11・2全国労働者集会の課題と展望 動労千葉・田中康宏委員長に聞く
1万人結集で時代動かそう
11・2全国労働者集会の課題と展望
腐った組合幹部たちと激突し大衆的分岐を作りだすことだ
動労千葉・田中康宏委員長に聞く
全日建運輸連帯労組・関西地区生コン支部、全国金属機械労働組合・港合同、国鉄千葉動力車労働組合の3労組が呼びかける11・2全国労働者総決起集会にむけ、その課題と展望について動労千葉・田中康宏委員長に語っていただいた。(編集局)
第1章 労働者の団結こそ社会を変える
——田中委員長はこの間、11月集会への1万人の結集にこだわって訴えておられます。
いま膨大な労働者が「がまんならない」という怒りを抱えています。だけどみんな、その怒りをどうしたらいいのか分からない。『蟹工船』情勢や秋葉原事件は、それを象徴的に示しています。われわれは今年前半、こうした現実と向きあい、時代との関係で求められているものとのギャップを埋めるために必死に格闘してきました。この飛躍の連続の中に身を置き続けたことで、非常に大きな前進を切り開いたと思っています。
サミット粉砕を掲げた6・29渋谷デモでは、参加者全員が本当にひとつに団結して闘い抜きました。だからこそ誰もが「もっと力があれば!」と痛切に感じたと思うんです。ここを突破するのが11月集会です。だから1万人結集にこだわって訴えています。これを実現できたら、世の中は変わり始めます。時代が動き出し、11月集会派が怒りの声を倍々ゲームで結集する過程が始まる。そういう確信をもって、職場の仲間に大胆に結集を訴えて欲しいですね。
——多くの仲間が職場闘争に踏み込んだことも重要でした。
われわれが、こういう展望を実感をもってつかみとることができるようになったのは、自らの職場・生産点で非和解の闘いを始めたからです。怒りの声は社会に満ちあふれている。問題は、われわれがこうした怒りの声を代表する存在として登場しきれていないことにある。だから、とにかく職場で具体的な闘いを開始しよう、と。そこで突き当たった問題を必死で突破する中にこそ可能性がある——この道を選択して全員が突っ込んできたわけです。その意味で、若い仲間たちが「世界は革命情勢だ」「労働運動の力で革命をやろう」という鮮明なスローガンを掲げたことは決定的でした。自分自身がそういう立場に立ち、実際に職場闘争を始めたことで初めて時代が見えてきた。逆に「労働者なんてダメだ」と思っている人にとっては、全然違って見えるはずです。絶望しか感じられない。
——前進を切り開いてきた力はどこにあるのでしょう。
一言で言えば路線の力です。6・29渋谷デモや法政大での闘いに示された戦闘性と団結を生んだのは階級的団結の思想と路線です。結局、当たり前の原点に返ったということですよね。つまり〈資本と労働者階級の非和解性>であり〈団結した労働者自身の中にこそ社会を変える力がある>ということです。これを、すべての仲間が実感したことが決定的に大きかった。
第1節 つかんだ確信を武器にさらに前へ
——その点をもう少し、詳しく聞かせて下さい。
つまるところ「支配」とは、労働者が本来持っている力に気づかせないということじゃないですか。労働者を分断し、労働者の団結した力を徹底的に抑え込み、一人ひとりの労働者には「おれたちにはそんな力はない」と思いこませていく。そういう意味で体制内派は、労働者階級内部で支配階級のイデオロギーを代表している面があります。たえず「労働者階級には力がない」と言って、別のものにすり替えていくわけですから。
敵は「企業がつぶれたら労働者は生きていけない」という論理や、自治体の赤字を振りかざして攻撃してくる。この攻撃を打ち破っていくためには、労働者階級としてのものの見方がきちんとしてないといけない。「敵がなんと言おうと俺たちは世の中をこう見るんだ」というものがないといけない。それがマルクス主義だと思うんです。
みんなが「労働者階級こそが社会の主人公だ」「労働者の団結した力こそが社会を根底から変えられるんだ」ということに気づいた時、その力は爆発的に発揮される。だから路線が大事なんです。われわれはこの間の闘いをとおして、こうした時代を動かす核心をつかんだ。労働者が自らの手にマルクス主義を取り戻したと言ってもいい。さらに闘いをもう一歩進め、いよいよこの力を爆発的に発揮する時が来たということです。
第2章 恐慌・インフレ・世界戦争の時代
——今の腐りきった社会の状況をどう見ていますか。
ぼくは資本主義体制そのものの末期症状だと思っています。
G8サミット以降に起こっている事態は重大です。この間、アメリカの住宅金融公社2社が事実上の経営破綻(はたん)に陥りました。さらに、アメリカでの新車販売台数が6月は2割も減少したことも大きい。住宅や自動車産業は、あらゆる業種に影響がおよぶ基幹中の基幹ですから。サブプライムローン問題を発端にして米経済が恐慌に入り、それがついに実態経済にまでおよび始めた。しかも重大なことに、それが戦争の拡大を生み出している。グルジア情勢です。米帝は明白にグルジアを支持し、アメリカとロシアが真っ向から衝突している。カスピ海・中央アジアの石油、天然ガスといった資源・勢力圏の争奪が絡んだ事態です。
——日本の福田政権も大変な行き詰まりに直面しています。
こうした世界的危機の中で、日本帝国主義は文字どおり最弱の環になっています。8月の月例経済報告で政府はついに「景気は弱含み」と書かざるをえなかった。彼らの言い方は意味が分かんないんだけど、要するに「景気が悪くなった」ということです。GDP(国内総生産)の4〜6月期速報値も、年率で2・4%マイナスになった。日銀も19日、景気判断を「停滞」に下方修正しました。「停滞」という表現をとったのは10年ぶりです。いよいよ危機的な事態に入ったことを彼ら自身がごまかしきれなくなった。こうした中で税収が激減し、国家財政の破綻を爆発的に生み出そうとしている。しかし福田政権は消費増税はすぐには打ち出せない。選挙をやれば確実に負ける。まったく出口がない。これが今の日本の支配階級の姿です。
——労働者にとって、それは何を意味するのでしょう。
恐慌とは、経済が一気に収縮することです。その中で膨大な労働者が首を切られ、年金も医療も破壊され、より一層の犠牲が労働者に押しつけられていく。しかも同時に、全世界でインフレに火が付いた。これは徹底的に、労働者の生きる権利を奪いつくします。いよいよ支配階級と労働者階級が真正面から激突せざるを得ない情勢に入ったということです。
——国鉄闘争をめぐっても重大な動きが始まっています。
いま1047名解雇撤回闘争が重大な岐路に立っています。鉄建公団訴訟控訴審で南裁判長が裁判外の和解を投げかけました。それに対して冬柴国交相(当時)が「解決に向けて努力する」と言い、国労の高橋伸二委員長は大会で「裁判所の提案を受け入れる」と言明した。
第1節 JR労働運動をめぐる根底的な流動
これは、1047名闘争と国鉄労働運動の解体を狙う大攻撃です。国労をつぶし連合化することが狙いです。そして1047名闘争が終われば、JR東日本は革マルを最終的に切り捨てる方向に動きます。JR資本はここで、非正規職化・外注化を一挙に進めようとしている。つまりJR労働戦線をめぐる根底的な大再編が起きる。
——労働者階級全体にとっても大変な決戦ですね。
敵はなぜ今、1047名闘争の解体に踏み込んできたのかが重要です。国鉄分割・民営化攻防に決着がつかないと支配階級は次に進めないんです。
この間、公務員200万人首切り攻撃の全体像が見えてきました。社会保険庁の解体・民営化をめぐっては本当にひどいことが行われています。組合活動家や被処分者は全員解雇。ある意味で国鉄分割・民営化以上です。千葉では銚子市立病院の突然閉院・全員解雇というむちゃくちゃな攻撃が始まっている。大阪府の橋下知事は“大阪府の発展的解消”を公言して道州制に突き進んでいる。社保庁型や銚子市立病院型、夕張型や大阪型、あるいは市場化テストや指定管理者制度——あらゆるやり方で公務員200万人首切りと民営化をやるということです。そして、これをやりきるために支配階級は1047名闘争をここでつぶす決断をしたんです。
——あらゆるところで闘いの火の手があがり始めています。
そのとおりです。われわれの闘いいかんではもう一度、民営化をめぐる新たな大決戦になる。国鉄分割・民営化攻撃の決着を許さず、20年以上にわたって闘い続けてきたことがどれほど大きかったのか。いよいよ1047名闘争が、労働運動全体の再生をかけたワクワクするような位置にせり上がってきているんです。巨大な可能性ですよ。その時に「1047名闘争は賞味期限切れ」なんて言っている連中は絶対に許せない。
——この大流動情勢の中で動労千葉はいかに闘いますか。
動労千葉としては、組織拡大闘争をなんとしても前進させることだと考えています。これをやりぬけば、どんな攻撃が来ようが決定的チャンスに転ずることができる。日本の労働運動の歴史には、労働組合が国家権力と真正面から闘って団結を守り抜いた前例もなければ、さらに組織拡大した例はなおさらない。原則を貫く闘いは「玉砕の道だ」などと言われてきた。だけど、その動労千葉だけが組織を拡大して展望を開いているとなったら、1047名闘争—国鉄戦線はもとより労働運動全体にすごいインパクトになる。
みなさんの職場でも、今はまだ小さな闘いであったり、一人からの闘いかもしれない。だけど“ここをぶちぬけば全体が動き出す”という飛躍点が必ずあるはずです。11月に向かって、どんなに困難でも、そこで勝負しようと訴えたいですね。
第3章 「生きさせろ」のゼネストを掲げ
——11月労働者集会への1万人結集を実現するカギは。
徹底して分岐を生み出すことにあると思っています。現場の労働者の怒りと、腐った組合幹部たちとの公然たる激突を作り出し、大衆的な分岐を作ることです。11月まで徹底的にそこにこだわって欲しい。いま全世界で津波のようにストライキが闘われていますが、これも一般的に盛り上がっているわけじゃない。どこでも労働運動をめぐる激しい分岐と衝突の中から闘いが始まっているんです。
多くの労働者はいま、自らの怒りさえ奪われている現実にあります。怒りを抑え込んでいる体制内労組幹部たちとの公然たる激突を作り出すことは、怒りと団結を取り戻す闘いそのものなんです。そのことをとおして初めて、資本や当局との非和解的闘いもやり抜ける。
——今年の11月集会の具体的な課題を聞かせて下さい。
11月集会にむかって打ち出すべき第一の課題は、“「生きさせろ!」のゼネストが今こそ必要だ”ということを真正面から訴えることです。インフレに本格的に火が付き、食っていけない現実がこれから労働者、農民、漁民を襲います。資本の側は、なお一層の賃下げと首切りで突っ切ろうとしている。御用組合は、もうお手上げで一切何もしない。これに対抗するのは「大幅賃上げ獲得」を掲げたストライキしかない。さらに言えば、最低賃金を大幅に引き上げさせなければなりません。
「生活防衛」や「大幅賃上げ」という当たり前のスローガンの中に、根底的な社会変革の欲求が宿る時代が来たということです。新自由主義との対決をもう一段階レベルアップして、より大衆的な規模で打ち抜くという課題が、われわれに突き付けられていると感じています。
「ここまでやられてストぐらいやらないでどうするんだ」と考え始めている労働者は、膨大に存在しています。「生きさせろ!」のゼネストを呼びかけてもぜんぜん浮くような状況じゃない。ここが重要なんです。われわれ11月集会派が、この怒れる労働者を本当に代表できるのかどうか。最初は休暇闘争から始めるしかないかもしれない。だけど、09春闘にむけて闘いを具体的に始めないといけない。「この日に集まれ!」というような闘争日程についても、呼びかけ3労組や実行委員会でも議論を始めたいと思っています。
第1節 「解雇撤回」捨てた政治解決許さない
第二の課題は、やはり1047名闘争です。解雇撤回を取り下げ、動労千葉を排除して闘いを分断する政治解決など絶対に粉砕しなければなりません。
今年の11月集会は、この国鉄1047名闘争を先頭に、これから始まる大民営化攻撃との一大決戦を宣言する集会です。怒りをたぎらせている4大産別の労働者も、非正規職の労働者も全員集まれと訴える。われわれ国鉄労働者はその最先頭に立ちます。新自由主義攻撃粉砕、民営化粉砕の総決起集会にするということです。
第三の課題は、国際連帯闘争をさらに飛躍的に発展させることです。「万国の労働者、団結せよ!」の鮮明なアピールをここで発する。今年の8・15集会で民主労総ソウル地域本部のイジェヨン本部長は「それぞれの国のばらばらの組織ではなく、ひとつの組織として闘おう」とまで訴えています。“全世界の労働者がひとつになって闘うしかない”——真剣に闘っているところであればあるほど、これが切実な内的欲求となっている。敵の新自由主義攻撃が、世界の労働者の団結を生み出したんです。11月集会は労働者の可能性、展望そのものとしてあります。アメリカのILWU(国際港湾倉庫労組)の闘い、激動する韓国情勢とひとつのものとして11月勢力の闘いはある。“俺たちはこれだけのものをつくってきたんだ”と確信をもって訴えて欲しいですね。11月集会まで2カ月余り。この日を闘う労働運動を時代の最前線に登場させる日にしましょう。