助金を維持したままで、関税撤廃を含む新植民地主義体制諸国の工業品、農産品の輸入規制撤廃を要求し続けたことで、米帝と中国・インドが激しく対立したためだ。日、仏、伊など国内で農業問題を抱える帝国主義諸国も、表面上は合意を目指したが、米帝との間で利害調整をめぐる争闘戦が深刻で、決裂を実質上後押しした。
 ただ、新植民地主義体制諸国の輸入関税撤廃を死活問題とする日本のトヨタなどの大資本は、即日「最悪の結果」と論評し、農業関税問題で譲らなかったインド・中国を非難。政府も「残念な結果」とコメントした。だが日帝は農業切り捨て政策と農業=地方崩壊の現実との矛盾にあえいでいる。
 WTO交渉の決裂によって、世界は今後、いよいよFTA(地域自由貿易協定)の締結競争に向かう。米日欧など帝国主義国とロシア、中国、インドなどの大国間の争闘戦と世界経済の分裂化・ブロック化や保護主義の台頭が進む。そしてこの中で世界中の労働者と農民を徹底的に搾取し、抑圧し、略奪しつくす新自由主義攻撃がいよいよ破滅的に強まる。石油を始めとした資源争奪戦も、軍事的激突を含めてさらに本格化する。第2次世界大戦を不可避としたのと同じ情勢が世界金融大恐慌のただ中で激化していくのだ。
 そもそもWTOは1995年、GATT(関税と貿易に関する一般協定)を引き継いで、穀物メジャーなどの米多国籍アグリ資本が主導する「自由貿易推進機関」として設立された。関税をゼロにし、世界中の貿易障壁を撤廃し、多国籍企業の巨大資本が地球規模の市場で「自由」に富を略奪することが目的だ。そしてWTOは、いわゆるグローバリゼーション(世界全体をくまなく単一の市場に組み込み、弱肉強食の搾取と略奪を極める)を推進する最も強力な国際機関となった。
 WTO体制の最大の矛盾は農業問題である。米帝は声高に「自由貿易」を叫びながら、自国の大規模農業には巨額の政府補助金を支出し、保護主義を死守している。そして、いわゆる「途上国」に安い農産物をダンピング輸出し、膨大な数の農民から大資本が土地を奪うプロセスが進行した。国境を越えて侵略した資本が現地の労働力を超低賃金で略奪し、この低賃金をテコに資本は本国の労働者の賃金水準をも押し下げてきた。
 そして日帝は、激しい帝国主義間争闘戦の中で、トヨタなど基幹産業の輸出市場確保のために、農業を丸ごと切り捨てる以外にないところに追い込まれた。日帝がコメの自給体制を放棄し、食糧の確保を海外調達と戦時体制の問題だと宣言したことは(財界の農業政策最終提言=06年)、「最弱の環=日帝」を象徴する事態だ。
 WTO交渉の決裂は、FTA交渉などをとおした新自由主義攻撃と農業破壊をさらに極限化させる。労働者階級と農民の労農同盟による帝国主義打倒とプロレタリア世界革命だけが全世界の人民の生きる唯一最大の道なのである。